東京デスロック unlock#3
http://deathlock.specters.net/
- 脚本:多田淳之介
- 出演:夏目慎也、佐山和泉、多田淳之介、梅津忠、永井若葉(ハイバイ)、ギリコツカサ(『社会』);夏目慎也、佐山和泉、岩井秀人(ハイバイ)
- 劇場:原宿 リトルモア地下
- 上演時間:各60分
- 評価:☆☆☆☆(『社会』);☆☆☆★(『3人いる!』)
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
- -
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
『演劇LOVE』と題される3本立て公演。東京デスロックの黎明期、転換期、そして現在を伝える再演二作、新作一作が上演される。このうち、新作『LOVE』を除く二作品を観ることができた。
『社会』はある会社の昼休みの休憩室に展開する会話劇。会社内の人間関係にある微妙な距離感を現代口語演劇スタイルで再現する。閉鎖的な環境のなかで決定的な対立を回避するための予防的手段である曖昧なやりとりの齟齬が明らかになったとき、その人間関係の欺瞞的性格が一気に露わになってしまう。コミュニケーションの食い違いをいくつか同時に錯綜させ、それを喜劇的に提示する手腕が見事であった。
しかしこの劇で一番共感したのは、どうでもいい秘密を守ることに異様に拘泥し、なぜかクビを言いつけられてしまう社員を演じた夏目慎也の呆然とした姿である。失笑とにその虚ろな絶望に深い哀愁に共感をにはおれない夏目の呆然、これを味わえただけでも僕には十分だ。
『3人いる!』は、ある日突然、同一の部屋に住み、同一の生活記憶を持つ人物が、3人邂逅するという不条理喜劇。ドッペルゲンガーではない(劇中で使われたこのギャグは可笑しかった)。三人の風貌はもちろん、性別も異なる人物が混じっているのだから。
この設定のアイディアの秀逸さには本当に感心してしまった。全く姿形が異なる人物三名が同一人物であることから生まれるギャグの数々の切れもいい。前半は大いに笑う。しかし後半、同じモチーフを使った展開がくどすぎて少々飽きてしまった。夏目慎也がカップヌードルを食す場面は絶品だ。
多田淳之介は、演劇的表現方法については毎回いろんな創意工夫があって、その挑戦意欲は極めて好ましいものであるのだけれど、その反面表現内容については空疎で厚みが乏しい感じがする。今日、二本の作品を観て、清水義範の小説を何となく連想してしまった。アイディアの使い方も一本調子に感じられるところがある。まず技法的なアイディアを思いついて、そこから表現内容を作っていっているような印象を受ける。
もちろん表現技法そのものに感動してしまうこともよくあるので、アイディア先行が必ずしも悪いとはいえない。
新作の『LOVE』も見ておきたかった。残念。