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    北米発のアニメ・マンガニュースを紹介するブログです。


OTAKU UNITE!
実はマンガ専門の出版エージェントをやってます。


自分のクライアントさんのマンガだけでなく
色々な海外マンガを紹介していきたいです。



『メガトーキョー』(講談社BOX刊)
海外マンガの翻訳もしています。


海外マンガ事情についても調べています。
情報歓迎です!



米アニメファンを描いたドキュメンタリー映画 『OTAKU UNITE!』の字幕も担当しました。
監督からこのブログへの独占メッセージ。

2009-05-22

「2008年北米マンガ界10大ニュース:2008年アメリカのマンガ界ではこんなことが起こってた!」(8)

いつまでたっても終わらないので、知り合いの方に「大河10大ニュース」と命名された本ブログの「2008年北米マンガ界10大ニュース」。こうなったら開き直って、今年中に終わればいいやとも思う今日この頃。


前回のエントリーで「北米のマンガ雑誌」について触れたところ、その後に北米唯一の少女マンガ雑誌である『Shojo Beat』の廃刊が発表されました。セリフ以外でもマンガの中のオノマトペや効果音などの翻訳+デザインで、かなり丁寧な仕事をしていた雑誌だけに廃刊は残念です。「『Shojo Beat』廃刊=北米での少女マンガ人気の凋落」とは単純に言えないまでも、今回の廃刊は不況のせいだけでなく、北米でのマンガ・ビジネスの難しさを浮き彫りにしている気がします。


さて、第3弾のその8となる今回は「2008年北米マンガ界10大ニュース」第3位の発表です。

以前の記事を読んでいない方は第10位第9位第8位第7位第6位第5位第4位の記事も合わせてお読みください。


「2008年北米マンガ界10大ニュース:2008年アメリカのマンガ界ではこんなことが起こってた!」(8)


第3位

「学習マンガ」に注目作登場:北米に「学習マンガ」は根付くのか?


今までもこのブログでしばしば言及してきたように、北米での人気マンガにはある一定の傾向が見られた。主にアニメが大手ケーブルチャンネルで放送されたもの(『ナルト』『Bleach』など)がそれである。その他、固定ファンの付いた作家の新作(『子連れ狼』コンビ、高橋留美子作品)、原作本が既に知名度が高い人気作(『Worriors』シリーズなど)、ファンタジー要素の強い少女マンガ(『ヴァンパイア騎士』など)にも人気作品が多い。


しかし2008年の北米のマンガ界では、今まであまり注目されていなかったジャンルに何本か話題作が登場した。それは「学習マンガ」ジャンルのマンガだ。


そもそも「学習マンガ」とはどういうマンガを指すかと考えた時、とりあえずWikipediaの言葉を引用させていただくと、

学習漫画とは、日本における漫画のジャンルの一つ。歴史やテクノロジー経済など人々が学習する内容を文章表現ではなく漫画にすることで、読者が理解し易くしたものである。


Wikipedia学習漫画

となり、たぶんこれは多くの人が考える「学習マンガ」にあてはまっていると言えるだろう。


Wikipediaでは更に、

また、学習マンガではないが、その内容が非常に学術的価値が高いものとして認められたものもある。源氏物語原典を忠実に再現した大和和紀の『あさきゆめみし』、横山光輝の『三国志』などが代表。


Wikipedia 「学習漫画

として古典にも言及している*1


「学習マンガ」の定義を論じることが本記事の趣旨ではないのだが、今回強引に「古典作品」を広義の「学習マンガ」に含めて話を進めさせていただくと、北米では昨年何かを学ばせる目的を持った「学習マンガ」作品のいくつかに注目が集まったと言うことができる。


日本同様北米でも売上ランキングに登場することはほとんどなく、マンガ読者に語られることが少ない「学習マンガ」だが、実は北米でも2002年以降のマンガ売上急増を受けて数多く出版はされていた。更に言うと、もちろん北米産のコミックスで「学習コミックス」がなかったわけでもない。


例えば下に挙げた『Introducing Cultural Studies(初心者のためのカルチャラル・スタディーズ)』などは広義の「学習コミックス」と言えなくもない。全ページがコマ割やセリフで構成されているわけではないが、イラストを多用することで内容を分かり易く伝えようとしている。


↓『Introducing Cultural Studies(初心者のためのカルチュラル・スタディーズ)』。「Introducing…(初心者のための〜)」シリーズの1冊。


あまり取り上げられることのない北米での「学習マンガ」なので、これを機にどのようなものが出版されてきたか、ざっと見ておこう。



数独の解き方を教える『The Guide to Sudoku数独ガイド)』は、北米ではかなり初期の「学習マンガ」だ。


↓日本に会社があるJapanimeから出ている『The Guide to Sudoku数独ガイド)』。

The Manga Guide to Sudoku

The Manga Guide to Sudoku


上で取り上げた『The Guide to Sudoku』を出すJapanime社は、この他にも日本語を学ぶためのマンガ『Kanji de Manga』シリーズを出している。更に、Digital Manga Publishingからは偉人の人生をマンガ化した『Edumanga』シリーズもあった。

↓『Kanji De Manga』シリーズ。

Kanji De Manga

Kanji De Manga

↓『Edumanga』シリーズ。手塚のアトムとウランがナビゲーターとなっているシリーズだ。

Edu-Manga: Albert Einstein (Dmp Educational)

Edu-Manga: Albert Einstein (Dmp Educational)


シェークスピア」の一連の作品をマンガ化した『Manga Shakespear』シリーズはもともとイギリスのSelf Made Hero社から出ていたが、2008年には米出版社Amulet(ABRAMS Books)から刊行が開始された。

Manga Shakespeare: A Midsummer Night's Dream

Manga Shakespeare: A Midsummer Night's Dream


この他、「学習マンガ」には入らないが、日本の宙出版子会社であるAurora Publishingの出版するNHKの『プロジェクトX』マンガの英語版もいくつか出版されている。その中でも特に話題になったのが「カップヌードル」を扱ったエピソード。2007年度のアイズナー賞の「ノンフィクション部門」にノミネートされた。

Project X - Nissin Cup Noodle

Project X - Nissin Cup Noodle


もう一つの例外として「マンガの描き方本」がある。『How to Draw Manga(マンガの描き方)』などのシリーズは過去にあまた出版されているが、内容自体はコマ割りされたマンガ形式ではない場合がほとんどなので、「学習マンガ」には入れないほうがいいだろう。


↓かなりの種類が出ているマンガの描き方本。こちらはBLマンガの描き方本である。

How to Draw Manga: Drawing Yaoi

How to Draw Manga: Drawing Yaoi



以上見てきたように「学習マンガ」は2008年以前にも発売されていたが、話題になることは稀だった。しかし2008年にはいくつか注目を浴びる作品が登場する。そのひとつが「統計」を学ぶ『The Manga Guide to Statistics』。話題になった理由は、そのかわいい絵柄と「統計」という硬いテーマとのギャップのようだ。

The Manga Guide to Statistics (Manga Guide To...)

The Manga Guide to Statistics (Manga Guide To...)

The Manga Guide to Databases (Manga Guide To...)

The Manga Guide to Databases (Manga Guide To...)

この『The Manga Guide 〜』と銘打ったシリーズは「統計」の後も様々なテーマで出版され続けている。


更に、この『The Manga Guide』シリーズ以上に注目を浴びたのが『The Adventures of Johnny Bunko: The Last Career Guide You'll Ever Need (ジョニー・ブンコの冒険:絶対必要にならないキャリアガイド)』。日本に在住経験もある著者Daniel Pink氏原作による“アメリカ初のマンガスタイルのビジネス書”という触れ込みの作品だ。


↓『The Adventures of Johnny Bunko: The Last Career Guide You'll Ever Need (ジョニー・ブンコの冒険:絶対必要にならないキャリアガイド)』

The Adventures of Johnny Bunko: The Last Career Guide You'll Ever Need

The Adventures of Johnny Bunko: The Last Career Guide You'll Ever Need


あらすじは、仕事で思うようにいかずに悩む、大学を出たばかりで入社1年目のジョニーが、突如登場した魔法少女ダニエルダイアナ(Diana)から「キャリアを積むために必要な6か条」を学んでいく、というもの。Youtubeで宣伝トレイラーを配信するなどのマーケティング戦略も功を奏したのか、Wall Street JournalNew York Times、Forbsという名だたるメディア書評が取り上げられ、マンガとしては異例の注目を浴びた。日本では講談社から翻訳版が出版予定である。

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この他、注目された作品には聖書をマンガ化した作品もあった。

The Manga Bible: From Genesis to Revelation

The Manga Bible: From Genesis to Revelation

今までも聖書を扱った韓国産マンガの英語版は北米でも出版されていたが、『Manga Bible』は「初の北米聖書マンガ」として数々のサイトで取り上げれられた。


加えて、アメリカ海軍が日本人マンガ家に依頼し作成したマンガも話題となった。原子力空母『CVN73 USS George Washington』の横須賀基地停留にあたって作られた同空母の解説マンガである。日系アメリカ人の海兵隊員を主人公にした200ページあまりのマンガは無料で配られ、ネット上でも英語版と日本語版が公開されている。


英語版『Manga CVN73 USS George Washington』

日本語版『マンガ CVN73 USS George Washington』



2008年の「学習マンガ」の話題作としてこれまで取りげた中で、特にビジネス書として売られた『The Adventures of Johnny Bunko(ジョニー・ブンコの冒険)』が普段マンガを読まない層からも支持されたことは注目に値する。


普通のビジネス書と違って「1時間あまりで読むことができる」ことを売り物ににした本作は、マンガ作品である利点が読者に実感されているようだ。74もコメントのついたAmazonの読者レビューからは、まさしくWikipediaの「学習マンガ」の定義さながら“文章表現ではなくマンガになることで理解し易く”なったこと、そしてマンガとなったことで楽しみながら学べることを読者が実感していることが見て取れる。


普段マンガに慣れ親しんでいない人たちが「ビジネス書」を入り口にマンガを読むことになったのは、新規読者層開拓という点でよかったと思われるが、「ビジネス書・マンガ」もしくは「学習マンガ」に対する注目が今後に渡って続く傾向なのかは現時点では正直よくわからない。


ただ、熱心なマンガファンだけでなく、広い読者層を相手にしたマンガの出版が業界から望まれていることは確かである。韓国での『神の雫』へのビジネスマンからの支持を考えると、「学習マンガ」は将来の発展が期待されるジャンルかもしれない。

*1韓国などで「学習マンガ」と言うと、有名な古典文学のマンガ化作品を指すことが多いということだ。

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