エロマンガ出版社についての情報、続き

多少の偏見を込めて、知っていることについてエロマンガの出版社について。メモ。 - Fantastic nude babesに書いてみたが本当に意外なことに好評だ。
再三書いたがエロマンガ雑誌情報のデータ整理のための個人的なメモのつもりだったのだが、出版というのは会社情報を開示しているところが希な業界なので、周知の事実と思っていることでも案外知られていないようだ。
たとえば、一ツ橋グループというのは出版業界やそこに就活をしている学生には常識だが、普通の人は知らなくて当然だろう。ましてや小学館集英社を設立したいきさつなど、あまり外聞の良い話ではないのでなかなか表には出てこない。
ま、いってしまえば誰でも想像のつく話なのだが"小学生向け雑誌で一山当てた”小学館は、義務教育を終えた年代にも販路を広げようと考えたのだが、小学四年生とプレイボーイが同じ版元というのは少々具合が悪い。そのため子会社の集英社を設立して大人向けの内容はそこから出版することにした。
そしてどんな業界にもいえることだが、子会社との暗黙の棲み分けなんてものは崩れるのが宿命である。トキワ荘系作家による伝統的な子供向けマンガを掲載する少年サンデーと、講談社少年マガジンに対抗すべく、本宮ひろしなどの新人を多数登用した劇画的な少年ジャンプという位置づけもあっという間に瓦解して、資本的にみると親会社と子会社による同一市場でのシェア競争という遺憾な状況となった。
もっとも市場自体が拡大している時には“共存共栄”という題目も通用するし、株式を公開しているわけでもないから投資家からの業務分野整理の突き上げなど喰うわけがない。内に甘く外に厳しく、内々で仕事とポストを増やしながら仲間同士は幸せになろうとするのは、なにも役所に限ったことではなかったりする。
本省を中心にして外部に庁や公営団体が増えていくのと同じように、小学館という親会社を筆頭にしてその子会社である集英社、さらにその子会社である白泉社というようにいつの間にか関連会社が増え、やがて一ツ橋グループと呼ばれるようになっていった。
“一山当てた”出版社が外聞の悪い仕事を、子会社をつくってそちへ回すというのが、エロマンガ業界で版元の変わる大きな原因の一つなのだがそれだけではむろん無い。たとえばオークラ出版が立ちゆかなくなった桃園書房の看板と社員を吸収した様なこともしばしば起こる。
また漫画屋ホームページの様な編集プロダクションの存在もエロマンガ雑誌の変遷に大きく関わってくるので、事態はいっそう見えにくくなってくる。たとえば、なぜMateが奇数月、Baster comicが偶数月の発行であるかなんて普通では絶対解るはずがない*1
ま、自分で書いてみて改めて出版というのは解りづらい業界だと思ったりするのだが、興味を持っている方が案外多いのでこれから思い出すたびにぽつぽつと書いてゆこうと思う。

*1:なので皆さん塩山氏に感謝を表すため出版業界最底辺日記―エロ漫画編集者「嫌われ者の記」 (ちくま文庫)を一人三冊ずつ買うように