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2009-05-29

アイオワのマンガ・コレクターが司法取引に応じて、未成年を描くわいせつ物所持で有罪を認める。

昨年の10月に当ブログでお伝えした「マンガのコレクター、米アイオワ州で逮捕される。」の続報をお知らせしようと思う。

ただ、現在仕事が忙しく詳細を書く時間が無いので、事件の経緯の概要を書き、最後に文中でリンクできなかった参考記事のリンクをまとめるので、興味のある方はリンク先の記事もご覧いただきたい。



今月の20日、未成年の性的行為を含むマンガを日本から輸入し所持していたことで逮捕されていたアイオワ州在住のクリストファー・ハンドリーが司法取引に応じて、起訴されていた罪状二つに関して有罪を認めたことをアメリカ司法省が発表した。

その司法省の発表を訳すと、

アイオワ州グレンウッド在住のクリストファー・ハンドリー(39)はアイオワ州のデモインにおいて本日、未成年の性的虐待を視覚的に描いたわいせつ物を所有し、そのようなわいせつ物を郵送したことに関して有罪を認めた。


法廷記録によると、2006年5月アメリカ移民税関執行局が、日本からのハンドリー宛の郵便物を押収した。郵便物の中には未成年の性的虐待の視覚的表現を含む本、特に未成年の少女が成人男性や動物に性的に虐待されている様子を描いた日本のマンガが含まれていた。


適切な捜索令状に従い、連邦郵便検査局はハンドリーのグレンウッドの住居を捜索し、未成年の性的虐待を描いたわいせつ物を更に没収した。ハンドリーは2007年5月にアイオワ州の大陪審において起訴された。


本日、司法取引によってハンドリーは、マンガ、アニメ、彫刻、絵画などのいかなる種類の視覚的表現物において、性的に露骨な行為を行う未成年を描くわいせつ物の所有を禁じるアメリカ法18条1466A(b)(1)違反により、有罪を認めた。


ハンドリーはそのようなわいせつ物を郵便で送ることを禁じた罪についても有罪を認め、所有するわいせつ物すべての没収にも同意した。


現在、北米のマンガファンや業界関係者のブログはこの話題一色である。なぜなら「性的に露骨な行為を行う未成年が描かれた」日本のマンガを所有するだけで、ハンドリーは最悪「15年の実刑、25万ドル(現在のレートで約2500万円)*1罰金、3年間の司法当局による監視付き釈放」*2の可能性に直面することになったからだ。


そもそもアメリカでは2002年に最高裁が「現実の子供を使うことなく作られた画像に対する児童ポルノ禁止を拡大する州法は表現の自由に基づいて違憲」との判決を下していた。しかしその後、アメリカ連邦議会は未成年を性的に描くわいせつ物を更に具体的に定義し禁止した通称PROTECT法の法案を可決した。


今回ハンドリーの弁護を助けたコミックス業界の法的支援基金Comics Legal Defense Fund(CLDF)は、このPROTECT法の違憲性を訴えて無罪を勝ち取る方針でいたようだが、ハンドリー自身が雇用した地元アイオワ州弁護士はハンドリーに対して司法取引を受けることを勧めたようである。


コミックス全般のニュースサイトNewsramaのジェフ・トレクスラーの分析によると、このPROTECT法を違憲と立証するのはかなり困難なようだ。トレクスラーはその違憲性立証の困難さとアイオワという保守的な土地柄から選出される陪審員のことを考えて、司法取引を選ぶように勧めた弁護士の選択にも理解を示している。


多くのマンガ関連のブロガーが今回の逮捕のインパクトの大きさについて様々な角度から語っているが、未成年を描くわいせつ物とは言え、問題のわいせつ物を人に見せるわけでなく、売ったわけでもなく、純粋に個人で楽しむために所有していただけで逮捕されたという事実の衝撃を語るコメントが多い。ただ表現の自由を支持しながらも、未成年の性的虐待を描いたわいせつ物所持には同情できない、という意見も少なからず見られる。


ハンドリーの弁護士によると、ハンドリー自身はマンガのコレクターであり、日本のマンガを多く所有していたが、特に未成年を扱ったポルノの愛好者ではなく、問題となった本は1200冊所有していたうちの数冊だったらしい。つまりハンドリーは“ロリコン”好きでも小児性愛者でもない。このため多くの北米のマンガファンが本事件を人事ではないと感じているようだ。


現在のところ、問題となっている日本のマンガの作品名は明らかになっていない。以前はBL作品だと言われていたが、実際にはそうでらしい。


オーストラリアでは昨年の12月にシンプソンのキャラクターを使ったわいせつ画像を自分のコンピュターに所持していた男性が逮捕され、3000ドルの罰金と2年間の監視付き保釈で有罪となったことがあった。その際にも架空のキャラクターのわいせつ画像所有で有罪になったことで話題となったが、今回ハンドリーはCLDF曰く、「今後の判決によっては現在の生活のすべてを失う可能性がある」ほどの刑罰に直面している。


昨日、北米のBL出版社Yaoi PressによるオリジナルBL本が印刷所から印刷拒否されたことをYaoi Pressの代表がインタビューで明らかにし、今回のハンドリーの件が影響したのではないかと語っている*3


他の関連記事リンク(時間のある時に更に追加する予定):

Comipress ”Down the Slippery Slope - The Crime of Viewing Manga” (May 12, 2009)

Japanator ”Chris Handley pleads guilty to charges of possession of drawings of ’children being sexually abused’” (May 21, 2009)

ICv2 ”Handley Posts Removed from Blog” (May 27, 2009)

Wired ”U.S. Manga Obscenity Conviction Roils Comics World” (May 28, 2009)

*1:記事によっては罰金が50万ドルとなっているものもある。

*2:ハンドリーは司法取引に応じたことで、起訴されていた5つの罪状のうち3つの起訴が取り下げられたという。取り下げられた3つの罪状は、わたしが調べた範囲では不明。今後わかり次第追記する。

*3:今回の件とは関係ないと思われるが、ドイツでは数日前にやまねあやの作『ファインダー』シリーズがドイツ政府によって「有害図書」認定され、出版や公の場所での提示が禁止された。

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