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パン焼き日誌 このページをアンテナに追加

2009-01-31

著作権とコンテンツのこと

| 01:44 | 著作権とコンテンツのことを含むブックマーク

観客の視聴意欲や購買意欲を殺いでしまうような著作権・知的財産権の主張は全くの本末転倒だと思うのです。

そんなに自分の作品が惜しいならTV放送もDVD販売もやめて美術館にでも陳列しておけっていう。

掃溜ノオト

山本寛さんのような作り手からそうおっしゃっていただけると、非常に心強いところがあります。

私も知らぬ間に著作権分野の評論家となり、昨年はモノを書いたり他人様の前でお話しさせていただいたりするようになったわけなのですが、もともとは青空文庫というコンテンツを扱う団体の一員であり、さらにはコンテンツビジネスのなかで制作者として関わるプロの翻訳家でもあり、最近はコンテンツビジネスのアドバイザー的なこともしているので、昔のように単純視聴者でもなくなり非常に立場としては微妙になりつつあるのですが。

そんななか、直感的もしくは理性的に「著作権」の問題について理解していただける作り手がいらっしゃるというのは、評論家としてもアドバイザーとしてもとても嬉しいです。

著作権の問題になると、どうしても「保護と利用」というごくごく素朴な「権利者と利用者」という二元論で語られがちなのですが、私が口をすっぱくしていつも言っているのは、もはやそんな次元にいたらコンテンツなど扱えないし、モノも作れないし、商売をするなどもってのほかだということです。

もし今でも本気で「保護と利用」という分け方を信じているなら、その時点で今の文化の現状をまったく理解できていないし、時代錯誤もはなはだしいとさえ思います。すでに著作物の世界は「共有と保障」の世界に突入しているということを、あらためて認識すべきだと思います。

もちろんそれこそ本質的な「文化」であるわけですが、インターネット社会になってはじめて本質的なところへ突っ込んでしまったわけです。簡単にはパブリックコメントの際に説明しましたが、今の時代、コンテンツで商売をしようと思ったとき、「共有」は当たり前のこととして捉えなければいけません。

コンテンツが今のものであれ過去のものであれ、著作権が有効であろうと失効していようと、どちらの点にもかかわらずそうなのです。今の法律で「共有」が善であれ悪であれ、現状そうなっていることを理解しなくてはいけません。社会として文化としてすでにそうなってしまっているのですから。

そうした場合、今までのように「保護」を武器として商売をするというのは、戦略的にも間違っているし、道義的にも間違っています。今のコンテンツは「共有」という場所で戦わなければいけません。そのとき、いくらお金が欲しいから、いくら自分のモノを自分のモノのままにしておきたいからといって、「保護」してその「共有」の場所から隔離したとしても、そもそも戦う場所にすら下りてこられないのだから、勝負にすらなりません。

そしてそこに下りてこないということは、モノを作っても「文化」をやろうという気もない(人に作品を見せようという気もない)ということであり、創作者としての態度や資質を問われることだと思います。

このエントリではあえてかなり雑に説明しているのですが、要点をまとめると、創作者・製作者の側としては、もう「保護」を強化して利益を最大化しようなどというやり方はどう考えたって古すぎるのです。「共有」を前提として受け入れた上で、その「共有」の場でいかに利益が最大化されるかということを考えなければならないのです。(その意味では角川グループ、サンライズ、そしてバンダイチャンネルのやり方も興味深いです。)

もちろん、私の仕事としては、文化の受け手としての「共有」と、文化の作り手としての「利益」、そのどちらもが最大化する方法やあり方を考えなければならないわけですが、そのふたつは対立するものでないことは明らかです。「共有」のなかでの「利益」の最大化を考えるわけなので、「共有」が大きくなればなるほど「利益」も大きくなるからです。そして「共有」というときも、もちろん無償の共有だけではなく、有償の共有も含まれます。それは文化としての「共有」ということを考えているからです。

「共有」という観点については、創作そのものについてもとても重要なキーワードだと思っていて、これから語らなければいけないことだと思います。特に今回トラックバックを送らせていただいた山本寛さん(以前にインタビューさせていただきましたが)については、よく「オタク心をくすぐるのがうまいクリエイタ」などと言われますが、私はこの意見には同意できません。非常に浅い点でしかものを見られていないと思います。

そうではなくて、山本さんは「人の『共有心』のようなものを刺激するのがうまい」のだと思います。その「共有」には、受け取った人が「単純にそれを人に紹介したい見せたい語りたい」という気持ちもあれば、「自分が真似をしたそのプレイを人に見せたい」という意味の「共有」も入っていると思いますし、「そのコンテンツ(あるいはキャラ)を一種の『神』として共有したい」という信仰に近いものも含まれているはずです。

山本さんはそのあたりを理解してモノを作っている気が、私にはします。そこで山本さんが次作に『かんなぎ』という作品を選んだとき、「うわっ、あざとい!(笑)」と思ったのですが、同時に現状理解が適切だと敬服もしましたし、結果コンテンツとしてはナギ様ではなく山本さんご本人に注目が集まってしまったことが少し残念でもありました(詳しくは別の論として書かなければいけないことですね)。

そしてこれからのコンテンツホルダーなり作り手なりにとって、そのあたりのコントロールをどうしていくか、というところが課題としてあるわけです。「保護」だけではなくて、「共有と保障」に関してどのように設計していくかを作り手・送り手として考えなければならないと。いかに「共有」してもらうか、そしていかに「保障」としての収益を上げるのか。

さて、ここで個人的な近況ともクロスしてくるのですが、どうしてもこういうことをちゃんと本にまとめなければいけないな、と思っていて。ただ単に仕事する際に一から説明するより本渡した方が楽だ、とかいう身も蓋もないところも少しはあったりするのですが、今まで講演なり記事なりで書いたことを一個の思想としてまとめる必要があるのだろうと思っています。

できれば年内には、著作権と共有と創造と文化についての本をまとめられればと考えています。まだ2月が始まったところなので、遠い話ではあるのですが。たぶんこのあたりの議論ももっと詰めてご紹介できるかと思います。

アニメのこと

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いや、水面下では頑張ってますよ。ちょこちょこと評論を書きためてはいるのですが、最近はこのブログででも出した方がいいのかなとも思ってきました。ごくごく簡単なことしか書いてなくて一般向けなので、おそらくコアなアニメファンにはあまり面白くないものなのですが、そうするとアニメのためにわざわざブログを読もうとする層とは合致しないんじゃないかなあ、などと悩んでいるうちに早幾とせ(そんなに経ってないか)。

早く評論家としての名刺になる本を上梓しなさい、という意見もあるのですが、そうすると先に「創作一般(著作権一般)」の本になるので、若干滞っていたりします(去年はどうしてもそちらが多かったので)。

正直、2008年のオレベスト10とか誰も読みたくないだろとか思ってしまうあたりがダメなのでしょうが。大々的なものでもないのでざっくりやってしまうと、1『紅 -kure nai-』、2『イヴの時間』、3『夏目友人帳』、4『喰霊―零―』、5『コードギアスR2』、6『崖の上のポニョ』(狂気的意味で)、7『true tears』、8『狼と香辛料』、9『空の境界(4&5)』、10『HELLSING(4&5)』、次点が『かんなぎ』『仮面のメイドガイ』『ひだまりスケッチ×365』『マクロスF』『俗・さよなら絶望先生』『ストライクウィッチーズ』。『ARIA』は好きですがTHE ORIGINATIONだけだとどう評価すればいいのか……。一応『とらドラ!』『鉄のラインバレル』『ミチコとハッチン』はまだ終了してないので入れてませんが、評価は高いです。というかまだ愉しんで見てたものに『無限の住人』とか『薬師寺涼子の怪奇事件簿』『ef -a tale of melodies-』とか色々あるのに入りきりません。一クール通しで見た作品はもっとたくさんあったのに。ちなみに私は『ef』1期派です。

今は『WHITE ALBUM』が一押し。というか『KEY THE METAL IDOL』のDVD LIMITED BOXは即予約しました。熱すぎる。ここにきて佐藤博暉復活とか10年待ったかいがありました(いや吉宗とかありましたけど、確かに)。たぶん発売まで待ちきれずにレンタル落ちのビデオを見返すんだろうなあ、私。

(2/25追記:『やさいのようせい』と『ファイアボール』が2008年だってことをすっかり忘れていました。どっちも大好きだ! 次点に挙げたものよりももしかすると好きかも。)

新刊のこと

| 01:44 | 新刊のことを含むブックマーク

あ、サイトのトップにも書きましたが、シャーロック・ホームズ短編集のオーディオブックがplaywalkという携帯再生端末に入って発売中です。一本ずつ買うよりもかなり割安なので、どうぞよろしく。

声優さんの演技や脚本の総合的な出来という意味では、個人的には「瀕死の探偵」「蒼炎石」「まだらのひも」のみっつをおすすめ致します。「瀕死の探偵」はハドソン夫人を麻上洋子さんにやっていただけて本当に良かったです。家宝にします。シャーロキアン的には「グローリア・スコット号」でしょうか(暗号の翻訳を頑張ったので)。

他のオーディオドラマシリーズも(脚本は仕上がってるのですが)早く出ないかなあ、と待ちの姿勢。こういうとき脚本家(&翻訳家)は何も出来ないのでつらいですね。

肩の悪いピッチャー肩の悪いピッチャー 2009/02/16 17:28 はじめまして。初対面で厚顔ですが、大久保ゆうさんにお聞きしたいことが有ります。インターネットサービスの辞書において青空文庫の外部リンクにおいて大久保さんの名前が記載されていますが、プロとして活動している方が商品としての作品を提供しているのは首をひねってしまうのですが、この意図を教えていただけますか?

bs221bbs221b 2009/02/17 00:37 はじめまして。いえいえご質問は何でもどうぞ。
簡単にご説明すれば、青空文庫に提供している作品は「商品としての作品」ではありません。プロは仕事で作品を作ることもあれば、趣味で作品を作ることもあり、また自分のPRサンプルとして作品を作ることがあります。どこか一社と専属契約していない限り、フリーのクリエイタはそのうちのいずれも作ることができます(し、普通そうしていると思います)。
青空文庫にある翻訳は、仕事ではなく後者2つの目的で作られたものです。ただしクリエイティブコモンズというライセンスで公開し自由利用を認めているので、それを商用でご利用になる方はいらっしゃるかとは思います。
プロが趣味で作った作品を「ご自由に」と配布・配信する、あるいは最初から自由配布目的で作品を作るというのは、最近では国内外で割とあります。坂本龍一さんや小山田圭吾さんもやってらっしゃいますね。どのクリエイタさんでもよくあることだと思います。
もちろん、仕事として作ったものを「ご自由に」と出したりはしません。契約がありますので。ただそれ以外のものは原則クリエイタの自由に任せられるので、私の場合は「趣味の作品は自由に公開することにしている」ということです。