2011-01-11
佐藤常寛著「キミよ、日本を守れ」ウェブ連載スタート!
これまで「国防最前線 いまここにある危機の本質」と題し、さまざまな観点から日本の国防に関する問題を解説していただいた佐藤常寛氏によるウェブ連載がチャンネルNipponで始まりました。
著者:佐藤常寛氏ご挨拶
「国を守る」ことの基本を若い人たちに理解していただくために書き上げた拙文「キミよ、日本を守れ」をNPO法人平和と安全ネットワーク運営「チャンネルNippon」様の御厚意により、ネット配信(連載)が実現しました。一人でも多くの方に、またこれからの日本の未来を担う若い皆さんの閲覧を期待いたします。
佐藤常寛著「キミよ、日本を守れ」
以下の内容で「チャンネルNippon」にて順次連載される予定です。どうぞご期待ください。
まえがき
第1章 生命(いのち)の尊さ
第2章 生命(いのち)を奪うもの
第3章 戦争の本質
第4章 政治体制の現状
第5章 日本に影響した現代戦争
第6章 キミよ、日本を守れ
あとがき
国防最前線 いまここにある危機の本質<連載全十三回>ご紹介 解説:佐藤常寛
2010-08-14 国防最前線 いまここにある危機の本質<第十三回>
核兵器廃絶への長い道のり 解説:佐藤常寛(元海将補)
国防最前線 | |
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先週は核兵器をめぐる現実についてお話を伺いました。
- 第十二回「核兵器、非人道的兵器をめぐる現実」
今週は核兵器廃絶に向けた努力、解決策についてお話を伺います。
Q:NPTの悪用ともいえる原子力の平和利用目的を隠れ蓑にした核兵器開発という動きがあります。核の拡散がもたらす脅威について、いま一度お教えください。
A:核分裂を利用した「原子爆弾」には、ウラン235を濃縮して製造する「ウラン型原爆(広島投下型)」とウランの核分裂によって生成されるプルトニウム239を利用した「プルトニウム型原爆(長崎投下型)」とがあります。
ウランを濃縮するためには専用の「遠心分離機」が必要であり、原爆製造に必要な量のプルトニウムを生成するためには、原子炉で長時間ウランを核分裂させなければなりません。
このため「遠心分離機」の大量入手、IAEAの監視を逸脱した原子炉の増設は核開発の疑惑の原因となります。さらに疑惑を持たれる行動を呷(あお)るような国家指導者の過激な言動が、疑惑を一層深くさせているといえます。
イランとシリアは、ブッシュ前米大統領が「テロ支援国家」と名指ししていました。こうした国家が核兵器を保持し「アルカーイダ」等のテログループに核兵器を渡すことになれば、曲がりなりにもNPTによって果たしてきた国際的枠組みの「核兵器管理」が崩壊し、テログループによる核攻撃が無差別に引き起こされる新たな脅威が生まれます。
さらに近年の科学技術は使用目的に応じた小型核兵器の製造を可能にし、プルトニウム原爆は1.5kgのプルトニウムの量で超臨界に達するようになりました。こうした「ミニ・ニューク」と呼ばれる小型核兵器が、テログループの手に入ることが最大の脅威といえます。
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Q:やはり今日最大の脅威はテロリスト、テロ支援国家と呼ばれる国々の核兵器や生物化学兵器使用にあると思いますが、いかがでしょうか?
A:そのとおりです。米ソ冷戦時代には、東西間での大規模な核戦争の脅威がありましたが、世界破滅に至る結果を恐れた当事者間で最悪の事態を避ける妥協が図られました。キューバ危機(1962年)における米ソの対応がその典型です。
しかしながら、冷戦構造が崩壊した後、突出した米国の軍事力に対抗する新たな挑戦が、2001.9.11の「アルカーイダ」によるニューヨーク世界貿易センターへのテロ攻撃だったことは記憶に新しいところです。北朝鮮・イラン・キューバ・シリア等の「テロ支援国家」と「アルカーイダ」に代表されるテロリストに共通しているものは、集団的安全保障により「世界の平和と安定」を目指す「国連」の枠組みを無視する行動です。
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Q:国際連合の取り組みはどういうものがありますか?
A:「国連」はNPTだけでなく「生物兵器禁止条約(BWC:Biological Weapons Convention)1972年(加盟163ヶ国)」「化学兵器禁止条約(CWC:Chemical Weapons Convention)1997年(加盟185ヶ国)」をそれぞれ成立させていますが、テロ支援国家のうち、北朝鮮、シリアがCWCに加盟していません。
また2004年パキスタンのカーン博士による「核闇市場」が摘発され、北朝鮮、イラン、リビアにウラン濃縮技術が供与された事実、さらにドバイを本拠とするブラック・マーケットで核技術が売買された事実が明らかになりました。こうした不法な取引によってテロ支援国家、あるいは、テログループが核兵器(ミニ・ニューク)、生物・化学兵器を簡単に入手する恐れは十分にあります。
この不法取引を防止するには、売買の資金を国際的に監視する体制を強化し、取引に利用されている銀行口座を凍結させる必要があります。北朝鮮が武器売買・麻薬密輸・偽札偽造で得た資金を、米国を中心とした国際金融システムによって凍結させ、同国の核開発・ミサイル開発への資金投入を阻止したような措置が必要です。今日の世界ではテロ支援国家あるいはテログループの大量破壊兵器の保持が最大の脅威なのです。
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Q:日本では核攻撃、生物化学兵器に関する防衛を具体的にどのように考えているのでしょうか?
A:自衛隊の第一線部隊では「CBR(化学・生物・放射能)戦」の対策を採っていますが、有事想定の一般国民を防衛する「国民保護法」に「市民防衛(Civil Defense)」の思想が盛り込まれていないため、十分ではありません。
ノルウェーの例と比較してみるとその違いは明確になります。ノルウェー王国は小国ながら戦時の「市民防衛」体制が整えられており、防空壕を兼ねた洞窟内に地域住民全てを収容して、入り口を密閉することによってCBRに対処するように日頃から準備しています。
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平時は洞窟内のプールや体育館を運動に、図書室や会議室をグループ活動にそれぞれ活用し、戦時にはプールを飲み水に、体育館・図書室・会議室は臨時の居住空間に転用する等、準備されています。
これは、第二次大戦中、ナチスドイツに占領された苦い経験から導き出した、「自分の身は自ら守る」との考えが根底にあるのです。この「市民防衛」の体制は「国を守る」意思が国民に定着しない限り、きわめて困難だといえます。
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Q:核兵器、非人道的兵器開発を食い止める方策について、どう取り組んでいけば良いのでしょうか?
A:ここまで、大量破壊兵器の「現実」に目を向けましたが、現実対処と併せて「理想」についても言及したいと思います。
まず「核兵器の脅威」に晒されている我が国の現実対処について、「非核三原則」の国防方針を一部転換して、「非核二原則」にする必要を第五回で解説しました。
- なぜ日本に基地は必要なのか?(後編)
冷戦末期の欧州で、NATOとソ連との間で熾烈な戦いとなったINF(中距離核兵力)全廃条約締結の経緯は、中国・北朝鮮の「核の脅威」に一方的に晒されている我が国にとって、参考になります。
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INF全廃までの経緯
INF全廃までの経緯は次のとおりです。
1977年、西ドイツのシュミット首相(当時)は米国がソ連との核軍縮交渉でINFを含めないことを非難します。ソ連が欧州に配備したSS20ミサイルは全欧州を射程圏内に入れているにも拘らず、SS20がワシントンに届かないために米国がこれを脅威として扱わず、核軍縮の議題にしないことを非難したのです。
この後、米国のレーガン大統領(当時)はSS20に対抗して米国INFパーシング?の欧州配備を決断、各地で配備反対のデモが起こる(後年、ゴルバチョフ自らが、ソ連が背後で工作していたことを認めた)ものの、レーガンは配備を敢然と遂行します。この米国の対応にパーシングIIの脅威に屈したソ連のゴルバチョフ書記長(当時)は結局交渉のテーブルに着くことになりました。
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そこでINF全廃条約が成立(1987年)し、西欧を覆っていた核兵器の脅威が取り除かれたのです。この時、西ドイツが決断した、パーシングIIの配備と配備完了後に米ソが同時にINFを全廃する提案はきわめて巧妙であり、また的を射ていました。
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何故ならば冷戦崩壊後にゴルバチョフは朝日新聞とのインタビューの中で、
「ソ連にとって、NATOに配備された米国のINFは、こめかみに突きつけられたピストルのような存在だった。発射後二分でベラルーシに届くし、四、五分でモスクワに到達できた。ソ連のINFは米国本土までは届かない。NATO配備のINFはソ連の指導部や人口、経済の中心部を射程内に置いていた。これに対してソ連は何の防御手段も無かった」
と述べているからです(1997年12月18日付朝日新聞記事)。
Q:当時の西ドイツといまの日本が置かれている状況は似ているようにも思えますが、いかがですか?
A:そうです。当時の西ドイツが置かれていた軍事環境を現在の我が国に置き換えると、中国・北朝鮮の「核の脅威」に一方的に晒されている状況が酷似しています。西ドイツと大きく違うのは、我が国が一方的に宣言している「非核三原則」のために、同盟国の米国に対して、中国・北朝鮮の核ミサイルに対抗する手段に、米国の核巡航ミサイルを配備要請できません。
つまり、いまの日本では米国によって核巡航ミサイルを完全配備した後、中国・北朝鮮の核ミサイルを相互に撤廃しようという交渉にすら臨むことが不可能で、西ドイツのような対策が取れないのです。現在の「非核三原則」のままでは、非核地帯の日本が中国・北朝鮮の「核兵器脅威」の前に素手で立っていることになります。
Q:しかし核武装はできないとなると、具体的な対応策はありますか?
A:我が国が核武装しない理由は前回お話しました。そこで具体策として「非核三原則」のうち「持ち込ませず」の原則を破棄し、「非核二原則」に改めることが米国の「核抑止力」を担保する手段だと考えます。非核三原則を宣言した当時とは我が国周辺の軍事状況が大きく変化し、北朝鮮が核武装した現実にも柔軟に対応できるのです。
核廃絶への具体的なロードマップ、解決策
Q:核廃絶への具体的な提言をお聞かせください。
A:まず「核問題」解決の理想について、お話しましょう。
2009年4月5日、米国のオバマ大統領はチェコのプラハで歴史的な核軍縮演説を行いました。この演説に「核問題解決の理想」が語られていると確信します。大統領は演説の途中、「核兵器を使用したことがあるただ一つの核保有国として、米国は行動する道義的な責任を持っている」として、広島・長崎への原爆投下に対する事実にも触れながら、21世紀の核兵器の未来について次のように述べています(要約)。
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- 全面戦争の危険は去ったが、核拡散により核攻撃のリスクは高まっており、核兵器の無い平和で安全な世界を追求する。
- 国家の安全戦略における核兵器の役割を小さくするが、こうした兵器が存在する限り、抑止するための効果的なミサイル保有量を維持する。
- 核実験を禁止するため、包括的核実験禁止条約(CTBT:注1)の批准を直ちに、積極的に追及する。
- 核兵器に使用される物質の生産を終わらせるため、核保有国で使用される核物質の生産を検証可能な形で終わらせる条約(カットオフ条約:注2)の締結を目指す。
- 核拡散防止条約(NPT)を協調の基礎として強化する。民生用の核協力として「国際核燃料バンク」の新たな枠組みを提唱する。
- 北朝鮮がミサイル発射によりルール違反をしたが、世界的な管理体制を築くために団結して、北朝鮮に圧力を加えなければならない。
- イランが積極的な査察を伴うのであれば、平和的な核エネルギーの利用を認める。イランの核と弾道ミサイル開発が脅威である限りチェコとポーランドにミサイル防衛(MD)計画を進める。脅威が無くなればMD計画は実施しない。
- テロリストによる核兵器入手を阻止しなければならない。これは世界の安全保障にとり最も差し迫った究極の脅威である。従って、世界中の無防備な核物質を4年以内に安全とする国際的な試みを宣言する。
- 闇市場を破壊し、運搬される物質を探知し、危険な取引を中断させるために金融的な手段を使用する。
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- 注1(CTBT:Comprehensive Nuclear−Test−Ban Treaty)宇宙空間、大気圏内、水中、地下を含むあらゆる空間における核兵器の実験的爆発及び核爆発を禁止する条約。182ヶ国加盟(2010年5月現在:外務省資料)。発効要件国44ヶ国が指定されているが、このうち、米国が未批准、インド、パキスタンが未署名のため条約そのものが未発効状態である。この状態を打開して効力を発揮させる意図をオバマ大統領は宣言した。
少し長い引用になりましたが、オバマ大統領が狙いとする「核なき世界」の実現に向け、NPT体制の強化、CTBTの発効、FMCTの締結を図る一方、核兵器が存在する限りにおいては、「抑止力」とすべき所要のミサイル維持を宣言して、現実の脅威対処に遺漏の無いことも強調しています。
また、世界の安全保障にとって究極の脅威を、テロリストの核武装と位置付け、核兵器の闇市場の破壊と取引阻止のために、国際金融機関で対処すべきだとしています。これらの対処方針は、現状における核兵器、非人道的兵器開発を食い止める方策を網羅しているといえます。
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なお、最後に補足するならばエネルギーの活用について、化石燃料への依存を少なくするために、風や太陽エネルギーの活用を提唱している点が注目されます。現実に米国の風力発電は、2009年で世界の22%を占めており(エネルギー白書2010)、「風と太陽エネルギー」よる発電がやがて原子力発電を凌駕するようになれば、原子炉で生成される核物質に神経を逆立てる必要が無くなる時代が訪れるかも知れません。
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<第十三回:了>(聞き手・構成:小関達哉)
2010-08-07 国防最前線 いまここにある危機の本質<第十二回>
核兵器、非人道的兵器をめぐる現実 解説:佐藤常寛(元海将補)
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第二次世界大戦後アメリカ、ソ連という二大軍事大国を中心に進められてきた核開発競争も、東西冷戦終結後、一定の歯止めは掛かったようにも見えます。しかし一方で核開発技術の流出は止められず、核物質の闇取引市場は広がり、核拡散、テロリストへの流出という新たな脅威を生むことになりました。何世代にもわたる苦しみを与える非人道的兵器に対抗して核開発力を持たない国々では数多くの生物化学兵器も開発されています。そこで、まず今回は…、
Q:世界に広がる核保有の実態について、解説をお願いします。
A:「核兵器」問題について、まず我が国は「核武装すべきではない」との立場で解説します。
我が国は世界唯一の被爆経験国です。今から65年前、広島、長崎に投下された原子爆弾は、一瞬にして無辜(むこ:罪の無い)の一般市民約20万人以上の命を奪いました。原子爆弾(核兵器)は想像を絶する破壊力と、放射能被爆の悲惨な後遺症の故に人類が生んだ「悪魔の兵器」として広島、長崎への投下以後65年間使用されませんでした。
その最大の理由は、米ソを中心とした東西冷戦下において、もし、核戦争が勃発した場合、核兵器による大量破壊が世界全体に及び、人類が滅亡するという恐怖と危険性を東西両陣営が共通認識として持っていたからです。そのために米ソ間では、核兵器管理を目的とした条約が次々と締結され、今日においても相互の戦略核の数を制限し合っています。
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Q:当初米ソだけが保有していた「核兵器」をイギリス、フランス、中国が開発・保有するに至ります。これらの核保有国はイコール国連安保理の常任理事国ですね。
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A:そうです。では核兵器を持つメリットを考えてみましょう。
「核兵器」の保持が、
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この五ヶ国の核開発の年次は次の通りです。
| 国 名 | 最初の核実験 | 場 所 |
|---|---|---|
| アメリカ | 1945年7月 | ニューメキシコ |
| ロシア | 1949年8月 | カザフスタン |
| イギリス | 1952年10月 | オーストラリア |
| フランス | 1960年2月 | アルジェリア |
| 中 国 | 1964年10月 | 新疆地区 |
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次々と核兵器保有国と核の脅威が広がり、それを懸念する国際的な世論も高まり、1968年7月1日「核兵器不拡散条約(NPT:Treaty on the Non−Proliferation Nuclear Weapons)」が成立、締約国は190ヶ国(2010年6月現在:外務省資料)に及びます。
ただ、この条約は米・露・英・仏・中の五ヶ国を「核兵器国」として定義付け(第9条3項:注参照)、この核兵器国の「不拡散義務(第1条)」に続いて、非核兵器国に対して「拡散回避義務(第二条)」を課し、「核兵器国」以外の国家が核兵器保持を禁止する内容になっています。言い換えれば、核兵器開発を早期に達成した五ヶ国の核兵器独占を宣言しているともいえます。
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注:第9条3項「この条約の適用上「核兵器国」とは1967年1月1日以前に核兵器その他の核爆発装置を製造しかつ爆発させた国をいう」。
さらにこの五ヶ国が国連安保理において「拒否権」を有する常任理事国であることが、国際紛争を解決する各種安保理決議において、核兵器を背景にした自国国益を最優先させる「拒否権」のために、国連安保理そのものが機能しない事態が常に生起していることが問題です。
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Q:NPTという条約が核兵器保有国にとって、都合の良いものになったということですね。
A:そういうことです。具体的な例を挙げると「国連憲章第七章」に規定される「国際平和を破壊する国家」に対して発動される軍事措置で、いずれかの常任理事国が「拒否」するために「国連軍」が編成されること無く、「多国籍軍」による対応しか取れないことがその典型的な事例です。こうした背景のNPT体制に対して、後発の核開発国家はNPTそのものをボイコットし、強引に核兵器保持に邁進したのです。
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Q:国連安保理常任理事国以外の核保有の実態はどうでしょうか?
A:「核兵器国」以外の核保有国は次のとおりです。
| 国 名 | 最初の核実験 | 核保有宣言 | NPT加盟有無 |
|---|---|---|---|
| インド | 1974年5月 | 1998年5月 | 非加盟 |
| パキスタン | 1998年5月 | 1998年 | 非加盟 |
| イスラエル | 不明 | 不明 | 非加盟 |
| 北朝鮮 | 2006年10月 | 2006年 | 加盟・脱退繰り返し |
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※イスラエルはイスラム国家に対抗するため保有が確実視されるものの、公表しないまま曖昧な核政策をとっている。
※インド・パキスタンの核兵器保有に関して国連安保理・IAEAは非難したものの、両国がNPT非加盟国であったために効力は薄く、その後、2001年9月11日の米国同時多発テロが起こったため、タリバンとの対決にパキスタンの協力を必要とした米国が経済制裁を解除したことから、インド・パキスタンの核兵器保有が黙認されることとなった。
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核兵器を保有していたが放棄した国家
核兵器開発疑惑があったが開発を放棄した国家
| 国名 | 放棄した経緯 |
|---|---|
| リビア | 1990年代からウラン濃縮開発に取り組んでいたが、2003年12月19日化学・生物・核兵器計画の放棄を発表した |
| イラク | サダム・フセインの統治時代に核兵器開発を試みていたが、湾岸戦争に敗北したため、開発を放棄した |
核兵器開発疑惑国家
- イラン
- 2006年に核燃料サイクル技術獲得を公表。その後北朝鮮との軍事協力を通じ、遠心分離機による濃縮ウランの獲得に務め、IAEA等の非難を無視する態度を堅持していることから核兵器製造の疑惑が残ったままになっている。
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核兵器保有の実態
核保有の実態は次のように整理することができます。
| 1 | 核保有国 | 九ヶ国 | 米・露・英・仏・中・インド・パキスタン・イスラエル・北朝鮮 |
| 2 | 核開発疑惑国 | 二ヶ国 | イラン・シリア |
世界に核兵器を保有する国家が9ヶ国存在するうち、露・中・北朝鮮の3ヶ国が我が国に隣接している現実こそが脅威なのです。
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オバマ大統領プラハ演説と核なき世界
Q:2009年ノーベル平和賞受賞を記念してプラハで行われたオバマ米大統領の核廃絶に向けたスピーチ(演説)は大変印象的なものでした。困難な道のりですが、理想を掲げ、世界に対し、核廃絶に向けた理想を唯一の被爆国である日本が世界に訴え続けなければ、実現は覚束ないように思います。もちろんそのためにはテロやその他の非人道的兵器の使用という現実ともしっかり向き合うことが必要不可欠かと思いますが。いかがですか?
A:「核兵器」を考える時、その脅威が世界的な破壊、破滅に連結拡大するため「核攻撃を抑止」する働きかけ、あるいは「核のない世界」を実現する「理想」を切望する国際的な活動は必要不可欠だと思います。しかしオバマ大統領も演説の中で触れているように65年間使われなかったとはいえ、少しずつ保有国が増えている「現実」を正しく認識しておくことが重要です。
「究極の兵器」あるいは「悪魔の兵器」として扱われる「核兵器」に関して、日本とドイツは開発・製造する能力を持っているものの、これを放棄して「核武装」を回避してきました。特に世界で唯一の被爆体験を持つ我が国は「核武装」国家の3ヶ国に隣接しながらも「核武装を放棄した原則」を堅持して、世界から核兵器を廃絶させるメッセージを八月の広島・長崎の「原爆忌」のたびごとに発信してきたのは周知の通りです。
人類としての大きな視点に立てば「核のない世界」こそ、実現すべき「理想」なのです。しかし現実では日本は「核兵器の脅威」に直面しています。「核兵器」に関して我が国は、「理想の追求」と「現実の脅威対処」との両面に対応を迫られているという事実を正しく認識しなければなりません。そしてこの対応を誤らぬこと、それが広島・長崎の原爆犠牲者に対する慰霊につながると思っています。
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Q:現在「核武装」を声高に主張する方もいます。しかしそれはすなわち日本が現在加盟しているNPTから脱退することになります。経済的にも孤立し、いまや国際金融をはじめあらゆる経済活動で相互協力、依存関係が抜き差しならないところまでグローバル化している今日の状況では、国民生活にも破綻をきたすほどの大きな影響が出ることが予想されますが。いかがでしょうか?
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A:その通りです。唯一の被爆国として「核廃絶の理想に向けたイニシアチブを取る」だけでなく、資源小国で経済を貿易に依存する我が国は核武装を避けるべきなのです。
また2006年10月に北朝鮮が核実験を強行した後、我が国政府の一部で「核武装論」が取り沙汰された時、米国のライス国務長官(当時)が急遽来日し、「核の傘の実効性」を強調して「日本核武装論」を沈静化させたように、同盟国アメリカも日本の核開発を望んでいないでしょう。
NPTから日本が脱退することは同時に日米同盟の解消という事態に発展することが予想されます。当然世界中の非難が我が国に集中するでしょう。国際的に孤立し、活動拠点を世界に広げる日本企業への影響は甚大です。
また確実に予想されることは原子力発電に必要な燃料資源の確保が不可能になるということです。もちろん原油の輸入もストップし、為替相場、株価も大混乱、日本経済は破綻することも予想されます。影響は国内に止まらず、世界中でNPT脱退国が急増し「核兵器の拡散」に歯止めが掛からず、収拾不可能なほどの国際的な混乱に陥ることが懸念されます。
こうした現実を理解した上で、近隣諸国の核保有の実態、能力を分析し、核テロへの対応など現実に存在する「核兵器の脅威」にどう対処するかを喫緊の課題として議論しなければなりません。「普天間基地移設問題」で日本側の迷走によって、日米安保体制が揺らいでいる現在だからこそ「核抑止力」の在り方を真剣に討議し、日本国民の一致した考えを世界に示すべき時だといえるのです。
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Q:ありがとうございます。では次回は核廃絶に向けての理想と現実、具体的な解決策についてお伺いします。
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<第十二回:了> 聞き手・構成:小関達哉



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