宇宙(そら)から堕ちる男の物語

 
 ブックオフオンラインでは1500円以上購入すると送料が無料になる。
 というわけで買いたい本の他にいろんな本をついついコラボして買ってしまう結果になる…

 1500円に100円と届かなかったのでMEIMU氏の「機動戦士ガンダム MS IGLOO 黙示録0079」(角川書店)を150円で買って読んでたら無性にガンダム系のDVDが観たくなってレンタルで「ジャブロー上空に海原を見た」(<「機動戦士ガンダムMS IGLOO ―黙示録0079―」) を借りた。

 「MS IGLOO」シリーズは「機動戦士ガンダム」のサイドストーリーである。
 敗色濃厚なジオン軍で試作兵器の実践評価を行う部隊の物語である。
 本シリーズを透かして本編の「ガンダム」が全く別の角度から垣間見える感覚が楽しい。

 そして戦局の悪化の中で、無謀とも言える兵器の開発と実践投入が行われる様子は我々日本人には不思議な既視感を生むのであ。その視点もまた秀逸である。

 ガンダムからは沢山のサイドストーリーが紡ぎだされているが、本シリーズは極めてレベルの高い内容に思える。

 <以下、作品の具体的内容に触れますのでご了解ください>


 連邦軍の基地ジャブローから発進する艦艇を奇襲するための奇襲兵器ゼーゴックが投入される。ゼーゴックは既存のモビルスーツに大型コンテナを付帯した急造の兵器である。高速で敵艦艇と交差して短時間の攻撃後、速やかに戦線を離脱するという奇襲専門の兵器である。

 ゼーゴックが成層圏外から大気圏内への突入する感覚が素晴らしい。

 漆黒の宇宙から高速で落下すると突如真っ青な空が現れる。
 白い航跡を引いて上昇してくる敵の艦艇とすれ違いざま交戦し、自らは重力に引かれ落下していく。そのスピードと振動。急速に眼の前に迫る大地。これは異常な恐怖と高揚感を生む。


 搭乗者は海兵である。無骨で、漁師の血を引く男である。
 宇宙の描写は海とのアナロジーを生むが、狂気ともいえる意志で地表に降下する海兵の姿を見ていると、SFというよりヘミングウエイやメルビルのような海洋文学の世界が忽然と現れるのである。

 それにしても、漆黒の宇宙を抜けて突如現れる真っ青な空や真っ白な雲は身体が震えるほど美しく感じられる。

 宇宙から地表へ高速で落下するというのはどんな感覚を生むのだろうか。
これを体験した人類は未だかって存在しない。それは全く未知の経験であり、不思議なまでの高揚感が生まれるのかもしれない。その時は誰もがこの海兵のように意味不明の雄叫びを上げるのだろうか。
 一度、宇宙(そら)から堕ちてみたいというのは私の密かな願望である。

      【参照】http://www.msigloo.net/pro/index.html