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防衛、外交及び情報について考えてみましょう

2010-12-24

戦後日本の「非武装中立論」−国際法に関する理解欠如

戦後、1980年代半ば頃まで、日本には「非武装中立」論なるものがありました。

米ソ冷戦の国際情勢下、非武装国家となり、どちらにも与しない中立国となれば日本は侵略されず、平和と独立(自由)が維持できるという主張です。このような主張は当時、一定数の国民の支持を得ていました。

これに反対を唱える人は、現実には非武装国家は外国の武力攻撃・侵略を排除できず、占領されてしまうと主張をしていました。「非武装中立」論など、現実無視の理想論だ・それでは侵略されてしまうという反論です。

この反論に、「非武装中立」論者達は、日本には平和憲法がある、これを掲げて「非武装中立」を行えば、攻めてくる国などないという一点張り

両者の主張は水掛け論で平行線。

この状況に変化をもたらした一つのきっかけは、1979年に論壇の注目を集めた所謂「関・森嶋」論争です。従来の「非武装中立」論者達は一様に非武装中立をとる日本が武力攻撃・侵略を受けることは有り得ないの一点張りでしたが、ここで「非武装中立」論を主張する森嶋氏は、「もしソ連が侵攻してきたら、赤旗と白旗を揚げて降伏すればよい」と言い放ったのです。今までの「非武装中立」論者がいうように、「非武装中立」で行けば武力攻撃・侵略を受けることはない、という主張はせず、そうなることも有り得る。しかし、そのときは降伏すればよい、との主張をしました。(武力抵抗するより、無抵抗で降伏したほうがよりマシな結果になるという判断を元にしての主張でした)

その後、「非武装中立」論者の旗色は悪くなるばかり。要するに、「非武装中立」論は無抵抗・降伏主義ではないかと。「非武装中立」論は、平和と独立(自由)の維持という観点からは、現実無視の理想論、実現実行不可能というということで消え去ったという形です。

さあ、ここからが本題。「非武装中立」論を否定する人は、一様に実現不可能という理由で反論をしていました。しかし、本当はもっと根本的な問題があったのです。

これを考えることにより日本人の防衛問題や外交国際法)に関する知識の欠如が浮かび上がります。


非武装中立」という概念には「非武装」と「中立」という二つの概念が含まれています。

「非武装」とは何か。これは簡単ですね。軍隊(名目がどうあれ、警察機能よりも強い実力組織)を保持しないということです。

では、「中立」とは何か。ある外国と別の外国とが戦争(交戦状態)になった時、どちらにも与しないということ。

ここで注意しないといけないのは、「中立」は自分が意思表示さえすればよいというものではないことです。「中立」国として諸外国から認められ、「中立」国として扱われる為には、中立国の義務を遵守することが要件となります。中立国の義務は、いくつかありますが、その一つが、「自国の領域を交戦国に利用させない義務」。交戦国に基地などを使わせないことはもとより、交戦国の部隊・艦船航空機などが自国の領域を通過する状態にしてはいけません。交戦国に対して、そういうことをしないでくれと要望・要求して、全ての交戦国がそれを守ってくれればよいですが、交戦国の中には当然それを無視して勝手に通過したり、あるいは一方の交戦国の部隊に追われて逃げ込んできたりすることもありえます。この時、自国は中立を宣言しており、交戦国に自国領域を利用しないように言ってある、当該国が勝手にやったことだから自国には責任はない、などとは言えません。自国の意思に反して一部の交戦国が勝手にやった行為に対して、中立国はその責務を免れることはできません。交戦国が自国の領域を通過する等の行為をしてしまった場合、他の交戦国からはその国(領域を通過するなどした国)の側について参戦したものと看做され、それ相応の対応(攻撃等)を受ける羽目になります。

つまり、「中立」国になる為には、かかる行為(交戦国が自国の領域を利用する行為)を阻止・排除できる能力が必須であるということです。「中立」国になるためには武力を保持していることが必要条件となります。

「非武装」国家は「中立」国にはなれないのです。「非武装」という概念と「中立」という概念は両立しえません。「中立」国になるなら武装が必要。「非武装」ならば中立ではなく、自国の意思に関係なく中立国ではない状態=いずれかの側に立つ交戦国になる、ということです。

非武装中立論」なるものが議論されていた頃、こういう当たり前の指摘をする人は論壇上にはいませんでした。非武装中立では平和・安全は確保できないではなく、そもそも非武装中立など論理的にありえない、という指摘がされなかったということは、非武装中立で平和・安全が確保可能と信じる人がいたということと同じくらい刮目すべきことでしょう。

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