男嫌い


以前も書きましたが、私は、とある旧家の生まれです。


母は、男子の跡継ぎを産むことを、結婚当初から期待されていました。
いや、「期待」なんてものではありません。
それは、ほとんど「義務」でした。


ところが、母は娘を二人しか産みませんでした。
私と妹です。


父にはやや歳の離れた兄がいましたが、ここにも生まれたのは娘だけでした。


父の両親、つまり私の祖父母は、ことあるごとに嫁、つまり私の母や伯母を責め続けました。
「女しか産めない嫁」
このフレーズを、私は何度も何度も耳にしました。




私は、自分が女に生まれたことを、ずっと呪いながら思春期を過ごしました。
女に生まれてしまったばかりに、不愉快なことばかりが身に降りかかってくるような気がしていました。




・・・その後、まぁいろいろ歳月は流れ、私は結婚をし、息子を産みました。


あれだけ嫌がらせやプレッシャーを受け、悩みに悩んだ母には息子は生まれなかったけれど、何も考えず、むしろ自分の学業研究の中断を心配し、そっちに気を取られていた私には、いともすんなり簡単に男子が生まれました。


そう、要するに子供は、こっちの意志とは関係なく、この世にやってくるのです。
男か女か、そんなのは確率の問題。
どっちかが生まれて、どっちかは生まれないわけです。




でも、この民主主義の時代に、祖父母を見ていると、まるで「男の子を産める嫁は偉い」「女ばかり産む嫁は役立たず」という思考が、顔の真ん中に書いてあるかのようでした。
どんなに私や妹や従姉妹が頑張っても、もう「女である」時点でアウトなんですよね。


「女は嫁に行ったらしまい。跡継ぎにはならしまへん。」・・・と、ずーーーっと言われました。


私は、別にあんな息苦しい家の「跡継ぎ」なんかになりたいと思ったことなどタダの一度もありませんけど、このように言われることは、実に不愉快でした。
ほんと、不愉快でした。


言ってる本人達は意識していないのかもしれませんが、私の心には、「女は男より下」という強烈なメッセージとなって響き渡りました。


しかし、それをどうやって納得すればいいでしょう?
学校のクラスでは、私より成績の良い男子なんて、ほとんどいませんでした。
人間的にも「男子なんて未熟で子供っぽいヤツばっか」…と、あの頃の私はニガニガしく冷たい視線を送ってましたっけ。


「彼らは、男であるというだけで、私より価値が上なのか?」
・・・そんなバカな、と、思いましたよ。




友人に、そうした私の気持ちを話すと、「へぇ〜、今の時代に、そんなこと言ってる家があるんだねー」「やっぱり金持ちは大変なんだね〜」などと、ズレた反応をされるのがオチでした。
男子からは、「怖いヤツ」と思われ、「そんなルサンチマンかかえてるとモテないぞ!」と言われました。
そうなんですよね。
「男女差別はやめてほしい」とか、「男尊女卑は不愉快だ」とか言おうものなら、周りから「こわーい」とか「モテない女のひがみ?」とか冷やかされることが、なぜかセットになって付いてきます。
だから、私もだんだん賢くなって、今は口に出しません。


「…それって、無意識に言ってるんだろうけど、要するに男女差別でしょ?」
とか・・・
「結局、“男は女より偉い”って、思いたいわけでしょ? なんとしてもそう思いたいから、あとからいろいろ理由くっつけてるんじゃないの?」
・・・な〜んて、口に出しません。
そんなことペラペラ言うほどアオくないし、これまでそれで散々苦労してきましたから。






でもな・・・
最近、やっぱり思います。


私、もしかすると、今でもほとんどの「男」が嫌いなのかも・・・って^^;


成長期の恨みツラミって、けっこう侮れないものかもしれません。


今流行の「嫌韓」をもじって、「嫌男」でも標榜しようかな〜
(冗談ですけどネ^^)