コクリコ坂から


1963年、横浜。
高校に通いながら下宿宿・コクリコ荘で働き、生活する少女・海(長澤まさみ)。

彼女が通う高校にある部室棟、「カルチェラタン」の取り壊しが持ち上がる中、それに反対する生徒達が騒動を起こしていた。
その中で、少年・俊(岡田准一)と海は出会い、距離を縮めていく…





観賞日

2011年8月23日







【70点】





賛否両論が相次いだ『コクリコ坂』。
遅まきながら8月のラストの作品として鑑賞。
















まず、ジブリ作品としての"らしさ"もみられた。



朝の支度や食事の描写はやはり秀逸。
いつも通りのジブリを感じさせてくれた。
夕焼けの坂を自転車で下るシーンもなどもそうか。



また部室棟「カルチュラタン」の中のカオスさ(魔窟の様相)は、
観ていてとても気持ちが良いというか、ジブリ独特の突き抜けたイメージを持っている。

ごちゃごちゃとした汚さは、どこもかしこも凝られていて、細かいところを観ているだけで全く飽きない。






















総じて観ると、前回の『ゲド戦記』のことを考えると、
"悪くない"作品だったと思う。

どうしてそうなってしまったかといえば、良くも悪くも波風の立ちにくい内容だったからか。






ストーリーもとくには気にならない。
むしろ出生の秘密やらなんやらはどうでもいいくらいだ。

メインはそういった背景とかではなく、淡い青春模様や若者の活力ある生活。
今までのジブリのような特別さではどうやらなさそうだ。



しかしやはり、前作でも存在した問題は引き継いでいて、
クライマックスに何も感慨が湧かないのは相変わらずか。というのもそこに行き着くまでが急と言うか、必然性を感じないというか…

観ていて、「今回わりと良いんじゃね?」と思っていた私の肩をガクッとさせたのがこのラストだった。


























だが
レビュー平均点数などの反応を見る限り、
人々が「ジブリ」に求めていたのは、"これ"ではなかったようだ。

主人公とヒロインの繋がり方やファンタジックな展開は希薄。





この映画でみられるのはあくまでもノスタルジー
「カルチュラタン」で繰り広げられる学生達の活力は、懐かしさなのだろうか。


















だが、ジブリに求められているのは、子供にも「わかる」ものではなかったのか。
はっきりいって、背景(60年代の雰囲気など)を知らないと分かりづらい。
というかその部分が全く無くてこの映画を観た場合、魅力に感じる部分があまりにも少ないのではなかろうか?

個人的には、予告編を観てもたいしてワクワクや「面白い!」という気持ちが湧かなかったのだが、そういった背景にあまりなじみが無い点も影響していそうだ。























今作では、明らかにターゲットとされている層がだいぶ上にも見える。
ちょうど『マイ・バック・ページ』を今年観ていたので、なんとなく空気的なものは感じた。

だが、そこまでしかない。宮崎五郎監督が作品に込めたかっただろう想いは、途中の俊の演説で伝わってくるが(「新しいものばかりに飛びついて 歴史を顧みないものに未来などあるか」のあたり)、そこだけの感が否めないというか…

他の部分はノスタルジーで占められてしまう。







だが横浜という土地柄、私にとってはそういったノスタルジーもプラス要素に働いたのは嘘ではないだろう。

中学校かなんかの課題で、横浜の美術館か歴史館かのめぐりをしたついでに横浜散歩をした際の風景。
丘から海が見えるあたりやらなんやらは今回の映画を想起させる。
そういう懐かしさは自分にもあったので、ある種のノスタルジーを感じたのだろう。






だがもし、そういったことも思い出に無かったら?
そう考えると、この映画が「ジブリ」映画を観たいと単純に思った人々をがっかりさせたのもわからなくはない。