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北海道独立義勇軍:Butch隊長ブログvol.2

2009-06-29

『Santa Fe』は児童ポルノなのか?

 『保坂展人のどこどこ日記』を読んで驚いた。今の国会で審議中の自民党議員提出の児童買春・児童ポルノ禁止法改定案が成立すると、宮沢りえの写真集『Santa Fe』が規制対象になり、持っている人は1年以内に処分しなければならないそうだ。宮沢りえは1973年4月6日生まれ。篠山紀信撮影の『Santa Fe』が出版されたのは1991年だから当時18歳ということになる。改定案では「児童とは、十八歳に満たない者」と定義されており、写真集撮影時期、宮沢りえは未だ18歳になっていない。したがって児童ポルノ禁止法第2条第3項3号の「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写したもの」に該当し、改定案ではそうした写真等の単純所持を禁止しているのだ。「3号ポルノ」というらしい。1年の猶予期間のうちに廃棄せよということになるそうだ。

 恥ずかしながら私は91年に『Santa Fe』を購入し、今も所持している。当時、話題になった写真集だったから、とりあえず見ておこうと思って買ったものだ。買った当時はもちろんページをめくったが、2〜3度見ればもう十分。それ以降、本棚の隅っこに死蔵したままだ。

 あれが児童ポルノなのか? 当時、アラーキーこと荒木経惟が「あれじゃ抜けねぇよ」と評していたのを思い出したが(笑)、「自己の性的好奇心を満たす目的で」という条件付きだというから、宮沢りえの美しい(と私は思う)裸体を鑑賞することは児童ポルノ禁止法違反に該当しないと主張できるような気もするが、そんなことは言い訳に過ぎないと言われそうな気もする(笑)。

 児童ポルノ禁止の主旨は、被写体となる児童の人権侵害を防止しようということだろう。そういうポルノを撮影したり頒布するのは大いに禁止すればいいだろうし、現行法でも禁止されているが、単純所持まで規制するのはどうだろう。第一「自己の性的好奇心を満たす目的」などということをどう判断するのか。提案者である自民党葉梨康弘国会で「そこに手垢がついているとか、沢山所持しているとか」などと噴飯モノの答弁をしているが、基本的には自白かマスターベーションの現場を押さえるしか、「自己の性的好奇心を満たす目的」であることを証明する方法はないだろう。そんなことは証明不能だから安心、ということではない。むしろ、証明不能だからこそ、警察の恣意的な捜査に使われる危険性が高くなるのではないかという懸念がある。

 『Santa Fe』だけではない。単純に外形的に捕らえれば、例えばわが子と風呂に入っている写真、幼児が水浴び・水遊びをしている写真なども摘発の対象になる可能性があるし、例えば、随分前に出版された『日本国憲法』という絵本仕様の本がある。本文は日本国憲法の全文で、各頁に様々な写真が添えられている。その写真の中に、家族が露天風呂に入っている写真がある。当然、全員フルヌードだが、これも「3号ポルノ」に当たるかもしれない。もちろん私にとってはどれも「自己の性的好奇心を満たす」ような類の本ではないが、性的好奇心などというものは非常に個別性が強いものであって、女性器のクローズアップに反応する男もいれば、競泳水着に発情する男もいる訳で、もしかしたら幼女の水浴び姿に欲情する人がいるかもしれない。いるかもしれないが、人の内心などはそう単純ではないし、まして他人が「性的好奇心を満たしていた」と言い切れるものではない。

 要するに、“児童ポルノ”の定義が曖昧なまま法制化されてしまえば、その分、警察・検察フリーハンドが広がるということだ。

 折しも、と言っていいのかどうか判らないが、痴漢容疑で逮捕・起訴された植草一秀の上告が破棄され、実刑判決懲役4ヶ月)が確定した。植草の容疑自体に大いに疑義があるという人もいる中での実刑判決である。私自身は植草の逮捕・起訴が冤罪だったかどうか、判らないが、植草がコイズミ・タケナカ路線を厳しく批判し、りそな銀行救済劇の裏に何があったかを鋭く指摘してきたことは事実だ。それゆえに司法当局から目を付けられ、執拗な尾行の末に罠に落ちたのかもしれないし、まったくの冤罪なのかもしれないが、いずれにしても、司法当局に目を付けられたら、あることないことでっち上げられてお縄に掛かる懸念があり、曖昧な定義しかない児童ポルノもその一つのネタにされる可能性が高いということだ。

 児童の人権を守る、ポルノ被害から守ることに異存はない。自分の娘が餌食になることを想像すれば、とてもじゃないが、児童ポルノフリーパスにすることはできない。「買う者がいるから売る者が減らない」という議論にも耳を傾けないわけではない。だが、小沢秘書逮捕事件で明らかなように、立法主旨を超えて法を運用しようとする。曖昧な定義のまま単純所持を禁止する前に、警察・検察が現行法に基づいて児童ポルノの販売・頒布を本気で取り締まっているのかを問うべきではないか。

 という訳で(ってどういう訳だ?)、改定案が成立しても、私は多分、『Santa Fe』も『日本国憲法』も処分しないと思う。そもそも本を捨てるのは嫌だし。

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