13人の刺客


極悪非道の将軍の弟である成詔(稲垣五郎)が老中になり、悪政をふるうのを阻止するため、現在の老中が御目付の島田(役所広司)に暗殺を依頼する。
島田は11人の仲間を集めて、将軍の弟を参勤交替中の宿場で暗殺しようとする。しかし成詔の御用人である鬼頭(市村正親)が主を守るために立ちふさがる。

そして宿場町は修羅場となっていく。


観賞日9月29日



【70点】






見どころはラスト50分にも及ぶアクションシーン。




骨太です。


斬るという時代劇では当たり前の行為にも1つづつ刀の重みが感じられ、段々とボロボロになっていく主人公たちの姿はまさに圧巻。

構図が13対300という数字なので、本当に戦ったらこんな風に疲労で死にそうになるのでしょう。




まぁその骨太なアクションがこの映画の全てに近いわけですが…









問題は刺客が13人いるせいで、あんまり掘り下げてないキャラがいること。

だから戦闘中もこいつは誰だっけ?みたいなのが4人位いました。

それでも勝手に死んでくし










イメージとしては白黒時代の映画や『七人の侍』がひじょーに強い。


白黒時代は夜のシーンがリアルにけっこう暗くて観にくくて、照明が蝋燭の火のみで演技者の影が背後に大きく出来てるイメージがあります。


今作もカラー映画だけど、敢えて夜のシーンは観にくくしている印象を受けます。


逆に今見ると非常に新鮮。






途中で出てくる山賊みたいな男も『七人の侍』の竹千代そっくり…というか同一人物かのようなキャラ。


個人的にはもっと色々と変えてみても面白かった筈。











極悪非道な役の稲垣五郎をみるのは初めてですが、中々ハマっていました。

ホントにガチの「悪」役です。100%救えません。
どこかで日本版ジョーカーみたいな書かれ方をしていましたが、そこまででもない。


ヒース・レジャーのジョーカーは、どうなっても軸は崩れないですし、だからこその絶対悪。

稲垣の役はそれに近い狂気は内包してますが、まだ隙がありました。まぁそれでも日本の映画の悪役としては稀な「悪」でしょうか…

映画が違いますが、ホントの「悪人」はこっち(笑)











全体を貫くテーマとして「侍とは何か」がありました。



「主君に尽くすこと」が侍か、「正義・使命を果たすこと」が侍なのか。
そこが鬼頭と島田の構図に最後まで繋がる。

侍の生き方を問うことが、ひいては人間の生き方に繋がっていると考えられます。





山田孝之演ずる島田の甥もそこに悩んでいた。

分からないが故に賭博や女遊びに走ってはいるが、結局のところ満足できていない。

だから命を賭して戦う場に身をおいたのであろう。








様々な侍=人間の生き方、そして死に方がこの修羅場で交差し、散っていく…


武士道とは死ぬ事に見つけたり、という言葉がよく似合う泥臭い映画でした。