坂本屋(西荻窪)★★☆☆☆
マスヒロさん大絶賛のカツ丼750円で有名な店。
たしかに揚げたてで衣はサクサク、卵の半熟具合は絵に描いたように見事。
ところが、タレは甘みが勝ちすぎで、甘辛いとはとても言えない。
ロース肉は肉厚でジューシーだけれど、どこか旨味が足りない。
塩コショウの下ごしらえがほとんどされていないことに驚いたが、コショウに関しては、臭みのない肉なら必ずしも必要はないというレシピもあるようだ。
たしかに、ここのカツに臭みは感じなかった。でも、塩コショウの不在が、そのまま味や旨味の足りなさに結びついているように思えてしまった。
そして、カウンター席に座ると、後ろを人が通るスペースすら充分に無いくらいの狭さで、じつに落ち着かないのも困る。
近所や日常の行動半径にこの店があったら、裏を返すかな……くらいには思う。
でも、天下のマスヒロさんが「2005年の百選」とまで色紙にしたためているのは疑問。
もっとも、マスヒロさんは、ごく近所にお住まいなのかもしれないけれど。
トンカツの豚肉の下ごしらえに、胡椒や塩は無用──と教えてくれたのが、この銘柄豚SGP(スーパーゴールデンポーク)を生産販売している「サイボク(埼玉種畜牧場)の直営レストランのコックさん。
新鮮で質が高い豚肉(つまり臭みが無い)なら、胡椒で豚肉の「香り」をスポイルすることはない──というのは衝撃だった。
じっさいここのレストランでは、断面が微妙に桜色で、香りも旨みも、肉汁もタップリのトンカツを食べることができる。
しかし──坂本屋のカツには、正直胡椒が欲しかった。
たしかに、臭くはなかった。でも、旨みが豊富なわけではないので、胡椒も無しには間が持たないレベルの肉だったのだ。だからって、不味かったわけではないですよ。
じつに「フツー」だった、ってだけの話で。