Hatena::ブログ(Diary)

菅野康太Blog 輪るPh.D戦略

2010-05-30

コミュニケーション、プレゼンテーションにこだわるわけ

| 02:34 | コミュニケーション、プレゼンテーションにこだわるわけを含むブックマーク

近年、サイエンスコミュニケーションは科学界では盛り上がってるわけだが、

僕自身も伝えることはとても重視している。

一つの理由には、単に、僕が人と話すのが好きだからということもあるけれど、

他にもいろいろ理由はある。


伝えることで一番難しいのは、前提を共有しない人達に伝える場合。

学会などの研究発表のイントロダクションはとても簡単。

みんな学問は重要だと思っているから。

学問の枠組みの中で、自分の研究がいかに面白いかを伝えるなんてことは、実は

だいぶ楽なこと。

楽と言うか、一番大きな前提はセッティングされているので、

それすら出来ないと、だいぶ問題なようにすら思える。


オープンキャンパスや授業で学生や高校生に話をするのも大分、楽。

彼らは既に席についているし、大学に行きたいという欲求があるから。

それどころか、学生は単位を取らなければいけないし、高校生は入試

通してもらわなければいけないので、寧ろ、

こういう場は話し手の側に有利ですらある。


やはり、一番難しいのは、「席に着いてすらいない人」に席についてもらい、

前提を共有していない人達に伝えること。

前提を共有していない人にとって、自分が属さないコミュニティでだけ有名な

「偉い人」なんていうのは、なんの影響力も持たない。


もしくは、前提を共有しないどころか、敵対する関係にある人達とは

話し合っても物別れに終わる。


このような構図は、学問のみならず社会のあちこちに見られると思う。


宗教や文化、国家の対立。消え行きそうな伝統。

社会的に認知すらされていない弱者、誰もがなりうる可能性があるが知られていない重大な病気。

それぞれの当事者達は重大なことだと認識して、活動をしているが、

きっと報道されて社会的に認知されるものはわずかなのではないだろうか。

これらの問題を解決するために必要な第一歩は、やはり「伝えること」、

そして「伝わること」。


学際研究というものはそもそも、そうのような課題に取り組むためのものである。

サイエンスコミュニケーションに限らす、「伝える」ということや「知を越境」する

分野の交流は現代に必須のことだと思うから、僕はプレゼンテーションにこだわっている。


そして、「伝える」ということがもし、

自分がやっていることの重要性を伝えるだけのもだとしたら、

おそらくそれは「伝わらない」。

我田引水的なものの言い方では、それは己の牙城を守っているに過ぎず、

他者の理解を伴っていない。それはコミュニケーションではないと思っている。

僕が研究の専門としている神経科学、脳研究は行動や感情、社会性すら扱っている。

これらは明らかに分野横断的な研究で、生物学者、心理学者社会学者哲学者など、

多くの異分野での共同研究が無ければ、真に価値ある研究は難しい。

しかし、研究者も人間なので、今まで立場が違った人間達が一緒に研究をしようとしても、対立や物別れに終わることもある。



本当に面白く、新しいものは分野間の境界にあるのに!!


これは研究に限ったことではないはず。


既存の社会の情報も実は、あるコミュニティの中だけにとどまっている可能性すらある。

ネットで何でも検索出来るといっても、検索語を入力するのは個人。

その個人が入力をしなければ、新しいことは検索結果に何も引っかからない。


意図しなかったモノが引っかかってくるように仕掛けていった時、

個々人が新しいものを知るようになる。


異分野に何かを伝えたければ「引っかかる」ように仕掛けなければならない。

他者の文脈を知らなければいけない。


伝えるためには、他者を知ることが一番重要だと、考えている。

接点探し。


その接点をきっかけに、今まで出会わなかったものが出会って、

新しいものが生まれる。伝わらなかったものが伝わるようになる。

そこを目指している。


それにもともと科学は、自分以外の他者にも認められて初めて

「科学」となる。

つまり、客観性だ。


この客観性を担保する他者はあくまで専門家集団内での「他者」ではあるが、

新しいことしようとしたり、価値ある知を社会で共有するために、

もうちょっと他者の枠を広げたっていいじゃないか。

科学者は、自分以外の他者からも「正しそう」と思われるように実験してきたはず

なのに、いつからこんなに閉鎖的になったんだろう。




さて、まとまりも無く書いてきたけど、

そんな思いでサイエンスコミュニケーションをしていたら、意外と理解者も

現れたりするものです。


詳しくはまだ言えませんが

こちらのイベント「求愛のカタチ」

http://d.hatena.ne.jp/can-no/20100215/1266252273

でご一緒した方々が、自らサイエンスカフェ的な連載企画をしようとしているのです!

科学の業界以外で普段お仕事をしていらっしゃる方達です。

そんな人達がサイエンスカフェを企画するというのは、

今の段階では結構画期的なことだと思います。

そして、企画をした身としては、素直に

「伝わった」んだなぁ、ということが嬉しいです。

乞うご期待!


それと、前提の共有とか、価値の共有ということでは既に、

"Ideas worth spreading"

をテーマに活動していらっしゃる方達がいらっしゃいますね。

その関係のところでお話しする機会を、恐れ多くもいただいております。

伝えられるだろうか。

Connection: close