熱狂に包まれたサルバドールへ向かう(一日目移動編)


サンパウロのサンバパレードが金曜の夜に開幕し、初めて踊り子として出場した今年のカルナヴァル。
翌土曜日の午前6時ごろ家に帰り、へろへろになりつつ仮眠をとり、なんと私たちは午後3時過ぎの飛行機で北東部の古都、サルバドールへと向かったのであった…。
カルナヴァルは年に一度きり。そして私たちがここブラジルでカルナヴァルを経験できるのはあと何回だろう。
ブラジルに何年住めるかわからない、だから行ける時に行っておかないと、見られるときに見ておかないと!という強い思いで、強烈なカルナヴァルのはしごを計画したのであった。


約2時間半ほどのフライトは、疲れた体にはちょっと長く感じたけど、うとうとしたり地球の歩き方を読んだりしているうちに到着した。
機内は満席。へぇ、やっぱりみんな同じようにサンパウロのパレードに出てから乗ったんだろうか?


初めての街、サルバドールは、もう夕暮れだというのにむわっと蒸し暑くて、肌がじっとりする感じ。
同じブラジルでも、サンパウロとは全く違う、外国みたいな空気を感じた。
空港はサルバドールのカルナヴァルを宣伝するポスターや音楽で包まれていて、祭り一色という雰囲気!
預け荷物を引き取りに行く途中の廊下に、バイア音楽の新鋭スターとして名高いBabado Novoのプロモーションコーナーがあった。
バイア系ミュージシャンは数あれど、コーナーが出来ていたのはBabadoだけ。今が旬なんだろうね。

Babado Novo

Babado Novo

ボーカルのクラウジア・レイチという女の子の等身大看板と一緒に家族揃って記念撮影した。ババドのサイトに掲載するからね、と係のお姉さんは言ってたけど…本当に載ってたよ。


空港内にはさっそくバイア名物のひとつ、バイアーナが存在していた。バイアーナとは、独特の白い衣装を身にまとった黒人のおばちゃん。
バイア地方の象徴である。(カルナヴァルのパレードでもおなじみだね)
一緒に写真を撮るとお金をあげなければいけない、とガイドブックで読んでいたけど、ここにあったのは、観光地にありがちな、顔を穴から出して衣装写真を撮る系列の記念写真人形。
一応私も撮ってみた。(お金は払わなかった…良かったのだろうか?)


荷物を無事引き取ったら、ホテル側が手配してくれたモトリスタ(送迎運転手)の姿を探す…と、向こうのほうから私たちを見つけてくれた。
東洋人、しかも日本人なんてほとんどいなかったもんね、空港内に。もう一家は目立つ目立つ。
そうか、これがバイアってことなんだ。やっぱりサンパウロ日系人が圧倒的に多い街なんだ…と早速実感させられる。


浅黒い肌の若いお兄ちゃんが、これからホテルまでバンで連れて行ってくれる。
今回私たちは旅行会社を通さず、飛行機もホテルも個人手配していたので、空港からホテルへの移動手段は自分でタクシーに乗るしかなかった。ところがホテルに事前に電話したところ、ホテル側が有料で送迎バンを用意しますよ…ということだったのだ。


バンは大きいけど、乗るのは私たち家族だけだった。
おかげでホテルまでの長い道のり…70キロくらい?結構遠い…を、子どもたちは車内で横になりながら休むことが出来た。
車が出発してすぐに私たちは料金交渉をした。予約時にホテルから言われていた値段は、ホテルまでの送りで75ヘアイス。まぁこれは相場らしい。
しかし私たちはホテルに行く前に、一箇所立ち寄りたい場所があったのだ。ホテルへの途中の道にあると思っていたから、手間賃としてせいぜい10ヘアイス程度上乗せすればOKだろうと考えていたら…
お兄ちゃんの求めた金額はなんと150ヘアイス、倍であった。
途中ちょこっと立ち寄るだけなのに、倍はないんじゃないの?通り道でしょ?もしかして大幅にぼられてる???
と思い、正直に、これはいくらなんでも高すぎるよ〜せいぜい85にしてよ〜と泣きついた。
すると兄ちゃんも負けてはいない。今はカルナヴァル中で通常のルートを通れないから、通り道じゃないんだよ、と。かなり遠回りなんだから、と。
それでも彼は150を120までまけてくれた。それでも高いけど、仕方ないか。


このときに限らず、サルバドールでは、タクシーの金額交渉に結構神経をすり減らしたなぁ…。他のエピソードはまたその時に詳しく。


とりあえず、なんとか料金交渉も終わり、一路、カルナヴァル参加チケットの引き取り場所へと車を走らせてもらった。

サンバじゃないカルナヴァル…初心者には難しいサルバドール?(一日目チケット購入編)

さて空港到着後、私たちがまず向かったのは、エアロクルービ・ショッピングという施設。
ここはショッピングモール兼遊技場のようなところで、サルバドールカルナヴァルの販売関連の拠点になっているのだ。
販売関連の拠点とは要するにカーニバル参加のためのチケットや、Tシャツや帽子などの記念グッズを扱っている唯一の場所。
ちなみにカルナヴァル自体は、こことは全然別の数ヶ所で繰り広げられる。
ここは単に販売だけのための場所…。


なのに。着いてみたらものすごい人・人・人!!!
ショッピングモールの駐車場は満杯、広場前は人だかりで前に進むのも難しいほど。
なぜこんなところに集まるわけーーー???カルナヴァル会場はここじゃないんだけどーーー???


よくよく見ていると、人々はどうやら、ダフ屋から参加チケットを買おうとしているようだった。
正規の販売窓口はショッピングセンターの中に設けられているのだが、屋外の広場には非合法の(?)売り子がいっぱい。
うーん、ダフ屋が発生するほど人気なのか、サルバドールのカルナヴァルって…。

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実はサルバドールのカルナヴァルのしくみというのは、ちょっと複雑で初心者には難しい。
来年行ってみようかな〜、と思っている人のために、少しばかり詳しく書いておきたいと思う。


世界的に有名なリオのカルナヴァルと、私が参加したサンパウロのカルナヴァルはほとんど同じタイプ。複数のサンバチームが優勝を競い合うコンテスト形式で、踊り子として参加したい人は事前に衣装代を支払って歌や踊りを練習し、当日参加する。
そして観客は「チームに対するチケット」ではなく、「開催日に対するチケット」を買って鑑賞する。
つまり、自分の都合のいい日のチケットを買うだけだから、選択肢は少なく、それほど迷うことなく買える。


ところがサルバドールは、リオ・サンパウロのカルナヴァルとは全く別物。
そもそも音楽が「サンバ」ではなくて「アシェ」という全然別のジャンルのものが中心。そこに「アフロ系」や「レゲエ系」が加わっていて、まぁとにかく「サンバチーム」とは全く違うものである。
そしてパレードは公道を使って行われる。リオ・サンパウロでは、閉鎖された専用の特設会場で行われる。
サルバドールのパレードの主役は、巨大なトラックの上で歌うアーティスト達。彼らが、パレード中の約3時間ほど、ひたすら歌を歌い続ける。そう、さながら野外移動コンサートのように…


で、観客はどうするのかというと、好みのアーティストが乗っているトラックの前後にくっついて一緒にパレードする→Bloco(ブロッコ)という。
もしくは、よさこいソーランの桟敷席のように(札幌の人しかわかんないか?)、沿道に設けられた特設観客席にて、過ぎ行くトラックをいくつも鑑賞する→Camarote(カマロッチ)という。


この選択肢が数え切れないほどあるのだ。
まず会場が大きく二つに分かれていて、セントロをぐるっと回る「カンポ・グランジ」会場と、ビーチ沿いを練り歩く「バッハ・オンジーナ」会場がある。
そのどちらにするかで迷い、今度はブロッコかカマロッチかで迷い、ブロッコの場合どのアーティストのトラックを選ぶか迷い… という具合。
なんかややこしいですね。
ま、好きなアーティストが決まっている場合は、迷わずその人に着いて行けばいい。
でも私たちはバイーア音楽って全然知らなくて。これがまた独特な世界で。奥が深いんですよ…。


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と、しくみ説明が非常に長くなりましたが。


サルバドールのカルナヴァルに行くと決めてから、いくつかアシェのCDを聞いて、どのアーティストに着いて行こうか考えた。
過去に行ったことのある方から話を聞き、それぞれのアーティストの特徴なども教えてもらった。
そして日程や会場、子どもたちをシッターさんに預ける時間帯なども考慮して決定し、事前にネットでチケットを購入しておいた。
そのチケットを、前述の販売窓口まで引き取りに行かなきゃいけなかったんですよ。
チケットだけならオンラインで送ってもらって印刷でもすればいいじゃん?と思うけど、チケット代にはパレード参加に欠かせないアバダーと呼ばれる「お揃いTシャツ」が含まれているのだ。
このお揃いTシャツを着ている者のみが、アーティストに着いて歩ける…というわけだ。
だからなんとしてもTシャツは受け取らなければならない。


たかがTシャツ、でもこのTシャツがチケットなのだよ。世界一高価なTシャツかも知れない。
いま、ブラジル中で大人気のアシェ歌手、Ivete Sangalo(イベッチ・サンガーロ)のブロッコになると、なんと!750ヘアイス…。
一枚のTシャツが約4万2千円ですよ奥さんっ!!!!!
誰が買うの????

Ivete Sangalo [DVD]

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…でもいるんですね、買えるお金持ちが。さすが経済格差・大の国、ブラジルであります…。


なお私たちは、バッハ・オンジーナのブロッコひとつ(Daniela Mercury:ダニエラ・メルクリ)→190ヘアイス。
カンポ・グランジのカマロッチひとつ(Camarote Central)→210ヘアイスを購入。
平均価格帯は150〜250ヘアイスくらいかな。イベッチだけが、ずば抜けて高いのであった。
ダフ屋ではいくらで取引されているのかなぁ。

Eletrica

Eletrica


かくして、私達も正規窓口にて無事Tシャツを受け取り、総額数万円相当とは思えないきゃしゃなポリエステル製Tシャツを大事に大事に抱えてホテルへ向かったのであった。
このTシャツ、どうやら事前にサンパウロまで送ってもらうことも出来たようで、サンパウロから飛行機で持参する人もいるらしい。
空港で荷物を預ける際、係員から「中にTシャツは入ってないか?Tシャツは手荷物にしてくれ」と言われたのだった。
そうだよね、数万円のTシャツ… それは貴重品扱いに相当するよね。実際、なくなってトラブルになるケースもあるんだそうだ。
恐るべし、カルナヴァルTシャツ。

海沿いのお値打ちホテルは眠れぬ夜(一日目宿泊編)


チケット販売会場を後にし、一路、ホテルへと向かう。
今回予約したホテルは、海沿いのパレード会場、バッハ・オンジーナに面する、ロケーションばっちりのホテル。
このホテル予約、実は相当苦労したのだ。
そもそも今回は旅行代理店を通さず、飛行機から何からすべて個人手配。というのも、この時期に旅行代理店で扱うのはおおむねパコッチ(パックツアー)になっていて、希望の日数にピッタリ合うものは皆無。
そしてホテルだけ別にとろうと思っても、やはりパッケージ料金の取り扱いしかなく、しかも法外に高い!
たとえばいわゆる3つ星〜5つ星ホテルが4泊5日で4000〜8000ヘアイスが相場。高すぎ!
しかも私たちは2泊3日しかしないからね、こんなパッケージを使ったら2泊分も無駄にしちゃうわけ。
それはありえないでしょう。


で、地球の歩き方とBrasil2007(ブラジルの都市をほぼ網羅したガイドブック)に掲載されている3つ星以上のホテルをしらみつぶしに電話して値段を聞きまくった。
お得な価格設定のところはもちろんすでに満室。空いているのは法外に高い超高級ホテルばかり…。
ちょっといいかなぁ?と思えるホテルがあったとしても、大人2人・子ども2人は1部屋に入れないから2部屋予約しろ、と厳しいことを言って来たり…(ブラジルでは結構多いのよ、こちらがいくら添い寝でいいから!と食い下がっても1部屋に入れてくれないってこと)


もう旅行自体無理かも?と思った頃、やっと掘り出したのが、San Marino Hotelであった。
ここはパック料金ではなく、1泊いくらで計算してくれる唯一のホテルであった。(caolin調べ)
これなら無駄なく泊まれるぞ。1泊700ヘアイスと、やはり通常の倍以上の価格ではあったが、調べた中ではダントツに好条件だったのでそこにした。
事前に電話で「子どもがいるので窓からパレードが見える部屋をお願い!」と伝えておいた。


さて貸切バンで現地に向かうも、すでにパレードが行われている夜である。ホテルはパレードコース沿いである。
当然、車はホテル前に横付けなんて無理。
結局、ホテルから徒歩3分ほどの場所に停め、そこからスーツケースとベビーカーをごろごろ押してホテルまで歩いた。
子連れだったらか、バンの運転手が手伝ってくれたけどね。


ホテル前はパレード見物の人や物売りでごった返していた。もう、熱気ムンムン。
カルナヴァルの喧騒をダイレクトに感じられる、すんごいロケーションの宿だ。
入り口には頑強な黒人ガードマンがスーツを着てすごんで立っている。確かに、しっかりガードしてもらわないと、喧騒から人々がホテルに流れ込んできてもおかしくない状態だもの。
チェックインカウンターでは、ホテル宿泊者を識別するためのゴムバンドを全員の腕に付けられた。ガードマンは、これを目印に入館者をチェックするわけね。


部屋は3階で、オンザビーチの眺め。リクエストどおりだった。ほっ。
窓からはすぐ下にパレードの列が見える。同時に、大音響が聞こえる…。もちろん、オン・ザ・パレード状態だから、音の臨場感はものすごい。
つまり、超うるさい!!!


こんなんで夜、安眠できるのか???と思ったら…
さすが我が家のオトコたち。どんな騒音でも眠れるのね。さすがだわ。
蒸し暑さとうるささでよく眠れなかったのは、どうやら、私だけだったらしい…。