日本語力、危うし


コイは間もなく4歳の誕生日を迎える。
人一倍、言葉が早かった彼は、とても4歳児とは思えないほど大人っぽい日本語表現を使って話をする。
いざ思い出そうとすると思い出せないんだけど、会話をしていて、ときどきハッと驚くことが多々ある。
うーん、例えば…「コイくんはまだ3歳だから、大人のじゃなくて、子供専用のお箸が必要だよねぇ」のような。専用とか、必要とか、そういう言葉を幼児がしゃべっているのって、ちょっと違和感あるんだけど、まぁそんな感じで、いつも会話が展開されているわけだ。


だから日本語の会話力という面ではもともとあまり心配してないんだけれど、
ここにきて「読む」「書く」力があまりにも欠如しているような気がしているのだ。
4歳にもなる子どもは、大抵自分の名前くらい書けそうなもんだし、簡単な絵本くらいなら読めるもんだというイメージを持っていた。
そして実際にそういうお子様を身近で見聞きしている。


なのになのに…コイと来たら、ほとんど全くと言っていいほど、字が書けないのだ。
読むほうは、ひらがなの8割くらいはようやくクリアした感じ。
そして最近になってようやく、自ら「読む」ことをしようと試みるようになってきた。
絵本や、そのへんの紙に書いてあるひらがなの字を見て、
「‘ひ‘に、てんてんは何だっけ?」とか聞いてくる。「び だよ」と教えると、
じゃあこれは「えび」って書いてあるね!と誇らしげに報告したりする。
あぁやっと自分から読む気持ちになってくれたか…と、そこんとこはうれしいんだけど。
書くほうは本当にダメダメなんだよなぁ。


日本のおばあちゃんに送ってもらった「ひらがなドリル」、毎日少しずつやらせてみているんだけど、これがもうほとんど全滅というか…。
ドリルに書かれている薄い文字のうえをエンピツでなぞる、というのはかろうじてできるんだけど、まっさらな紙に一から自分で字を書くということが、悲しいくらいにできないのだ。
ドリルの最初に出てくる「し」の文字ですら、怪しいミミズ状態だ(涙)。


彼はいま、現地の幼稚園にたくましく通っているけれど、今の読み書き能力を見ていると、日系の幼稚園に転校させるべきではないだろうかと思ってしまう。
日系の幼稚園では、日本語ペラペラの日系人の先生が、ひらがななど日本語の読み書きを教えてくれると言う。
最初、小学校に上がる前のひらがなレッスンくらい、私がやればいいわ!と思っていたんだけど、どうやら親子関係において何かを教える・教わるというのは非常に難しいことのようで…(というか、忍耐力がかなり必要ね。なんでできないのー!とすぐにキーっとなってしまうのよどうしても)


めっきり、自信をなくしてしまった私。
いつの日か、本人に「書きたい気持ち」がふつふつと沸いてきて、一気にひらがなをマスター!…なんて日が来るものだろうか?


そもそも、日系ではなく現地の幼稚園を選んだのは、これだけ日本語が不自由なく話せるのだから、どうせならこちらで暮らしていく上で覚えておいたほうが絶対いいと思われるポルトガル語を、少しでも覚えさせてやりたいと思ったから。いくら日系人・日本人が多いサンパウロとはいえ、街で接する人々の圧倒的多数はポル語を話すわけだから、コイだってポル語がわかるほうが生活が楽しくなるだろうと思ったのだ。
しかしなぁ。ポル語の習得も大事だけど、日本語の読み書きも大事だもんなぁ…。


本格的に家族会議を開かねばならない時が来たのかも。