告白


ざわつく教室の中で、教師-森口悠子(松たか子)が語り出すところから始まる。
彼女が喋っていても静かにはならない教室。だが、彼女のある告白が教室を一瞬止める。
それは「このクラスに自分の娘を殺した生徒が居ます」というものだった。
彼女は淡々と語り続け、犯行、そして犯人について語り出す…人々の「告白」によって、物語が動いてゆく。

観賞日6月9日

【87点】



今作は間違いなく素晴らしい作品。人々の有機的な行動・感情の移り変わりは、「誰かによって誰かが動く」という世界の流れを実感させる。


そして特徴的なのは、やはり人々の語りで紡がれる物語。

ただ、「告白」というのは形式によって、毛並みが少し違う。生徒を前に話す時、日記の時、手紙を書く時。

今作はそれぞれの感情の表れの描き方が絶妙。「告白」でも、必ずしも心情や真実を吐露しないというのはとても面白い。


















松たか子の演技が不気味で良かった。心の底では何を思っているのか、物語の上っ面だけを追っていては分からない。
観ている者に深く考えることを実行させる力があった。












今作のBGMには、映画用の曲ばかりで無く、メインはRadiohead渋谷慶一郎Borisなど既出の音源が使われている。

これらの音楽が物語と絡まるようで、ひじょーに良い。一体感がこれまで観て来た映画とは比べ物にならない。

もしもこれらの音楽が無かったらと想像するとゾッとする。物語はより不気味さ、陰鬱さを増して、だが観にくいものになるだろうからだ。

音楽がポップさを与えつつも、深さも与えているのだから。


















監督は『嫌われ松子の一生』や『パコと魔法の絵本』撮った中島哲也


爆発や雨の見せ方、カメラワークなど芸術的な面が多い。あまりにも異様さが目立つものさえもある。
これで原作再現度が目茶苦茶高いというのは、原作が如何に良かったのかと考えてしまう。






人間の自分勝手さ、都合の良い解釈、そして逃避。キレイごとは否定される。

この映画は、キレイごとがいかにして世界の安定を保つかと気付かせる装置なのだろうかとすら思わせるには充分な出来だった。