森と湖の国

今朝何気なくNHKのBSを見ていたら、スウェーデンの観光列車の話をしていた。スウェーデンの南から北まで1000キロを走る観光列車である。皆喜んで自然を楽しみつつ北に向かう。北の終着駅は既に北極圏だ。夏にはこの地では一日中太陽が沈まない。つまり白夜の国である。旅程のほとんどは針葉樹の森と湖である。この国はいたるところに湖があるらしい。北極が近い為解けた氷が湖を作るのか?でも北海道出身の僕にとっては何と寒々しい景色に見える。森といっても針葉樹のまばらな森、鬱蒼とした南の森とは密度が違う。多分冬になるとこの地は零下20度以下になるだろう。(シベリアの寒い所では零下80度にもなるという…)僕も北海道で一度だけ零下20度を経験した。冬の北海道の中心?旭岳の樹林限界線にいた時である。まさにフワフワの新雪にスキーが埋まり、ダイヤモンド・ダストが?キラキラと宙を舞う。顔は寒さでピリピリと痛んだ。こんな所で年中暮らしたくはない。でもスウェーデンにも極地民族が住み、トナカイを飼って暮らしている。人間世界は本当に多様だ…。

この番組の中に北欧神話の神々がよく登場してくる。そして森の中には色々な妖精が出没する。僕は妖精は小さいのかと思っていたら、この国の妖精は普通の人の大きさだ。森で狩人が焚き火の傍で寝ていると、綺麗な女の妖精が近づいてきて、その男と愛を交わそうとする。しかし男はその女が人間ではないと分かり逃げてしまう。その女には何と背中に木がたくさん生えている。可哀想にその女自身が森なんだ。だから狩人と何時も愛を交わせない、要求不満の不憫な妖精だ。僕は北欧神話(ゲルマン神話)はあまり詳しくない。せいぜいオーディンという最高神、戦いの神がいて、ゲルマンの戦士は死ぬとオーディンの所に行き、一日中戦って楽しい時を過ごすという。その程度しか知らないが、彼らは価値観の違いとしか言いようのない神話と民族性を持つ。さすがにゲルマン。彼らの勇敢さは以前クライトンの「北人伝説」でも書いた。中世には彼らは南下を始め全ヨーロッパを席巻する。勿論イギリスのアングロ・サクソンもゲルマンの一派である。

この番組では頻繁に3人の神の名前が出てくる。オーディン最高神で、その息子の雷神トール、それと妖精の国に住む豊穣の神フレイ。そしてフレイには双子で美しい愛の女神フレイヤがいる。彼女はワルキューレを率いて戦場に現れ、戦死者の半分をオーディンのもとに連れ帰るという。それと北欧神話にはやはり巨人族との戦いがあり、彼らは巨人族を追放しアースガルドという国を建てる。これはギリシア神話と同じで、ギリシア神話では最高神ゼウスとその一族が巨人族ティタンと戦う。そして巨人族を深い地底に押し込める。さらに北欧神話にはこの続きがあり、神々の黄昏(たそがれ)がある。彼らはラグナロクという最終戦争を巨人族と戦い、オーディン以下全員戦死する。何というささやかな神々である事か?でも実際はゲルマン部族は全ヨーロッパを席巻した。歴史的に見れば金髪で青い目の、体のでかい彼らがひたすら戦い、ガリア人やローマ人達を駆逐していく。まるで神話の巨人族のようだ。今のヨーロッパ、アメリカの凶暴さ?も多分ゲルマン由来だろう。ゲルマンはドイツだけではない。全ヨーロッパがゲルマンに征服された。


歴史的にはローマの後裔たちもゲルマンには敵わなかった。勿論ユダヤを含めたアラブ人種もゲルマンには敵わなかった。何しろ戦う事が楽しく、戦いで死ぬ事を何とも思わない人種だ。でもどうしてこんな寒冷地の人種が、戦いに明け暮れるようになったんだろう?森と湖の静かな国なのに?ヒョットすると寒冷と静寂の退屈さに耐えられなかったのだろうか…?。