息もできない

サンフンという取り立て屋の男がいた。彼は常に「クソ」という言葉を使い、暴力的な取り立てをするが、その際には加減を知らず、仲間さえも恐れさせていた。そんな彼でも、甥のヒョンソンだけは可愛がっていた。ある日、ひょんなことから女子高生ヨニと喧嘩になったヨンサン。しかし、彼らは互いに何か引かれ合う部分を感じていた。

実は彼らは2人とも重いものを背負っていた。ヨニとの出会いから徐々に変わり始めるサンフン…彼は一体何に辿り着くのだろうか。

観賞日4月21日
【83点】




この映画は凄まじい。今作="衝動"というべきものかもしれない。


はじめは最初から最後まで単なる暴力的なシーンばかりかと思ったが、
ユーモアに富んだシーンや暖さが垣間見えるシーンなど、

暴力が作り出す憎しみ・哀しみの螺旋をテーマとしているにも関わらず、単なる鬱な映画では終らない。













主人公サンフンは監督・脚本・制作・編集を全てこなしたイクチュンが演じている。
今作を作るために家をも売りに出した彼は、凄まじかった。








歩く「暴力」サンフン。口を開けばクソなど汚い言葉ばかり。

実は暖さはあるけども、表現の仕方が分からない彼は不器用な人間だ。

映画を見ていくうちにその彼の不器用さも微笑ましく見えてくる。


そして、何処か本気の時の(演技時の)北野武を見てるかのようだった。



驚くべきは前述のように彼が監督・主演・脚本を全てこなし、しかもデビュー作であること。

そして家を売ってまで、ギリギリの低予算で製作されたこと。

これはもう作品そのものの力だと断言できる。















リハーサルをしないで作られた今作には凄まじいリアルがある。

各個の役どころはキャラが立っており、それが一体となって訴えかけてくる。
複雑な家庭環境、心情。こちらの心をキリキリと締め付ける。

ラストは正直辛かった。







荒削りなところもあるが、間違いなく傑作のひとつ。

また改めて韓国映画のもつパワフルな面をみる事が出来た。