町の古ぼけたビルで質屋を営むテシク(ウォンビン)。世間を避けている彼に尋ねてくるのは、客以外では隣に住む少女・ソミ(キム・セロン)だけだった。ソミはテシクをアジョシ(おじさん)と呼び、慕っていた。
ある日、ソミが帰宅すると見知らぬ男達が母親を捕らえていた。ソミの母親は犯罪組織の麻薬を盗んでいたのだ。そして彼女らは拉致されてしまう。
過去の事件の経験からテシクはソミを助けるために組織を追い始める。
非情なる闇社会が徐々に明らかになり、
そしてテシク自身の経歴もあきらかになっていく…
観賞日
2011年9月22日
【75点】
昨年度、韓国で630万人を動員し、韓国の映画賞を総なめにした映画。それが今作『アジョシ』だ。
過去に何かあった男とダンサーの母に愛されずに育った少女を描くこの映画。
やはり「暴力」という状況下における焦燥感や悲哀を描かせたら韓国映画はすさまじいものがあるとあらためて実感させられた。それも理不尽な展開があるからこそ生きてくる。
『息もできない』でも圧倒的に非情な現実が突きつけられていたが、今作でもそれは健在だ。社会の中に横たわる"黒く、暗い"世界のリアルさといったら。
戦闘における描写のリアルさもなかなかのものだ。
韓流ファンのおばさま方はこの演出も平気なのだろうか…と思うくらい中々エグい。
なにせ主人公テシクが戦闘のプロだけに殺し方を心得ているから。
斬ったり、刺したり、撃ったり…
『アウトレイジ』のようなぶち殺し映画を好むような方にもオススメできる仕上がりとなっている。さすがR−15容赦ない。
それでも630万人も動員できる韓国は中々緩い国のようだ。
日本だったらこのような描写をふくめると、「アニメでなければ」動員できないだろう。(アニメにたいしては日本人は耐性があるらしく、グロさがあっても観れるようだが)
グロイだけじゃあなく、カメラの動き、テシクの戦闘の動きも洗練されている。
「すげぇな…」と思わずぽかんと口を開けた。
フィリピン武術やインドネシア武術などを取り入れたテシクは必見。
敵の殺し屋とのナイフ同士での戦闘は、バイオハザード4のレオン対クラウザーを思わせるほどの熱戦。
手に汗握るとはまさにこのことだ。
その物語を支えていったのがメインの二人の役者だ。
中でも主演のウォンビンは、圧倒的な演技力で魅せてくれる。
最初は「暗い過去を持っていそうな近寄りがたい」男であり、後半は「大切なものを失わないために手段を厭わない」男となる。
特に後半のウォンビンは凄まじい。鬼だ。
ただ少女を救うために敵を殺し続ける様は、さながら殺人機械のようでもあるがその奥底には少女を想う"親心"を感じさせる。
正直このような演技をウォンビンがするとは全く思っていなかった。
これまでの彼のイメージは、イケメン・優男みたいなもんで、恋愛系の感じの役者だと(勝手に)思っていた。
だが今作では上記の通り、華麗(?)に泥臭く変身し、頼れる「アジョシ」となった。
ウォンビンの映画といっても過言ではないだろう。
さらにこの映画を彩るのは、さらわれる少女ソミ役のキム・セロンだ。
最初はただ明るい少女かと思われたが、その表情のうしろにあるものが徐々に明らかになると、時おりみせる台詞の無いシーンでの表情が際立つ。
若くして、この境遇を理解し、その悲哀を表情で演じてみせている。
今後が楽しみな新人だ。
予告編はコチラ↓
http://www.youtube.com/watch?v=Qcsj1S8GnDk
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