音を楽しむ、イヴァン・リンスのコンサート


先週のシコ・ブアルキのコンサートに続き、この土曜日にもまた、ブラジルの人気ベテランアーティストのひとり、Ivan Lins(イバン・リンス)のコンサートに行ってきた。
ダンナがつい数日前にどこからかその情報を仕入れ、早々とチケットと最新アルバムを購入してきたのだった。

Cantando Historias (CCCD)

Cantando Historias (CCCD)

もともとイヴァンのCDが家に1枚あったから(上の写真。ダンナが以前、日本で買ったもの)、ときどきは聞いていて、結構好きな感じの曲が多いな…とは思っていたけれど、残念ながらステージと一緒に合唱できるほどの予習は出来ていない。こんな状態でコンサートなんていいのかしら?(ファンに悪いわ)と思いつつ、こんなチャンスにめぐり合うこともそうそうないよね、ということで、土曜の夜、行ってまいりました、一日だけのサンパウロコンサートへ。


会場のCREDICARD HALLは、シコの会場TOM BRASILに程近い、市内中心部からは少し離れた場所にある。10時開演の15分ほど前に駐車場に着いたら長蛇の列で、あわや開演に間に合わないかも!と思った…が、なんとかオンタイムに会場入りし、10時20分のショウ開始からしっかり見ることが出来た。ほっ。
それにしても、たった20分しか遅れないなんて、びっくり。ブラジル時間、平気で30分は遅れるものだと思っていたのに。こういうビッグアーティストの場合はオンタイムを目指すものなのかなぁ?


サンバの要素の濃い、明るいアップテンポな曲で登場したイヴァン。1945年生まれだから、私の父と同じくらいで還暦を過ぎているというのに、全然そんなふうに見えないよ!
CDよりもずっと迫力のある張りのある歌声にまずびっくり。
そして、実に楽しげに叩く(そう、弾くというより叩くイメージ。はじけるような演奏!)ピアノと、ときどき目をつぶり酔いしれながら歌う表情に、すっかり魅せられてしまった。
何ていうかなぁ、勢いがあるのよ、ステージに。
最新アルバムからの曲を中心に、思わず体が揺れてしまうようなリズミカルなサウンドを次々に繰り出してゆく… あぁ、なんてブラジルらしい明るさ、それに加え、なんとなく都会的で研ぎ澄まされたところもあり… とにかく、一目で、いや、ひとみみで気に入ってしまったのだ。



イヴァンの器用な手もとにもすっかり目を奪われた。
ピアノやタンボリンの上手さもさることながら、手作り楽器――たとえば、プリングルス(筒型容器に入ったポテトチップス)の空き容器を利用したシャカシャカとか、空のCDケースにくさりをつけてジャラジャラさせるのとか、キャラメル箱くらいの小箱を太鼓に見立てて指で打ち鳴らすのとか――そんなのを実にたくみに操り、サンバ楽器に負けないような小気味よいリズムを自ら生み出すのだ。
オペラグラスから目が離せないっ!って感じで、歌もそっちのけで、イヴァンの手元ばかり見つめていた怪しい私です…。だって本当に見事なパフォーマンスだったんだもの!


そして今回もまた、バックバンドの打楽器奏者たちに注目してしまった。
これまでに見たブラジル人アーティストのバックには、もれなくサンバ系の楽器:パンデイロとかタンボリンとかコンガとかが存在するけれど、今回はサンバ色が強い曲調も多かったので、打楽器がすごくいい味を出しているシーンがいくつもあった。
なんせ、普段レッスンでは基本的なリズムを淡々と刻むだけの私、実際にメロディーの中でそれらの打楽器がどんな風に活躍するのか常に興味シンシンなのだ。
なるほど、ギターやドラム、ピアノなど他の楽器と絶妙に調和しながら、イヴァンの歌声を引き立たせるように目立ちすぎない存在感… すばらしいものがあった。
打楽器を習うようになってから、コンサートではついボーカル以外に目が行くようになった。それはそれですごく楽しめるし、コンサートの楽しみが2倍に増えたようで、うれしいのだ。


ところでシコ同様、彼もカリオカ(リオデジャネイロ出身者)。曲の合間のトークのふしぶしにリオの話が出てきて、歌詞にリオが出てくる曲を何曲も歌ってくれた。
リオって、本当に愛されている街なんだなぁ…ということが、リオを全然知らない私にもずんずん伝わってきた。


そして、そんな中でイヴァンは、「同じカリオカであるシコの曲を一曲」と言って、エーレーナ、エーレーナという歌いだしの曲を歌い始めた。
あ、これ、確かにシコの最新アルバムに入っている曲だよ!歌い手が変わるとずいぶん雰囲気変わるなぁ… エレーナという女性を歌っている曲なのねぇ、などと思って聞いていた。
家に帰って歌詞カードを確認したら、なんとタイトルはエレーナではなく、RENATA MARIA。ん、違う女性の名前じゃん??と思ったら、エレーナなんて一言も言ってないのであった。
「Ela era ela era ela no …」という出だし、エラエラエラエラ… だったのね。
私のヒアリングもまだまだだねぇ、とガックリきちゃったエピソード。


ノリのいい曲調とは裏腹に、観客席は不思議なほど静かでお行儀が良かった。
さすがに最後は全員総立ちで拍手を送り、アンコールも総立ちだったけど、それ以外はイスに座ったまま少し体を揺らすだけ…。
シコのときのほうが、観客の興奮度が高かったなぁ。


ともあれ、次はどうなるんだろう??と、常に期待しつつステージが進み、アンコールを含めた2時間が本当に短く感じられた。
先週のシコが落ち着き・静ならば、イヴァンは華やか・動のアーティストという印象。
個人的には、すっかりイヴァンのほうがお気に入りになってしまった。明るさ、軽やかさ、メロディーの親しみやすさが、私にはピッタリ来たのだ。
aiko同様、生コンサートで大好きになっちゃった人のひとりに、彼も加わった。
またいつか、こんなチャンスが来るといいな。



さて、余談だけれど、終演後、席を立って帰ろうとしたとき、なななんと!すぐ後ろの席にルシアーナ・メロ(http://d.hatena.ne.jp/caolin/20060811で紹介)本人がいるではないかっ!
なぜか目が会い、おおっルシアーナだっ!とダンナに告げた瞬間、私たちは彼女のすぐそばまで歩みだしていた… なんていう度胸、というか恥知らず?!
そして無謀にも話しかけ、私たちは先日のコンサートを見に行きました、あなたの曲が大好きです、なんて言って、お気に入りの一節を口ずさんだりした。あはは、我ながらすごい度胸。
でもおかげでルシアーナにも喜んでもらえ、一緒に記念撮影までさせてもらっちゃった。
背が高くて可愛かったです、はい。


なんだかここんとこ、ミーハーな話題が続いてすみません。
でもこういうことってほら、誰かに話したくなっちゃうものでしょ!? むふふ。