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文炉具 〜ぶらいとんの雑日録〜

2011-09-27 歩切り

公共工事において発注元である官公庁が設定する価格に、「支出負担行為の予定額」と「設計価格」と「予定価格」という、違いのわかりにくい名称のものがあります。

まず、予算の範囲内で、官公庁の設計担当課の技師によって設計が行われ、そのさい資材費や人件費の標準単価に数量を乗じて合計したら、「設計価格」が算出されます。同時に、この金額をもとに、経理担当課で「支出負担行為の予定額」が設定されます。次に、契約担当課において入札が行われる段階で、落札の成立・不成立を判断するための指標である「予定価格」が設定されます。そして、工事業者がこの予定価格より低額で入札に応じておれば、最も低い金額で(厳密に言えば、そのうえに発注側が設定しているはずの最低制限価格より高ければ)落札成立となって、めでたく契約締結の運びとなります。これら価格の関係性を金額の多寡で示せば、こうなります。

 ○ 設計価格(支出負担行為予定額) ≧ 予定価格 ≧ 落札金額(契約金額) ≧ 最低制限価格

ここで問題になるのが、官公庁がおこなう「歩切り」(ぶぎり)と呼ばれる作業なのです。建築用語としての歩切りは、金額を下方に切下げ(切捨て)して端数整理することを意味します。現実には、公共工事入札における歩切りは、予定価格を設定するさい、設計価格に数%の率を掛けることで行われているのであろう、と推測されます。せっかく設計書に基づいて算出した(はずの)工事金額をコスト・カットのちゃんとした根拠もなく機械的に切り下げてしまう作業が、歩切りなのです。等式で表せば、こうなります。

 ○ 予定価格=設計価格−歩切り

こんな形で入札が成立すれば、おそらく元請け業者から資材納入業者、下請け施工業者、労働者などへと大きなしわ寄せが行くのでしょう。その結果ずさんな手抜き工事が行われるかもしれません。

かなり以前から国土交通省は、歩切りを排除するよう地方公共団体を含む官公庁へ勧告を出し続けています。最新の『公共工事の入札及び契約の適正化を図るための措置に関する指針』(平成23年8月9日閣議決定)のなかでも、「公正な競争を促進するための入札及び契約の方法の改善に関すること」の一つとして、こう記されています。

「予定価格の設定に当たっては、資材等の最新の実勢価格を適切に反映させつつ、実際の施工に要する通常妥当な経費について適正な積算の徹底に努めるとともに、この適正な積算に基づく設計書金額の一部を控除するいわゆる 歩切り については、予定価格が予算決算及び会計令(昭和22年勅令第165号)や財務規則等により取引の実例価格等を考慮して定められるべきものとされていること、公共工事の品質や工事の安全の確保に支障を来すとともに、建設業の健全な発達を阻害するおそれがあることから、これを行わないものとする。」

こんな勧告を受けながら、現実に官公庁の多くは、あいかわらず歩切りを行なっています。経理担当者が予算不足を心配するせいか。それとも、設計担当者が自分の積算に自信を持てないからでしょうか。あんがい、単に、慣習として続けられているだけなのかもしれません。また、工事業者団体に、談合の機運をもたらしているという指摘すらあります。

ついでに、歩掛 (ぶがかり)という、歩切りと混同しやすい名前の建築用語にも一言触れておきましょう。歩掛とは、ある作業を行う場合の単位数量や、ある一定の工事に要する作業手間と作業日数とを数値化したもの。建設工事標準歩掛と題した冊子も出版されています。