政治学 (New Liberal Arts Selection)
- 作者: 久米郁男,古城佳子,真渕勝,川出良枝,田中愛治
- 出版社/メーカー: 有斐閣
- 発売日: 2003/12
- メディア: 単行本
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政治学の入門的な教科書です。講義・ゼミや読書などで触ったことがある部分はあっさりとおさらいを、行政学みたいにサボってきた分野では基礎的学習をすることができて、どちらの意味でも心地よかったです。バランスオブパワーの中の勢力移行論なんて論理的に意味をなさないじゃんとか、個別の論点での感想も全くないわけではありませんが、教科書でそれをやるとレビューが崩壊する気がする*1ので、あくまでもこの本とその著者について言えることを述べ続けたいと思います。
と言っても一つしかないので須賀、それがこの本の最大の特徴というべき「本人―代理人論」です。「本人―代理人論」というのは読んで字のごとく、様々な政治的事象を本人と代理人の関係から見ていこうというもので、この本のキーワードとして章立てにも活用されています。何のための代理人か、代理人をどう設計するか、代理人はどう活動するか、代理人をどう見張るか。ざっくり言うとその四つの問題意識から各テーマが割り振られており、従って例えば、従来まとめて紹介されていたような国際政治のジャンルに属するテーマが、前述の大テーマによって分割されて登場します。これはややこしいと言えばややこしいんで須賀面白いと言えば面白くて、ある理論的枠組みを「他ジャンル」の事象に可視的に横滑りさせられるのは、大げさに言えば縦糸に対する横糸が見えるような心持もしました。
一方で「本人―代理人論」の射程を見極めるような、民主主義以外の政治体制*2についての議論がなかったのは読み終えてみると残念でしたね。そこがあれば政治学の教科書としてというより、むしろ「本人―代理人論」として一層深みのあるものになった気もするんですけど。