コンクールへの連盟・ハーモニー誌への提案

 

この記事は、昨年新潟での全日本合唱コンクール全国大会を基にした、ハーモニー誌冬号の全国大会座談会への私が考える問題点具体的な改善策を記しています。


問題は全日本合唱連盟が与える「賞」や、全日本合唱コンクール全国大会というブランドイメージをどう考えているか?に帰着します。
今のままだと「とりあえず審査員9人の出した結果で、賞の価値は保証しない」と受け取られてもおかしくないのでは。

念を押しますが、金賞受賞団体を批判すること、辛口の意見を排除すべきとの考えは、私は一切持っていません。
ただ、人口減でコンクール参加団体、人数も減り。
他のコンクール、東京国際合唱コンクールや声楽アンサンブルコンテストなど、他の審査基準が明確な個性あるコンクールも軌道に乗り。
極めつけは「コンクールへ参加することに意義を見出せない」人が増えている現在、全日本合唱コンクール全国大会の「金賞の価値」を、合唱連盟が保証することは非常に重要なことと考えます。

 

 

繰り返します。
辛口の意見はあっても良いし、むしろ無いと困ります。
(自分の観客賞座談会も、ハーモニー誌での音楽のプロフェッショナル諸氏による辛口の指摘を期待し、自分たちのトーンを抑えている気もあります)
ただ、賞で高評価を付けたのなら、厳しい意見とは別に「高評価の理由」も述べなければ片手落ちなのではないでしょうか?

たとえばこの文章をお読みのあなた。
あなたの部下や後輩が良い結果を出し、表彰されるとき、イヤミや《厳しい意見だけ》しか言わないのは、上司や先輩として正しいありかたでしょうか?
もちろん今後成長するための指導や発言はあっても良いと思います。
しかし、認められ評価された人間がそれを実感し。
さらに先へ進んでいけるような言葉を選びましょう、セットにしましょう!ということです。
オッサン→老人の「自分が認めたヤツにこそ厳しくする」、そしてそれを認める文化、ほんとうに止めて欲しいと思います。
教師や上司に殴られて「押忍!ご指導ありがとうございましたッ!」言ってる時代じゃ無いんです。
良いと評価したなら、ちゃんと伝わるよう褒める、それが令和の今、必要とされているのではないでしょうか。

それを踏まえ《具体的で現実的な提案》を2点書きます。


1)編集方針の変更

ハーモニー誌座談会の編集は、非常に立派なプロフェッショナルの仕事です。
たとえば自分を含めた「知人との3人の会話」を5分だけでも録音し、実際に文字起こししてみれば。
発言の要旨を取り出し、会話としてわかりやすく読ませることが、いかに大変なのか理解できることでしょう。
それでも、自分は趣味で座談会編集の真似事をしているアマチュアですが、僭越ながらもう少し変えられないかな?と思う点が。
やはりそれは「読者が賞にふさわしい印象を受ける編集」に尽きると思います。
例えばA先生が抗議された対談部分。
まず順位を高く付けた今村氏が演奏を褒めてから、低く付けた岡田氏が「ぼくの評価はそこまで高くない」と切り出します。
そりゃこの順番に発言するなら、そういう感じになりますよね。

例えば

A「あいつって周りに優しいし良いヤツだよな~」
B「でもケチだよ、常に1円単位でワリカンだし」

しかしこの会話の発言が逆の順序だったら。

B「あいつって金に細かいよな」
A「えー、でも良い部分たくさんあるよ。周りに優しいし、そうそう、こないだも良かったのが・・・」

となる場合が多いんじゃないでしょうか。
順位によって求める発言の順序を考える司会、編集者のさじ加減。
ハーモニー誌座談会記事の編集は、団体ごとに厳しい意見で終わることに躊躇していない点が問題だと思います。

発言の順序が今村氏 → 岡田氏のままでも、「曲を初めて聴く人にも、あ、これ面白い、と思わせて欲しい」で締めた後に、編集者が「そうは言われても金賞を受賞された○○さん。今村先生、岡田先生の今のご発言を受けてどう思われますか?」と振れば今村氏のフォローが入るかもしれない。
最後にフォローがあれば、団体ごとの印象はかなり違うものになります。
そういう「読者が賞にふさわしい印象を受ける編集」が「金賞の価値を保証する」ことに繋がるのではないでしょうか。

 

2)全審査員による講評の必要性

審査員の講評の公開が、ハーモニー誌座談会に選ばれた2人だけというのも変な話です。
極端なことを言えば、金賞を受賞したのに、下位に付けた審査員2人が該当団体をひたすら批判し、その言葉だけが残る結果になっても不思議じゃない。
A先生も、高評価だった別の先生方の講評を読まれていれば、岡村氏に批判されても、あそこまで怒られることは無かったかもしれません。
もちろん審査員を経験された方から聞いたところ、講評を書く手間は非常に大変だそうですが。
1団体ごとの出場・退場の間を1分ずつ取るなどで解決できないでしょうか。

現実的に審査員全員が、その場での全団体の講評は無理だとしても。
各部門、それぞれ審査員が金賞に評価した上位団体(各部門3~6団体なので、合計15団体)への講評を当日ではなくても書いていただき、公開する(それが難しいなら出演団体だけで共有)のも良いかもしれません。
辛口講評が目立った岡田氏も、同声部門の1位へ付けたmonossoさん、3位のVOCI BRILLANTIさんへは大変頷ける、好意的な良い発言をされています。
そういう金賞にふさわしい、評価と内容が繋がる講評を読めば「ハーモニー座談会では貶されていたけど、他の審査員はちゃんと評価してくれたんだし、まぁ許そうか。次も頑張ろう!」……そんな印象になると思うんです。
また、下位に付けた審査員2人の、批判ばかりの座談会を読んで「……なんでこれが金賞になったのかさっぱりわからん」と戸惑う読者を減らすことも出来ます。
※9年前のブログ記事「「私の1位」が読みたい!もよろしければお読みください。

 

それでは《まとめ》です。

◎「合唱連盟・ハーモニー誌は全日本合唱コンクール全国大会というブランドイメージ、《金賞》の価値をちゃんと作ってほしい!」

「M-1グランプリ」という漫才師の頂点を決める番組があります。
M-1放送開始、初期の2001年放送をAmazonPrimeで見返したら、面白いことに気づきまして。
初期M-1では、ネタ中の審査員の表情は会場がかなりウケていても、シッブーい厳しい顔ばかりを抜き出していたんですね。
驚きました、ここ数年のM-1はぜんぜん違いますよね。
お笑いの権威たる審査員がネタに爆笑する顔を抜き出しているのが当然。
これ、凄く面白いなって。

 

M-1初期は「真剣な漫才コンテストです!」という主張のためか、「笑わせる演者」と「厳しい審査員」の対立も見どころのひとつだったと思います。
「自分たちのコンテンツに厳しい顔を見せ、自己批判できる、そういう余裕が自分たちにはある」という主張でもあって。
しかしテレビの力も落ちていき、そういう自己批判、自己コンテンツを厳しく批判することが有効とは言えなくなってきた。
M-1初期のように、コンテンツを自己批判することで価値を上げる時期は過ぎ、「このコンテンツは素晴らしいんです!」と自己プロデュースするのが効果的な現在なのだと思います。

もちろん合唱コンクールも同じで。
芸能、芸術として、辛口も含めた多様な意見の容認。
自分たちのコンテンツを貶めるような意見、批判はスパイスとして残して欲しいとは思いますが。
しかし、M-1司会の今田耕司氏は、総合得点が高い出場者には、「高い点数を付けた審査員」を優先して「何人も」発言を求め、スパイスとして一番低い点を付けた審査員から「ひとりだけ」意見を求め。
視聴者がその評価に納得できる流れ、良いバランス感覚になるよう考慮されています。

初期のM-1と同じに思えるんです。
自己批判が過ぎると、自分たちが与える賞の価値を下げっぱなしにしてしまう。
金賞を与えられた側はその賞に価値を見出せなくなってしまう。
A先生が抗議された、今の全日本合唱コンクール全国大会とハーモニー誌座談会は、そういうズレなのだと考えます。
合唱連盟・ハーモニー誌は、M-1の変化にならい。
出場者、聴衆が「金賞」に納得できるよう、もっと考えるべきではないでしょうか。


繰り返しますが、全国大会での、今後成長するための厳しい指導や発言はあっても良いと思います。
しかし、大いに認められた出場団体に対しては、肯定的かつ成長に繋がる言葉を。
さらに先へ進んでいくための言葉を贈りましょう、セットにしましょう!ということです。
もう一度書きます。

合唱連盟・ハーモニー誌は、出場者、聴衆が「金賞」に納得できるよう、本当に、もっと考えるべきではないでしょうか。

以上です。

 

 

大学合唱団の新歓は難しい、への余談

【大学合唱団の新歓は難しいへの余談】→コンクールと大学合唱団が存続する意味とは

 

 

この文章を読む前に
「大学合唱団の新歓は難しい」を考えてみた

をお読みください。

 


◉客演指揮者、さらに「コンクールに参加しない大学合唱団」
思い出すのは「信州大学混声合唱団」さん。
信長貴富先生へ委嘱された新作の演奏水準の高さはもちろん、「客演指揮者」と言いながらも多くは常任指揮者の合唱団とは違い、指揮者が毎年変わられます。
特に最近の演奏会では谷郁先生にお願いしたのは凄いな!と感心しました。
過去にも荻久保和明先生、名島啓太先生……とヴァラエティに富んでいます。
技術顧問の中村雅夫先生のご助言のためかもしれませんね。



◉コンクールについて→
なすさんが触れられている、「コンクール」について。
もちろん昨年の全国大会へ出場された中国支部・鳥取県代表のユース団体「Chor Karmin」さんの存在は私も知っております。
書かれるように、団員さんが岡大さんとKarminさんと重なる場合があることで、「なぜ仲間内で全国出場を争わなければならないんだ?」、そんな当然の疑問も出ることでしょう。
「コンクール参加」が中心活動のKarminさんと比較し、そうでは無い岡大さんのコンクール練習やモチベーションは難しいものになるかもしれません。

ただ、最初に挙げた【テーマ 1】の「技術向上」「岡山大学グリークラブという存在を、優れた演奏によってブランドとなる価値ある団体を目指す」に、コンクールは合致する面があります。
さらに、「大学合唱団」の単位なら、全国出場団体や(賞が)上位団体だと、大学側からの恩恵が多くなったりします。
(その辺りは、全国大会上位を何度も経験している都留文科大学合唱団さんや北海道大学合唱団さんや関西学院グリークラブさん、九大混声合唱団さんへ相談してから、岡山大学側との支援の交渉を考えるのも良いかもしれません)

また、「合唱界」の中の「全日本合唱連盟」はやはりコンクール推しです。(その是非は今回問わないにしても……)
上述のようにデメリットも多くあるコンクール参加ですが、ブランド強化や大学(またはOB)からの支援の増大、技術向上を考えるなら、選択肢として考えてみるのも良いのでは無いでしょうか。


◉なすさんが最後に書かれた→
>誰が総合考慮するの?となるとき、幹事学年が中心になって、(一枚岩ではない)在部生で決めるわけで、その方針は予測不可能である。だからこそ、腰を据えて、対話をするべき…ではあるが、次から次へとやってくる行事にきちんと対応しようとするとおちおち対話の機会も持てない。
>(4年に一度団員が100%入れ替わる大学合唱団の宿命でもあるが、)きちんと活動しようとすると、1年間は短すぎる。新歓って難しいね。

そうなんですよね・・・。
この問題は大変難しく。
時代に合わない大学合唱団もろもろのことを変えようとするには、団内での対話が必要。
しかし既存の多くの行事に対応しようとして、必然的に時間が少なくなってしまう。

現実的な解?としては、外からずっと岡山大学グリークラブを見ていた合唱名門高出身の新1年生が最初から「オレがこの団体を変える!」とか。
あるいはなすさんのような、幹事学年を経験した方が院政を敷く(?!)以外に無いような気がします。

既存のシステムを変えようとするために、「既存のシステムを十分理解し、運用できるのを示す」ことが求められるような。
矛盾しているようですが「魔王がいない世界を創るために、一回魔王になる!」みたいな。

技術、運営の役員を決定するだけでも大変ですよね。
そういう既存システムを保つこと自体が難しく、大学合唱団が疲弊してしまうのが、昨今の衰退の理由の一つかもしれません。

 

◉これもなすさんが書かれた→
>「自由の味をしってしまった」せいで学生の興味関心があちこちに向いている

そういう面で「学生さんのあちこちに向いた興味関心」にそれぞれ特化したユース団体が、大学合唱団より盛況なのは頷ける話ですね。
噺家・立川談志が弟子に言った「よく覚えとけ。現実は正解なんだ。時代が悪いの、世の中がおかしいと云ったところで仕方ない。現実は事実だ」の通りです。
ただ、ユース団体は中心メンバーが年齢を重ねたら退団か、あるいは一般団体への移行を考えなければなりません。
最初に決めた方針が上手くいかなければ、違うユース団体を立ち上げれば良いだけかもしれませんが・・・。
そこは一度休部、休団してしまうと復活が難しい大学合唱団とは異なる面かも。

もうひとつ、非常に重要だと思うのは、ユース団体は「合唱初心者を勧誘し育てるのに不向き」なのでは?
特にコンクールに特化したユース団体で、合唱初心者を積極的に勧誘し、育てることはかなり難易度が高そうです。

そういった合唱初心者の育成を含め、歌って踊れる合唱団、あるいは訪問公演に特化など、それぞれ全く違った方向へ合唱活動を進めることが出来る【可能性を秘めた人材の宝庫】、それが大学合唱団と言えるかもしれません。
変化が速い現代で、「大学合唱団」という枠組みを継続していくだけでも困難かもしれませんが、長い目で見た場合、いかようにも進める可能性の組織として、大学合唱団にはたくさんの利点があると思います。


大学合唱団に関わるみなさんに祝福があることを、心から願っています。


(おわり)

 

「大学合唱団の新歓は難しい」を考えてみた

 

この文章は、「大学合唱団の指針を3つの短いテーマにまとめたら、新歓や活動の方針が決めやすくなるんじゃないかな?」という単純な思いつきから書かれています。
言わば「叩き台」で、この拙い文章から「実情に合っていない」「いや、それならこれはどうだろう?」 そんな批判と提案を広く求めるものです。
むやみと長い文章ですが、最後まで読んでいただければ幸いです。

 

まず、岡山大学グリークラブ在団生:なすさんによる「大学合唱団の新歓は難しい」のnoteをお読みください。

 

なすさん、こんにちは。
読み終え、とても興味深い内容と感じました。
コンクールに参加せず、技術系も学生だけの地方大学合唱団で、方向性、モチベーションをどこに置くか。新歓にどう反映させるか?
数十年前から議論されてきた問題ですが、現代でも大変魅力的なテーマだと思います。
「本格的な合唱を指向する勢」と「サークルエンジョイ勢」の対立も昔からありましたしね。

私がなすさんの記事から新しく感じたのは「合唱界全体の要請」という点から、岡山大学グリークラブさんの進むべき方向性を考えている点です。
数十年前には「世間の要望など知ったこっちゃねぇ!俺たちはやりたいことやるぜ!!」そのような反体制の空気が若者の間にあったと思っていたのですが、現在はそういう空気はほとんど残っていないことに少し驚きました。

ただ、なすさんも書かれるように「合唱界全体の要請」は大学の課外活動としばしば衝突しますし、そもそも「合唱界」もかなり広い範囲です。
ですから 「大学から合唱を始める者にとって過ごしやすい合唱団を作り、成功体験を与え、生涯にわたり合唱を楽しむ人口を増やすことに寄与する」 という目標は素晴らしいと思うものの、あまりにも広範囲で、高い理想を求め過ぎな気もしました。
(もちろん賢明ななすさんは「どちらを重視するかはその団体が総合考慮により決するべき」と言及されていますが)


勝手ながらこの目標を「3つの簡単なテーマ」、つまり「技術向上・団員増大・地方の合唱文化に寄与」に分け、さらに各目標への現実的な道筋は、例えばこのようなものがあるのでは?と考えてみました。
加えて繰り返し引用しますが「どちらを重視するかはその団体が総合考慮により決するべき」であり、決して何かを強制するものではありません。
あくまでも叩き台としての提案であることをご理解いただきますようお願いします。


【テーマ1:技術向上】
「岡山大学グリークラブという存在を、優れた演奏によってブランドとなる価値ある団体を目指す」

言わば「本格的な合唱を指向する勢」が中心になる活動ですね。
技術向上に重きを置き、音楽的に価値の高い演奏活動を目指し、演奏水準では岡山・中国地方を代表する団体。
演奏会には日本中からコアな合唱ファンが集まる・・・みたいな。

(違う文脈・必要性からですが) なすさんは「やっぱ神輿で担ぎあげることができる感じの常任指揮者が必要では?」とも書かれていて、それも一つの方法であると思います。
「指揮者は効率良く練習させるための存在」という言葉がありますが、学生指揮者がいくら熱意をもって団員を引っ張ろうとしても、毎年、学生指揮者が変わる団体では限界がある。
ただ、「外部からの "常任” 指揮者を招聘する」までには、A)から C) まで段階があると私は思っていまして。

 A)団体向けレッスン "だけ" をお願いする。
 外部の指揮者に、演奏する予定の曲を指導してもらう。
 実際のステージで指揮するのは学生指揮者。

 この方法でしたら、比較的容易に実現しやすそうです。
 一人だけではなく、お金とスケジュールが合えば、何人もの外部の指導を体験できますし。


 B)客演指揮者を呼ぶ
 レッスンからさらに段階が上がり、演奏会の1ステージで客演指揮をお願いする形です。


 C)常任指揮者をお願いする
 AもしくはBを何回かお願いしてから、「常任」指揮者になっていただく。
 常任と言えども、報酬や練習回数などの契約は毎年、確認し交渉すべきかと思います。
 
 岡山大学グリークラブさんのように学生だけで活動されていた団体は、Aのレッスンだけの指導者、Bの客演指揮者を選ぶのも難しいですね。
 ネームバリューだけでお願いすると、合唱団と相性が合わない場合もあったり・・・。
 岡山県でよく講習会を開かれる山脇卓也先生に指導者をご相談するか、山脇先生ご自身にお願いするのも良いかもしれません。

 

【テーマ2:団員増大】
「大学から合唱を始める者にとって過ごしやすい合唱団を作り、生涯にわたり合唱を楽しむ人口を増やすことに寄与する」

なすさんが書かれたテーマから「成功体験を与え」だけを抜いてしまいました。すみません。
このテーマなら、やはり団員数の増大。
どーんと大きく、登録団員数200人!オンステージ150人!!を目指すのはいかがでしょう。
岡山大学グリークラブさんを卒団された多くの方々が、既存の団体へ入団されたり、新しく団体を立ち上げたり。
あるいは合唱に好意的な聴衆として「生涯にわたり合唱を楽しむ人口を増やすことに寄与する」に繋がりますよね。

ただ、「大学から合唱を始める者にとって過ごしやすい」のは「技術向上」と相性が良いとは言えないかもしれません。
団員数を増やすためだったら、「(練習参加が)月に1回がやっとの者」も気まずくならないための雰囲気や練習を考えなければならない。
それには負担を減らすため、週3日の練習を週2日にする、定期演奏会のステージ数を減らすなどの方法が考えられます。

さらに団内イベントや楽しい練習や本番の雰囲気も求められるかと。(個人的には、テーマ1の技術向上とも分けられるものでは無いと考えますが)

ここで提案したいのですが、こういう「少ない練習時間で多めの団員を保つ目標を掲げている団体」こそ、「外部指導者の招聘」を検討していただきたいと思います。
前述したように、指揮者とは「効率良く練習させるための存在」と私は考えます。
すなわち、最小の手間と時間で最大の効果を上げる存在ですね。
外部指導者(技術顧問)とよく相談すること。
指導者が不在時の練習プランも、本格的な合唱を目指す技術系団員さんといっしょに考えてもらい、やる気のある団員さんのモチベーションを保つのは、非常に重要と個人的に考えるものです。

 

【テーマ3:地方の合唱文化に寄与する」
→愛唱曲を磨き上げ、外で歌う機会を中心にした活動

学校や老人ホームなどの訪問公演をメインとした活動です。
自分の勝手なイメージとしては、愛唱曲や一般の方に好まれるような15-20曲ほどをレパートリーとして磨き上げ、年ごとにその3分の1ほどの曲が入れ替わるようなものを想定しています。
なすさんの言葉に「毎月コンサートを開催するわけでもない大学合唱団」を(コンサートとまで言えないかもしれませんが)とにかく外で歌う機会を増やす団体を目指す。
定期演奏会では、いわゆる邦人合唱曲は1ステージくらいあるかもしれませんが、プログラムのメインは歌い継がれ、磨き上げられた愛唱曲たち。
三重の一般合唱団うたおにさんの、何年か前までの活動とレパートリーに似ているかもしれません。http://www.utaoni.com/

個人的に「毎年、毎回、すべてのステージで(その団にとっての)新曲を披露することは、【観客にとって】どれほどのメリットがあるのだろう?」という疑問を持っていまして。
歌い継がれた曲は、歌う側が思うよりも観客に響く!……そんな実感があります。
もちろん、合唱に縁が無い観客にウケるためには、演奏の他にも演出や振り付けなどへの厳しい水準が求められます。
それこそそういう演出専門の役職や、外部からの指導者を求めることが必要かもしれません。

 

【まとめとして】

いかがでしょうか?
1)技術向上
2)団員増大
3)地方の合唱文化に寄与する

単純化されたこれら3つのテーマを、なすさんが書かれるように幹事学年がバランスを総合考慮の上でまとめ、活動方針を決定すると良いのでは?という提案です。
もちろんそれぞれのテーマで100%振り切るのは現実的では無いので。
例えば「技術向上60%、団員増大30%、地方の合唱文化10%」のように割り振り(優先順位)を決め、新しくテーマを作成する。
「優れた演奏で多くの方々に認められる合唱団を目指しつつ、共に歩む仲間を増やしていく」。

あるいは「技術向上20%、団員増大50%、地方の合唱文化30%」の場合のテーマは
「初心者が合唱の喜びを知り、生涯にわたり合唱を続け、合唱文化を発展させるため尽力する」などと、決めていくのはいかがでしょうか。

長々と書いてきましたが、この文章は、「大学合唱団の指針を3つの短いテーマにまとめたら、新歓や活動の方針が決めやすくなるんじゃないかな?」という単純なものです。
繰り返しますが「叩き台」で、この拙い文章と考えから「実情に合っていない」「いや、それならこれはどうだろう?」そんな批判と提案を広く求めその結果、実情に合った、有益なものになれば良いと考えています。

現役大学生である、なすさんの真摯な文章を読み、大学合唱団の存続と更なる発展を願いこのような文章を書きました。
長い文章ですがこの文を読まれた、現役大学生、かつて大学生だった方々、みなさまからのご意見を、お待ちしております。


→ 余談として
【大学合唱団の新歓は難しいへの余談】→コンクールと大学合唱団が存続する意味とは

もお読みいただければ幸いです。

 

「大学合唱団オンライン合唱祭」を聴こう!

 

3月16日から始まった大学合唱団オンライン合唱祭。
大学合唱団、ユース団体の演奏動画を公開し、「もう一度聴きたい団体への投票」、感想も送れるという企画です。

 

参加団体は、北海道から九州まで、なんと全26団体!
東北大学の学生さんが中心に運営されているそうですが、投票やご意見フォームの優れた整備など、凄いなー!と感心ばかり。
是非とも多くの人に聴いていただき、新しく大学(ユース)合唱団を知るきっかけになれば良いなぁ、と心から思っています。


自分も26団体の演奏を聴き、投票もしたんですが。
さて、このまま終わっても良いのかな……?と。
かと言って、X(旧ツイッター)で騒ぐのも、公式さんは推奨していないような雰囲気??

※「SNSでの拡散は大歓迎です!!!騒いでOKです!!!」とのことです。誤解してしまい申し訳ありませんでした!


・・・というわけで、当ブログで全く個人的に全26団体の簡単な感想を記すことにします!


さらに勝手ながら

◎ 最高にお勧めします! の団体。

◉ とてもお勧めします! は団体。

○ 聴けて良かった! で、団体を付けさせていただきました。

私、文吾の独善的で偏見強めの感想なので、どうかあまり本気になさらずお読みいただければ有り難いです。

 

 

 

 

○ 聴けて良かった!
北海道大学合唱団

昨年の全国大会でも思いましたが、深く奥行きのある発声、それでいて繊細な表現!
三善先生の2重合唱の難曲「路標のうた」を、比較的少人数、しかもこんなに上質な音楽とは驚きです。
クライマックスの表現も見事で、男声合唱外では知られにくいこの名曲を、北大さんの名演奏で広く知ってもらえる良い機会だと思いました!

 

 

北海道大学混声合唱団

寮歌「都ぞ弥生」が聴き慣れない編曲なので、慌ててプロフィールを読み直したら岩河智子先生の新編曲なのですね!
新しさもあり、それでいて元曲の良さも生きていて感じ入りました。
歴史ある団体は、持ち歌にこのような新編曲を依頼するのも良い試みかもしれませんね。
松下耕先生「ほらね、」は団員みなさんの気持ちが入った演奏。
声とホールトーンの広がりが、そのまま多くの人へ届かせようとするようでとても好感を持ちました。

 

 

東北大学混声合唱団

明るく元気の良い発声と表現が、やはりホールトーンでますます魅力が増していました!
三宅先生の「あいたくて」で特にその持ち味が出ていて良かったと思います。

 

 

○ 聴けて良かった!
東北大学男声合唱団

繊細な曲調の北川先生「またある夜に」と対照的な「South Rampart Street Parade」のプログラミングが良かったです。
特に「South~」はバーバーショップ的なノリが、歌と動きへとても出ていて、うわ~こういうの学生時にやりたかった!と羨ましくなりました。
関西学院グリークラブさんの十八番ですが、それを仙台の地で、決して借り物じゃない表現にまで高めているのが素晴らしい。
男声/男性らしさを表現するものとして、多くの方に「観て」いただきたいと思いました!

 

 

○ 聴けて良かった!
福島大学混声合唱団

コンクール外での演奏は初めて聴きますが、女声・男声とも深く気持ちの入った、実力の高い発声で中島みゆき「糸」の世界観をしっとりと、感動的に演奏されていました。
主旋律はもちろん、オブリガートも気を抜かずふさわしく。さすが!と思いました。

 

○ 聴けて良かった!
群馬大学混声合唱団

信長先生「F」「リフレイン」、10人という少人数だそうですが、その分、表現者として一人一人が自立し、自分の音楽を伝えよう!という強い想いに打たれました。
ピアノの石野桃香先生は群馬大の学生さんなのかな?でしたら将来が楽しみですね。

 

 

早稲田大学女声合唱団

信長先生「春」、発声は変わらず明るく若い印象なのですが、表現の細かいところでこだわりがたくさん見られるようになって。山脇先生の鍛錬のおかげですね。
大学男声以上に、大学女声は存続が厳しいものになってきていますが、45名と確固たる存在感を示しているのが本当に凄い!

 

 

東京大学音楽部女声合唱団コーロ・レティツィア

信長先生「万葉恋歌」より。こちらも貴重な大学女声!
学生指揮者さんの音楽の掴み方と、音楽技法の差異を合唱で表現する能力の高さに感心しました。
テンションの高さ、ステージに満ちる緊張感からコンクール上位高のご出身なのかな?なんて。

 

 

東京大学音楽部合唱団コールアカデミー

指導者が奥村泰憲先生に替わられたということ。
歌い継がれてきたであろう「夜のうた」「雨後」が、愛唱曲らしい気持ちが入った演奏で、耳に心地良かったです。

 

 

緑会合唱団

初めて聴かせてもらったんですが、確かな実力の団体なんですね!
曲紹介からも思い入れが伝わる三宅先生「学ぶ」はもちろん良かったですが、最初の団歌「始まりの歌」がさすが長年歌い継がれているだけに、音楽的な練度と説得力があり、とても好感を持ちました。

 

 

東京大学白ばら会合唱団

東大の中で最古の歴史を誇る団体だとは知りませんでした。
懐かしの名曲・新実徳英先生の「幼年連祷」へしっかり向き合っていて嬉しくなり。
そういえば、新実先生も、作詞者の吉原幸子さんも東大出身……(笑)

 

 

○ 聴けて良かった!
めりいごーらんど

Nコン中学校課題曲「願いごとの持ち腐れ」、高校課題曲「鳥よ空へ」、ともにしっかりとした音楽があり感心しました。
国立音楽大学の合唱団だから、上手い人を集めたら良い合唱になるよな~とつい考えてしまいがちですけども、必ずしもそうとは限らないですよね(苦笑)
めりいごーらんどさんは、個々の技術の高さを十分に感じさせながらも、「合唱」という表現に団員さんの求心力、そして合唱表現の独自性にこだわりがあると感じました。
わずかに女性らしい可愛さを意識しているのも良いですね、自分たちを客観的に見て、強みを考えている結果だと思います。
あとホールの音響が良いのはもちろん、録音機材も良いものを使っているんだろうな~羨ましいな~~!!

 

 

◎ 最高にお勧めします!
上智大学混声合唱団アマデウスコール

信長先生「新しい歌」をまさに今、新しく生み出そうとする気概と熱に満ちた演奏!
生き生きとしたピアノで支える須永真美先生の演奏も素晴らしく。
昨年からという新しい指揮者:神足有紀先生の音楽と、団員さんの熱意がぴったりハマった印象。
若者の演奏はこうじゃないと!本当に聴けて良かったです!!

 

 

金沢大学合唱団

信長先生「新しい明日へ side-B」、タイトル、歌詞のままに希望に満ちる未来が待つような歌でした。
力一杯の願いがこもった熱唱!

 

 

○ 聴けて良かった!
静岡大学混声合唱団

鈴木輝昭先生「五つのエレメント」より、輝昭先生の特有の和音、作品の世界観が見事に表現されていて惹かれました。
高い技術はもちろん、細部にも神経が通っている演奏ですね!

 

 

名古屋大学医学部混声合唱団

團伊玖磨「筑後川」から、という懐かしい曲!
横山潤子「たましいのスケジュール」より、は若者たちひとりずつの真情の吐露というニュアンスがとても出ていましたね。

 

 

京都大学グリークラブ

切実な多田武彦先生「鐘鳴りぬ」。
「琵琶湖周航の歌」は長年歌い継がれた曲だけあって、聴く者を安心させる雰囲気があり、前曲とのコントラストが良かったです。

 

 

◉ とてもお勧めします!
京都大学音楽研究会ハイマート合唱団

高嶋みどり先生「贈物」「白鳥」、うーん上手い!
団員みなさんが合唱の本質を理解している印象がありました。
隅々まで神経が通っていて、場面ごとの音色の変化などにも唸り。
プーランク悔悟節のモテットも、悲痛な想いとプーランク特有の音楽を巧みに表出していて感心しました。

 

 

大阪大学男声合唱団

「Muss i denn」は初めて聴いたのですが、歌い継がれてきた曲ということで、周囲を明るい雰囲気に染めるようでした。
「いざたて戦人」も懐かしいですね!
こういう愛唱曲をたくさん持っているのは男声合唱団の強みですね。

 


ICEK

ゴスペラーズ「永遠に」、曲に合わせ、合唱とも違う、マイクを使う発声とも違う歌い方を指向しているのかな?
作品への思い入れの深さを感じられて良かったです!

 

 

甲南大学文化会グリークラブ

「The Land of Music」、ドラマティックな音楽ながら、温かさも伝わってきました。
不勉強でIlkka Kuusistoという作曲家を知らなかったのですが、フィンランドの作曲家なんですね。
甲南大学さんの演奏で知ることが出来て良かったです。

 

 

神戸大学混声合唱団アポロン

千原英喜先生「どちりなきりしたん」より。
メンバー全員で呼吸を合わせ、とても丁寧に歌う姿に、良い活動をされているなあ・・・と感じました。

 

 

○ 聴けて良かった!
島根大学混声合唱団

島根大さんのコンクール曲以外の演奏を聴くのは初めてですが、旧学歌「緑水たゆたふ」が明るく伸びやかで、聴きながら元気になりました。
千原先生「夜もすがら」は団員さんの持ち声の良さと、歌心が伝わってくる優れた演奏でした。

 

 

岡山大学グリークラブ

相澤直人先生「ぜんぶ」、木下牧子先生「おんがく」、どちらも良い雰囲気で、詩のイメージを伝えようとしているのが伝わってきました。

 

 

◉ とてもお勧めします!
広島大学東雲混声合唱団パストラール

上田真樹先生「夢の意味」「夢の名残」、思い入れのある優しい声から始まり、音楽、感情の起伏を精一杯表現しようとする姿に打たれました。
後半の盛り上がりに全てを注ぎ込むような表現……良いですね!

 

 

九大混声合唱団

千原英喜先生「みやこわすれ」、松下耕先生「ほらね、」、共に愛唱曲として歌い継がれたことがわかる、積み重なった年月を感じさせる音と練られた表現が心地良かったです。

 

以上、全26団体への感想でした。

感想の他に、「お勧め」「聴けて良かった」なども付けてしまいましたが、もちろんそれ以外の団体の演奏も、等しく価値があることは間違いありません。

自分も観客賞で投票を募るなど、少し似ていることをやっているので、いろいろと思うこともありました。
せっかくの機会、できるだけ多くの団体を聴いてあげて、そして投票、余裕があれば感想も送り、寄付もしてあげると良いと思います!

 

《無料》「大学合唱団緊急座談会」を読もう!

 

昨年の合唱連盟・ハーモニー誌秋号での特集・大学合唱団緊急座談会「コロナ禍を経て取り戻した私たちの居場所」が無料公開されています。

この特集、東京、京都の大学合唱団団員さんの座談会なのですが、新入生の勧誘やより良い活動へ向かうためのヒントが散りばめられていて、とても優れた特集です。

 

📌大学合唱団のみなさま📌

 

ハーモニーNo.206特集

大学合唱団緊急座談会「コロナ禍を経て取り戻した私たちの居場所」

記事を無料公開しています

新入生勧誘のヒントが見つかるかも⁉️

読んでいて慶應ワグネルさん、京大合唱団さんの発言に唸りました。

京大さんはめっちゃ優秀な社会人になりそう?!

新入生勧誘では、ワグネルさんの「知ってもらう」、「検討してもらう」、「入団後のケア」、段階ごとの細やかな対応の「フェイズ」が素晴らしい。

京大さんのSNS活動(3月から勧誘アカウントは毎日更新)、その他の「京大合唱団」の横断幕や、団名が目立つパーカーを着て、授業中に認知してもらう、QRコードに繋げるなど多彩な戦略!

 

この特集、毎年やって欲しいですね。

次回は北海道や九州の大学合唱団からも呼んでもらって(笑)

 

外部の人からの認知と入団後のケア・・・一般の団体にとっても非常に大切な考えですよね。

大学合唱団の団員さんが増えることを強く願っています!

 

Chorsal《コールサル》12th Concert -初めての混声合唱組曲4-のお知らせ

 

Chorsal《コールサル》12th Concert -初めての混声合唱組曲4-

ぜんぱくさんこと大村善博さんが指揮者の、松山の意欲的な合唱団「Chorsal《コールサル》」さん。
公募合唱団との演奏も組み入れた、12回目となるコンサートのお知らせです。

 

🐒概要

日時:2024年2月11日(日)13:30開場/14:00開演

会場:松前総合文化センター広域学習ホール

 指揮:大村 善博、景山誠之、寺口穂花、増原拓馬、山田青乃、山中美里佳

ピアノ:尾海あかり、大澤宣晃

チケット:一般1,000円 / 高校生以下 500円(全席自由)

 

🐒チケットのご購入について
チケットは下記のどちらかでお求めください。

〔郵送でのチケットお渡し〕お申込期限:2024年2月2日(金)
購入フォームへの入力後、チケット代金の入金が確認でき次第郵送いたします。
チケット代金の入金期日は2024年2月6日(火)です。
▷チケット申し込みフォーム:https://forms.gle/T7AonjmKE7hE1oMS9

〔出演者から直接お渡し〕
出演者にお声がけいただき、チケットをお求めください。

 
🐒演奏プログラム
〔1st stage〕Monteverdiの世界
〔2nd stage〕ア・ラ・カルト-5人の指揮者の饗宴-
〔3rd stage〕混声合唱曲集「地平線のかなたへ」(木下牧子 曲)
〔4th stage〕混声合唱組曲「方舟」(木下牧子 曲)

 
🐒ご来場にあたって
・終演は16時を予定しております。
・入場時、チケットは回収させていただきます。
 再入場にはパンフレットのご提示が必要ですので、一人1部必ずお持ちください。

「はじめての混声合唱組曲」として、今年は木下牧子先生の初期作品!
ぜんぱくさんに先日お目にかかったときサッカーによせてで8分休符があるでしょ?あそこにボールを渡すときの目配せや、蹴り返す足の感触があるんだよね~」なんてお話を聞きました。
「指揮というものの意味がわかると思う」ア・ラ・カルト-5人の指揮者の饗宴-や、あっという間に公募人数上限が集まった40人による熱い名作「方舟」など、聴きどころ満載のコンサート!


2月11日には愛媛県伊予郡の松前総合文化センター広域学習ホールへどうぞ!

 

観客賞座談会・混声合唱の部 最終回

 

 

つなん雪まつり&SNOWWAVE2024・津南町観光協会

 

前回は観客賞・混声合唱部門、第6位内には入らずとも、印象的だった団体鶴岡土曜会混声合唱団さん岡崎混声合唱団さんVocal Ensemble 《EST》さんへの感想をお話ししていました。

今回は混声合唱部門で印象的だった団体感想の続き、最後の2団体についてお話しします。

広島県・中国支部代表
合唱団ある

https://chor-aru.vercel.app/page/top

https://twitter.com/Chor_Aru

 (混声68名)

B 自分は投票しました!
 課題曲G3 水上
 楽譜に忠実に演奏していて。
 それが単に忠実なだけじゃなく、
 ちゃんと曲の内容や流れ、
 音楽の求めるものに沿っている。
 シンプルに楽譜通りに歌っているけど、
 それだけじゃない。

 
 うんうん、音楽に自然さ、
 市民合唱団的な良さがあって。
 ひとりひとりが思う歌を発信し、
 それを良い音楽の流れとして
 活かしている感じがありましたね。


 いろんな年代の団員さんがいるから、
 そういう懐の深さが
 ああいう演奏に
 なっているのかなぁって。


「故郷を思い出しながら歌っている」
 感があり。
 この「水上」を演奏した団体の中では
 とても好きな演奏でした。


 自分が投票した大きな理由は
 自由曲:松本望「1.夜ノ祈リ」。


 広島の団体がこの作品を歌った、
 その切実さが!


 そう、太平洋戦争での
 悲惨な記憶を残している地に
 暮らしている人たちが
 この曲を歌うという意味。
 そして現在の世界状況。
 罪も無い普通に生きていた人たちが
 ああいう目に遭って・・・。


 そうですね、
 戦場ではないし、兵士でもない、
 隣り合わせた普通の人たちが
 戦いに巻き込まれる恐ろしさ。
 テンションが最初から高くないゆえに
 音楽の起伏や、
 ピアノの見過ごされそうな美しさが
 あるさんの演奏で初めてわかった気が。


 普通の人々が理不尽な目に遭い、
 戸惑っているようにも感じました。
 等身大、ひとりの人間としての祈り、
 叫びになっていたと思うんですよ。


 実際に壮絶な体験をした人たちには、
 体験を証言する人たちもいれば、
 「言えない!」と拒む人もいて。
 あるさんの演奏は、
 その「言えない人」に
 寄り添っているのかな、と。

 広島の合唱団が
 こういう演奏をされたことは
 内面で非常に感じるものがありました。

【メール、Xの感想です】

課題曲が良かったし自由曲も心に響きました。


二つの祈りが素敵すぎました!(語彙力)


この作品を老舗の合唱団の充実した音の演奏で聴けただけで感動した
テキストを咀嚼して聴き手に訴えかける形で、感情が揺すられる音楽になっていたと思う


夜ノ祈リに固唾を呑んだ


G3 自分の団でやった時と解釈が近い感じがした、500倍上手く歌えてたらこういう水上にしたかった。
もたもたしないで進んでいくの、大事。
自由曲
す…ごい…難しそうな曲…やっぱり全国レベルだと選曲からして違う。
衣装の青さも曲の雰囲気にすごい合ってた。
ただ口をぽかんと開けて聴いているしかなかった…


68名で夜ノ祈リを作り込むのはとても大変だったのではと。
初演団体の身として、歌ってくださるのがまずありがたいなぁという気持ちと、どんなお気持ちでこの曲と向き合って来られたのかと思うとなんとも言えず…。
勝手にファンしている福原先生の指揮もみれて幸せでした!

 

 

混声合唱部門、いよいよ最後の団体です!

埼玉県・関東支部代表
scatola di voce

http://www.scatola.jp/

https://twitter.com/scatola_di_voce

 (混声31名)

 好きでした!
 納得というか、指揮の森田悠介先生と
 通じるものがあるのかな(笑)
 初めての金賞、おめでとうございます!


 ピアノが良かったですよ!


 そうですよね~!
 やはり松元博志先生は良いですね!
 課題曲G4
 Ⅰ―空と涙について―
 最初は合唱が奥に
 引っ込んでいるのかな?と思ったけど、
 ピアノと寄り添うように
 音楽を紡いでいって。
 ヴォカリーズと言葉ある歌を
 上手く繋いでいましたね。
 バランスも良かったと思いました。


 団員さんと森田先生は同年代くらい?
 歌い手と指揮者が近くて、
 森田先生の指導だけじゃなく、
 団員さんの自発的な歌、気持ちが
 演奏に乗っている印象がありました。


 後半「しきたいの」から
 盛り上がりがジーンと来てねぇ~!
 自分たちの心情を
 上手く歌として語れる団体だなぁって。
 自由曲1曲目:ドナーティ「Noche(夜)」
 インパクト抜群の出だし!


 世界がガラッと変わった!


 そう!でも高いテンションだけで
 進めるんじゃなく、 
 ちゃんと和音や響き、ニュアンスを
 団員全員が理解している演奏で
 とても良かったです。


C 2曲目のマニアーノ
 「Lux Aeterna(永遠の光)」
 ステージ上で輪になったのに驚いて!


 ビックリしましたよね!
 輪になり、
 向かい合う人の声を聴き合う……
 輪の中から生まれる音をこそ、
 大切にしていこうとする、
 そんな深読みもしてしまいました。


 スカートラさん、
 リスタートのために
 6月にいったん活動を休止されて。
 だいぶ団員さんも
 入れ替わったそうですけど
 そういう意図があったのかも。


 聴いていて、光に包まれた・・・


AC文 お~!


 海外の団体っぽいんですよね。
 日本だと内にこもり
 隠そうとしがちな思いを
 外に出し、積極的に人へ伝えようとする。
 この「永遠の光」も
 彼ら彼女たちの心と通じ合ったような。


 輪になったところへ
 上からの照明の光がちょうど当たって。


 でしたね~!
 あのりゅーとぴあだからこその光、
 音の響き方!


 たまたまかもしれないですけど
 同じ関東、埼玉の合唱団なので
 新潟のこのホールを訪れ、
 計画を練ったのかもしれないですね。


 関東大会は各県持ち回りだから
 このホールの響きは知っているはずだし。


 「あの照明の光の輪は活かせるかな?」
 意図だとしても、偶然でもスゴい!


 並びも、そして響きも新鮮でした。
 輪になると客席へ
 届かないのかなと思ったけど。


 ぜんぜんそんなことなかったです。
 ソプラノさんが後ろ向き、
 衣装のスパンコールが輝いて。
 輪の中心から光が立ちのぼり、
 祈りが伝わってくるような。


 ずっと考えていたんだけど……
 「フランダースの犬」のラスト!


AC文 それだ!!!(笑)


 りゅーとぴあに
 天使が降臨していました・・・。

【メール、Xの感想です】

G4ぼくはとても好きな解釈。
支部よりも練られてて👍マニアーノはオーダーいいね


夕刻を感じさせる歌い出しから始まる切々とした感情に溢れたG4の後、自由曲の冒頭のフォルテで世界観の切り替わりにハッとさせられた
2曲目の独特すぎる並びの時のハーモニーが一番充実してた


圧倒的世界観。
よくやる孤状の並びがこのホールでは功を奏した印象。


結成当時から知っている団体なので、今回の解体と再構築を通してこの結果というのはすごくほっとされたのではないかと思いました。
課題曲は松元さんのピアノが素晴らしく、自由曲は世界観に引き込まれました!
ソプラノの方、素敵だったな〜!これからも応援します😊


スカートラめっちゃ上手くなっててびっくり
課題曲の作り方がハマってて、自由曲どっちも美しく鳴り響いてた


G4 ようやくこの曲が少しずつ分かってきたような気がした。
深い解釈、分かって伝えようとしている。
ドレス色っぽかった。
自由曲
特に2曲目が良すぎて…パナムジカに楽譜がないよう。
情感のこもった強い祈り。TenorとSopのハイトーンで鳥肌たった。世界かぶわーって広がるような…語彙がない…大好きな演奏でした。

 

 

【混声合唱部門を振り返って】

 

 さてこれで混声合唱部門、
 新潟全国大会の45出場団体を
 すべて話したわけですが。
 混声合唱部門を振り返って、
 どうでした?


 混声合唱部門ね、
 あまりにも完成形だから・・・


 どういうこと?!


 あまりにも自分たちが
 「こういう曲を選んで
  こういう風に演奏する」を
 極めている団体ばかりだったから
 「あっ、そうだよね」って・・・。
 納得感しか無いんですよ、
 どこの演奏聴いても!


 そうですよね……
 長年、こだわりを持って
 自信を持って出されたものだから
 ちょっと違和感があっても
 「自分の方が間違ってるんじゃ?」


 アリかな? アリかも!!
 「頷くしかない」って(笑)


A 今回、混声合唱部門では
 初出場が無いじゃないですか。


 全国大会自体が
 初めてという団体は無いです。


A 初出場が無かったから
 わかっている団体ばかりで。
 「自分たちの良いところばかりで
  勝負してきたな」って。


B 田畠さんみたいな新星が
 混声部門に突如現れたら
 面白いけどね。


 でも新しい才能って今なら
 室内合唱部門か
 大学ユース部門から出るのかもね。
 仲間を集めて少数精鋭で
 切り込んでいく!みたいな。


A そうですね、
 ユースから始まったものが
 時間の経過と共に発展していって
 混声合唱部門に参加、
 そういうラインの可能性かな。


 しかしこの問題は難しいですね……。
 言わば駅前の一等地に
 老舗で大人気の洋食屋があって。
 その隣に新鋭イタリアンシェフが
 新規開店したら続けられるか?!(笑)


A いやでも、その洋食屋が
 店を畳むかもしれない。


C文 あ~……そうですね~。


B 土曜日に
 「8時だョ!全員集合」が全盛だったのに、
 次に「オレたちひょうきん族」が
 人気になったでしょ?
 時代は変わっていくんだよ。


 古いな~(笑)
 その後にとんねるず、
 ウッチャンナンチャン、
 ダウンタウン……
 盛者必衰、か。
 ちょっとみなさんに伺いたいんですけど、
 「音楽」ってノイズがどれだけ入っても
 聞き取れるものなのかなって。


ABC なにを言い出すの?!


 いやぁ、さっきの話じゃ無いけど
 老舗の洋食屋シェフが年齢を重ねていく。
 同じように合唱団も高齢化で
 経年変化が起こりえるわけですよ。
 コンクールなんて顕著じゃないですか。
 数十年単位で聴いている合唱団の
 「音楽」をいつまで聞き取れるのかな?と。


B でも今年のMODOKIさんの演奏は
 声が若返った気がするな。


 あの……めっちゃ失礼なんだけど
 ある団体さんは
 「あまり耳馴染みの無い現代曲」選曲時に
 全国大会へ出場している印象があって。
 それって素材の変化が気づきにくいのも
 理由じゃないかなぁ。


A 偶然でしょ?!
 他の出場団体が純粋に良かった年も
 あっただろうし。


 また話が変わるけど。
 合唱を聴き始めてから
 わかりやすい障壁が2つあって。
 ひとつは「言葉」
 日本語から違う言語、
 ラテン語やドイツ語の曲を聴き始めるときに
 やっぱり抵抗があった。


C MODOKIさんの時にお話ししましたが、
 今でも抵抗がある人、います~。 

 

 もうひとつは「素材の経年変化」
 合唱の聴き始めは、
 中学高校の統一された
 若い声の演奏に慣れていたから、
 伝統ある合唱団、
 幅広い年代の声には最初抵抗があった。


A そこから中高生の合唱しか
 聴かない人たちもいるよね。


 あと経年変化とは違うけど。
 これはずっと前に雨森文也先生に
 お話を伺ったときから考えていて。
 ピアニストのミスや、
 オーケストラのアインザッツのズレの中から
 音楽を聞き取ることなんかもね。

A 「経年変化」って・・・
 「20年経っても君の笑顔は輝いてるよ!」
 ……じゃダメなの?(笑)


文 もちろん素敵さ!……って(笑)
 いや、笑顔は認めるんですけど、
 ノイズが多くなっていくと
 どうしても輝きを見つけにくくなる。
 輝きをノイズの中から見つけるために
 自分ができることは?って。

 ・・・心を動かしたいんですよ。


B 「心を動かす」、ね。
 それを聞いてコロナ前に
 文吾さんを酷いと思ったことを
 思い出したんだけど話していい?

 

AC 聞きたい!


 なんだろう……怖いけどどうぞ。


B 自分の好きな合唱団に
 文吾さんの知人女性、
 Tさんという方がいて。
 そしてTさんの娘さんが入っている
 中学校合唱部が
 全国大会に出るって聞いたんだ。
 でも娘さんの全国大会の演奏を聴く前に
 Tさんは亡くなってしまったんだよね。


AC あぁ・・・。


B 全国大会が終わった後、
 聴いた文吾さんに
 「演奏どうだった?」と尋ねたんだよ。
 もちろん娘さんが歌った
 中学校の感想を期待するよね?
 そうしたらこの人は
 「いやぁ沖縄の中学校素晴らしかった!
  ボロボロ泣いてしまいました」と
 ずっと他の中学校の感想を続けるんだよね。
 たまらず「娘さんがいた中学校は?」って
 尋ねたらこの人黙っちゃって!
 あれは本当に酷いと思った!


 ・・・ごめんなさい。
 えぇと、弁解してもいいですか?


B どうぞ。


 Tさんの娘さんの中学校は
 正直に言って
 心が動かなかったんだよね。


B  やっぱり・・・。
 でも、あの場で 「心が動く」のは
 そこまで大事なことかなぁ?


 ごめんなさい・・・。
 それでもね、聴くまでに
 演奏曲の楽譜を取り寄せて読んだり。
 他の音源も複数聴いて、
 作品の本質や魅力を掴もうとして。

 生きてきた中で一番真剣に聴こうとして。
 あの中学生が目指す理想の音楽を
 可能な限り見つけようとした。
 それで目指そうとする音楽は理解できた。
 亡くなった彼女に伝えようと、
 できるだけわかりやすく
 良かったところを書いたんですよ。


B え、ブログに載せてたっけ?


 いや、彼女宛てのは載せていない。


B そこまで準備して真剣に聴いても
 あの中学校の演奏で
 文吾さんの心は動かなかった。


 そうなんですよね。
 心が動かなくても
 「一生懸命に歌ってたよ」と
 答えても良かったのにね。
 そういう間に合わせの答えが
 Tさんに一番怒られそうと思ったのかな。


B  たぶんTさんは怒らないでしょう?


 そう、自分の問題ですよね。
 ……Tさんに会って話したかったな。


A いや・・・さっき尋ねた
 疑問への答えは
 もう文吾さんわかってるんじゃないの?


 「音楽」ってノイズがどれだけ入っても
 聞き取れるものなの、って?


A 演奏を聴く前に準備し、
 演奏中に中学生たちの理想は何か、
 一生懸命掴み取ろうとしたんでしょ?
 その結果、目指す音楽は理解できた。
 ノイズが多くなった合唱団でも
 それは同じなんじゃないの。
 生きていく中で楽譜を読んだり
 多様な音楽を聴いたり。
 そして実際の演奏を前にしたら
 作品の本質、理想像を掴もうとする。
 他の合唱でも貫くのが大切なんじゃないの?


B もちろん発声や音程の純度は大事だけど、
 その奥にある
 「表現したい本質」を見つけ出す。


 そうか・・・。
 たとえばできるだけ先入観を持たない。
 聴きはじめたらすぐ投げ出さない。


C そうそう、
 何かそこに良いものがあると思って聴く!


 「夢みたものはひとつの幸福
   それらはすべてここにある
  ……ですかね。

 とりあえずひとつの幸福が目の前にあるんで
 味わって良いですか?


B 好きにしたら(笑)

新潟全国大会・観客賞座談会の連載はこれでおわります。
たくさんのご投票、そして感想を寄せていただいたみなさま、本当にありがとうございました!