プチトマトっち

caph7772005-03-03

娘の友達の間で、「たまごっち」が流行していた。娘もその流行に先駆けて、去年から、「たまごっち」を使っていた。数年前に、初代「たまごっち」が、大流行してから、今回で2回目の流行になると思うが、最初のヒットの時は、品切れ続出で、行列になるほどの大流行だったので、ほとんどの人が「たまごっち」を知っていると思う。
簡単に説明すると、卵形の時計の中で、キャラクターを育てるゲームだ。育て方や、世話の仕方によって、いろんなキャラクターに変わり成長する。やがて、結婚して子供ができ、次の世代へと、どんどん移り変わっていくというゲームだ。
娘も最初は、熱心に画面の中のキャラクターを世話?して、食事を与えたり、ウンコの始末やら、ご機嫌を取ったり、遊ばしたり色々やっていた。しかし、学校へ持って行けないので、娘が学校へ行っている間は、その役目が、かみさんかワタシにまわってくる。わりと頻繁にアラームで呼ばれるので、その世話は、私達にとってはとても面倒だった。娘も最初は熱心だったが、一生懸命世話をしても、数日で子供ができて、親は死んでしまう繰り返しなので、だんだん飽きてしまったようだ。まあ、ゲームの世界だから仕方ないのだろうが、現実はもっと神秘で、面白いことを学んでほしいと思う。
そんな、時期と平行するように、ある出来事が進行していた。
それは、去年の秋ごろ、飼い犬に与えようとした餌の中に、プチトマトが一つ混じってしまった。普通の犬は、トマトは食べないと思っていたので、与えたことが無かったが、一つくらいなら食べるかも知れないと思い、そのまま犬に与えてみた。しかし、案の定、そのプチトマト一つだけを 脇の地面に捨て去り、他の餌は綺麗に食べていた。
しばらく、赤い小さなトマトが、黒い土の上にポツンと転がっていて、とても目立って気になったが、そのまま放置していた。
やがて、そんなことも忘れてしまった初冬のある日。いつもの様に、犬に餌を与えに行くと、器の脇の方から、20センチほどに伸びた緑のツル状の植物が、顔を覗かせていた。回りの雑草と違うその姿は、どこかで見覚えのある気がした。近づいて葉っぱをよく見て、更に匂いを嗅いだ。すると青臭い独特の匂いが鼻をおおった。トマトの匂いに違いないと思った。その瞬間、頭の中に、あの赤いプチトマトの姿が浮かんだ。しばらく地面に放置されていたプチトマトが、驚いたことに新たな生命として、脈々と命をつないでいたのだ。
しかし、季節は落ち葉の舞う初冬。このまま放置しても枯れてしまうだろうと思った。ワタシは、スコップで根を傷めないように、トマトの小さな苗木をを掘り起こし、鉢に移した。その鉢の中の苗木は、水をたっぷりと与えられれ、日の当たる窓辺に場所を移された。
この冬の季節に、はたして、ちゃんと育つのか心配であったが、窓辺の暖かい太陽の光を浴びて、ツルは上へ上へと伸びていった。水を与えたり、ツルを支柱で支えたり、外の風にあてたり、こまめに世話をして大切に育てた。うっかり水を切らしてしまい、葉っぱがしぼんでしまったり、風にあおられ、ツルの先が折れてしまったりした事もあったが、日に日に少しずつ変化してしていく姿を見ると、生命を感じた。やがて、いくつかの黄色い小さな花を咲かせ、小さな緑の実を付けた。緑の小さな実は、ゆっくりとゆっくりと大きくなり、少しずつ赤く変わって、あの黒土の上に転がっていた赤い小さなトマトになった。
これが、ワタシの育てた「プチトマトっち」だ。
娘も、ワタシが大切に「プチトマトっち」を世話をするのを見ていて、一緒に水をやったりしながら、花が咲いたり、実を付けたり、実がが赤くなったりするトマトの生長課程を 楽しみに見守ってきた。
本当の自然の命の営みをみて、何かを感じてくれただろうか。
でも、そんなことよりも、ワタシ自身が「プチトマトっち」を育てるのに、楽しく夢中になってしまったのだから、これでいいのだ。