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2007-05-11

[]団塊格差

団塊格差 (文春新書)

団塊格差 (文春新書)

団塊世代、という言葉を聞くと、その名の通り団結した塊のような世代を想像してしまう。第二次大戦直後から数年間(1947年から50年頃)の第一次ベビーブームに生まれた世代のことを一般には団塊世代と呼ぶのだが*1、大半が高度成長期サラリーマンとして過ごし、一億総中流とも呼ばれた彼らの世代は、本当に同質的なクラスタなのだろうか。本書は、マスメディアによって作られてしまった「団塊世代」像を解体した試み。

下流社会 新たな階層集団の出現 (光文社新書)』で良い意味でも悪い意味でも注目された著者だけに、今回も単純なマーケティング論かと思われてしまう可能性は否めないし、番外編の「団塊世代人間図鑑」はマーケティング的には興味深いものの本書で取り上げられている団塊格差という問題とは焦点がずれてしまうのではないかとの印象も受けたが、実際のところ米国でも年金について格差問題が深刻となってきており*2、日本における年金受給世代の格差問題に焦点を当てる書としても、『団塊格差 (文春新書)』の存在はかなり重要なのではないかと思う*3

本書の要約は、序のp13-14にある「団塊世代2000人調査」の結果からまとめた団塊男性の特徴を引用すればインパクトは十分だろう。

  • 貯蓄300万円未満=29%、2000万以上=19%
  • 退職金なし=35%、2000万以上=28%
  • 仕事人生に満足=56%
  • 自分の世代に所得格差が広がっている=87%
  • 今後の生活に所得が足りない=53%

(p13-14)

この本の重要な主張は主に3つ。団塊世代にも格差は存在し、それが今後より顕在化していくこと。団塊世代といっても、この世代の人々は別に同じような思考様式をしているわけではなく、さまざまなクラスタの人間が混在していること*4。「マスコミは団塊世代を主体的で、社会を切り開くパイオニアのように語るが、実際は、社会の大きな流れに乗ってきただけで、自分では何も主体的に考えていなかった人が多数派ではないのか。しかも企業や行政が、つねに団塊世代の人生を先回りして、いろいろな商品や政策を用意してきた。だから団塊世代は、機に臨んで、さてどうするか、自分で考えるより、口をあーんと開けていれば、何かが勝手に押し込まれてきたのだ」(p149)。そして、現在問題となっている若年層の格差問題は、団塊世代が彼らの子供たちに自分らの夢を託したことで発生した可能性がある、ということ。3番目の点については、以下の文章がまとまっている。

 団塊世代が就職した高度成長期は、就職口はたくさんあったが、自分の好きな仕事を自由に選べる時代ではまだなかった。男性は技術系、女性商業系、という役割分担が厳然として存在していた。だからこそ自分の子どもには、自分で自分の生き方を決め、自分の仕事を見つけてほしいと思ったのであろう。職業選択を自分では十分に実現できなかったという団塊世代の思いが、子どもの職業選択への「甘さ」となって現れたのだと考えられる。(p171-172)

新聞雑誌を読むと、2007年から始まる団塊世代の退職により退職金を得た彼らがその豊富な金融資産をさまざまな分野に投資するであろう、というような論調を頻繁に目にする。しかし、実際のところはどうなのだろう。著者があとがきで指摘しているように、「団塊世代はマスメディアによってつくられた大きな虚像」という側面があるのだとすれば、どうなのだろう。

著者自身がp53-55で述べているが、本書で使われている調査サンプルはかなり偏っている。たとえば「中卒は2%しかおらず、大卒以上が54%もいる」(p53)。これは調査がインターネットを介して行われたためで、パソコンを持っていない人々は必然的に回答者からは漏れてしまう。しかし、パソコンの所有というデバイス面でのデジタル・デバイドと、パソコン利用のリテラシーというリテラシー面でのデジタル・デバイドの両面を考慮したとき、本当に問題視すべきはこの調査から漏れてしまった、デジタル・デバイドの「向こう側」にいる団塊世代の格差問題だろう。そういった人々を含んだ調査を仮に行ったとしたら、どのような結果が出てくるのだろうか。

*1:ちなみに団塊世代子供にあたる、1971年から74年にかけて生まれた世代を団塊ジュニアと呼ぶ

*2:たとえば、米国商工会議所の「二一世紀における米国資本市場規制に関する委員会」がまとめたレポートを参照のこと。日本語での解説は日本証券経済研究所レポートここPDF文書)で読める。""

*3:ただし、数値としてデータは出しているものの、そこから想定される人間像はあくまで想像の産物でしかない。私も本書について大枠の考え方には賛同するものの、個別の人間像分析には疑問符が付くものが多かった。

*4:「団塊世代人間図鑑」はこの多様性を指し示すために掲載されている側面もある。

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