六時三十分起床。ドウブツたちの世話と身支度を済ませてからランニングへ。自宅から善福寺川公園に向かって8kmチョイ走る。スズメ、カルガモ、オナガガモ、コガモ、キンクロハジロ、カワウ、コサギ、チュウサギ、ムクドリ、ヒヨドリ、セグロセキレイ。メジロは見かけなかった。この時期は渡り鳥は多いが花がすくなくて少々さみしい気分になるのだが、それでも椿や山茶花を見かければ心は和む。和むどころか高揚することさえある。一戸建ての庭木として植えられた柑橘系が実を結ぶ季節でもある。あちこちの木に橙色や黄色の重たそうな実がぶら下がっているのは住宅街も川沿いの遊歩道もおなじこと。
午後からカミサンと外出。恵比寿へ。東京都写真美術館で「出発--6人のアーティストによる旅」を観る。文芸誌「群像」の表紙を飾る若き冒険写真家(って呼び方でいいのだろうか)・石川直樹の富士山の写真と、ロンドン在住のさわひらきがつくったDavid Sylvianの新作「Manafon」に収録されている「Small Metal Gods」のプロモーションビデオを大画面で観るのが目的。詳細別項。
つづいて原宿に移動。明治神宮の初詣客はいまだ途切れず、臨時改札が開かれていた。道もひどい混雑で、平日なら5分で歩けるところ10分近くかかるようなありさま。それでもなんとか、「ポールスチュワート」あたりまでたどり着く。江戸時代につくられたらしい石垣を外壁に活かした店を横目に見つつ右に折れ、「バンブー」の向かいにある北川画廊へ。カミサンの知り合いであるいいじませつこさん初の個展におじゃまする。猫のパステル画。こちらも詳細後日別項。
十七時すぎ、帰宅。夕食は餃子鍋にした。
大江健三郎『水死』
話題の書き下ろし作品。大江さん自身が「晩年の仕事(レイト・ワーク)」と言っている5部作の完結編(になるのだろうか)。5冊を通じての主人公・長江古義人の父の死についての物語。古義人は大江さん自身がモデルで、当然ながら死んだ父もまた大江さんの父親がモデルのようだが、父のほうはかなりの部分が大江さんが幼いころから思い描いていた妄想によるところが大きいらしい。
今日はひとまず序章と第一章の冒頭だけを読んだ。父の死を描こうとした未完の作品「水死小説」を仕上げるために、古義人は妹アサが管理していた父の死に関する資料が収納されている「赤皮のトランク」を受け取るために四国にある自身の生家「森の家」に向かう。
ふっきれたような文体が心地よい。レイト・ワーク作品の最初の三作品は三人称で描かれていたのだが、本作は『アナベル・リイ』同様に一人称。ただし、『アナベル・リイ』のようにヘンに難解にならず、かといって平坦なわけでもない。『M/Tと森のフシギの物語』や『燃え上がる緑の木』のころを彷彿とさせる、それでいて読みやすい文体に驚いた。
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東京都写真美術館「日本の新新作家展VOL8 出発--6人のアーティストによる旅」(2009/12/19〜2010/02/07)
参加した写真家は、尾中浩二・百瀬俊哉・石川直樹・百々武・さわひらき・内藤さゆり。写真芸術にはとにかく疎い身であるが、石川直樹の命を張って地球の果てまで行き誰にも撮れない、それでいて地球の営み、人の業、そういったもの、乱暴に括れば「真実」に満ちた絵を掴み取ろうという姿勢には以前から注目していた。加えて、敬愛するDavid Sylvianの極めて芸術性の高い(というか芸術そのもの)プロモーションビデオを制作したさわひらきの作品が展示されている、と聞いたら、そりゃもう居ても立ってもいられぬわけだ。
- 尾中浩二…日本全国を旅しながら撮り貯めたらしい、経済活動の歯車からこぼれ落ちたような、切ないが守りたい風景が並ぶ。
- 百瀬俊哉…今回、一番注目した写真家。撮影対象がインドとなれば、もうそれだけで十分生と死のエネルギー(死もまたエネルギーに満ちている、とインドという土地は痛感させてくれる)を存分に感じられるわけだが、観光旅行ではとても目に止まらぬような風景ばかりをざっくざっくと切り取り、鮮烈な色彩感覚でもってそれを見る側に突きつけてくる。藤原新也さんのインドの写真にちょっと似ているかもしれないが、藤原さんが生身の感覚に満ちているのに対し、百瀬さんは死の向こう側に突き抜ける場所を探そうとした結果、こんな写真ばかりになったのではないか、と思わせる雰囲気がある。会場に掲げてあったアーティスト・ステイトメントより引用。
インドはあこがれの旅先でした。しかし僕はここで視覚の混乱を感じました。ある程度予測はしていたのですが、カメラを構え被写体と対峙した時、フレームを超えてさまざまな情景が目に飛び込んでくるのです。試行錯誤の末、結局目の前にある被写体と寄り深く対峙することで、、撮影を進めていくことができました。それは1回のシャッターを切るのにとても時間のかかる旅でした。
実際に眼で見ることができず触ることができないものでも、感じ取ることができたものを、視覚化できることが写真の力の一つだと考えています。日常の光景では、普通の人はまったく気にも留めていない都市の光景を拾い集めながら、自身で記憶していくのです。これは僕自身が都市を取るという旅の中に、写真家としての自らの“場所”を見つけようとしているのかもしれません。
- 石川直樹…今回は富士山を撮影した作品ばかりが並んでいた。日本人なら誰もがすぐに思い浮かべることのできる優美なシルエットの写真なんぞほとんどなく、獰猛な牙を剥いたまま眠ったかのような火口、近寄るんじゃねえとでも言いたそうに広がる奇妙な雲、歩けるものなら歩いてみろといわんばかりに広がる草一本ない荒涼とした山道など、ニンゲンと対峙する厳しい存在としての富士をたっぷりと見せつけてくれた。
- 百々武…日本全国の「島」に暮らす人々のポートレートが中心。島という環境は自然が凝縮されているようで、だからだろうか、そこに住む人たちはみな、なんらかの形でうまく自然と折り合いをつけているように見える。それが神事となって現れたり、日常生活の基本的なスタイルとして現れたり。その一方で、自然とかけ離れた何かを無理やりそこに持ち込もうとするのもニンゲンのサガで、そんな側面にもこの写真家はしっかりカメラを向けているように思えた。
- さわひらき…David Sylvianのプロモーションビデオは静寂に包まれていながらも意外性と期待感に満ちている。地味な興奮、というべきか。残念ながら作品はこのプロモともうひとつ、小さな映像(動画)作品の2点だけ。もっと観たいと思った。
- 内藤さゆり…美しい色彩や風景を美しいと素直に感じ、それを大切にしたいと心の底から願っている人なんだろうなあ、と思わせる写真たち。美しさへの喜びと、そこに垣間見れる、ほんのわずかの感傷。
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うちnekoパステル展 いいじませつこ個展
いいじまさん、初の個展。パステルを画材に柔らかなタッチで、自宅で飼われている2匹のチンチラ(かな?)の愛らしい姿を描いている。猫好きにはたまらない表情ばかりが並ぶ。2回、3回と個展がつづくことを祈っております。
Joe Pass ジョー・パス
1994年に亡くなった伝説のジャズ・ギタリスト。使用ギターは、Martin 00-42、Fender Jaguar、Fender Jazzmaster、Fender Telecasterなど。
ジャズと言えばピアノか管楽器でギターというイメージは薄い、という方は多いと思うが、ひずみのないクリアーなアコースティックやセミアコースティックの(ソリッドもあるけど)ギター・ソロはロックとは違う意味で聴き手を興奮させてくれるのでぼくは好きなのだけれど、なんせ知識がなくて誰の作品を聴けばいいのやら…という状態だった。
このアーティスト、我流なのだそうだが技術的には卓越していて、コード進行やメロディはオーソドックスではあるのだけれど、一音一音が丁寧に、そして美しく心に響いてくる。ジャズはしかめっ面で聴くのではなく、ミュージシャンが刻む音に合わせて身体を揺らしながら聴くのが理想、と再認識させてくれる、と思った。
↓ゴキゲンなソロ!
↓ちょっとしんみりと…
↓代表作。残念ながらiTunesにはないみたい…
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