カイジ2〜人生奪回ゲーム〜

多額の借金によって再び地下の強制労働施設に送られたカイジ藤原竜也)。しかし地下で仲間の助けを借りることによって、カイジは2週間の猶予付きで地上へと戻った。

カイジは自分を助けてくれた仲間達を救うために全員分の借金2億を地上で稼ごうと画策する。そんな中、かつてカイジに敗れ失脚した利根川香川照之)と出会い、”沼”と呼ばれるパチンコがある裏カジノの情報を知ることになる。

だがそこはカイジに対して対抗心を燃やす一条(伊勢谷友介)が管理するカジノだった…



観賞日

2011年11月19日




【68点】








人気漫画「カイジ」の映画化第二弾。
前作は、鉄骨渡りやEカードなどがメインだったが、今作は巨大なパチンコ”沼”が主体の物語だ。

まずことわっておきますが、私は原作未読、アニメのみ見てます。


















アニメと今作にはいくつか決定的な違いがある。



・映画最初のゲーム(チンチロ)が原作だともっと長い
映画は尺の問題があるのでチンチロは導入のみ…しかし、これはしょうがない。
(ほんとはもっと班長の怪演を見たかった)
そのせいでテーマであるはずの「友情」が薄れて、全体として説得性を欠いた。







カイジの前に現れるのが劇場版だと利根川
原作だと最初にカイジエスポワール号に導いた遠藤がカイジとともに沼に挑みますが、今作では利根川になっている。しかし裏カジノに行く流れなどは原作よりも、利根川を使った映画版のほうが自然で、後の展開も映画版のほうが自然になっている。

原作知ってると、「なるほど…」と原作で力押ししたあたりがしっかり直されている点にこの映画の”良さ”を感じる。さすが原作者が脚本に絡んでいるだけのことはある。







・前作で大きな役割を果たした石田のおっちゃんの子供(吉高由里子)が娘に変更されている。
原作では”沼”攻略に関係のない石田の息子だったが、今作ではその設定を変え物語の本筋にガンガン絡んでくるようになっている。






・新ゲーム;「姫と奴隷」ゲームの追加
この新ゲームにはどちらかというと否の意見が強いが、個人的には序盤でそれぞれのキャラクターがわかり、パチンコでは少なくなる心理戦の要素を少しでも本編に入れようとする試みとしては面白かったと思われる。


























尺の問題上、展開が駆け足になるのはあたりまえだがいくらなんでも駆け足過ぎる気もした。特に”沼”攻略の前半は早すぎて、原作見てない人は??となってしまう。
スマステーションの月イチゴローのコーナーで稲垣吾郎がパチンコ台に座っているのがカイジじゃなくてもいいんじゃない?といっていたが、そうなるのもこの速さでは当然かもしれない。





アニメではとにかく長い尺でこの”沼”パチンコとの死闘が描かれるので、最後のほうになってくるとカイジじゃなきゃ無理だった感が増すし、あの「奇跡」も彼の強運だからこそだと思える。



だがこれではあまりにもスムーズすぎてカイジじゃなくても…と思わせてしまうわけだ。






アニメでの名台詞もタメがないせいか、少し面白さが薄れてしまっていた。そこはもっとタメさせてから言ったほうが断然凄みも増したはず。











ただ、この”沼”攻略は割と原作に忠実かつしっかり実写で表現されていたのでスタッフ凄い!と純粋に思える出来。とくに”沼”の風貌はアニメ版よりもより凶悪にパワーアップし、登場シーンからして楽しい。

スケールが小さくなった、パチンコ台で画が動かないから地味という評価がTVやネットで伺えたがその意見こそ小さい話。



たかがパチンコに打つ側と店側が死力を尽くすというなんともいえないシュールさとしかし最後にはアツくなる展開がこのパチンコ編の魅力なのだから。


























役者陣はかなり良かった。只1人を除いて。




まずカイジ役の藤原竜也は安定のカイジっぷり。容姿の面ではイケメンすぎるきらいもあるが、叫ぶ・弱気になるなどカイジには欠かせない要素をしっかり演じきっていた。

利根川を演じた香川照之はもはや何も言う必要がない。まさに名優。
陽気なおっちゃん坂崎を演じた生瀬勝久は、原作のおっちゃんを見事に再現し、さらに生瀬勝久自身による新たな魅力も与えた。けっこう彼がコミカルで笑わせてもらいました。








さらに今作でのカイジのライバル一条を演じた伊勢谷友介は素晴らしかった。
原作でもオーバーなリアクションと毒舌でぶっ飛んだキャラだった一条を、まさに全身を使って演じていた。
個人的には髪がくしゃくしゃになっているときの一条が最高。














問題だったのは吉高由里子






とにかく棒読みすぎる。ときどき台詞が入るのだが、他のキャラクターのアツい状態に比べて冷めすぎていて一気につまらなくさせる。はっきりいって物語の流れを寸断させていた。もったいない。

月9などを見る限りでも彼女のキャラクター自体が元々そういうものなので、棒読みっぽくなるのは想像がつくが、それにしても酷すぎる。1人だけカイジという作品世界から逸脱した(悪い意味で)感じになっている。









他の映画やドラマではそこまでうざったく感じることはなかった(というかむしろ自然な演技に見えていた)が、今回はとにかく不快感しか覚えられなかった。
そのため、75点は考えられる映画を68点まで貶めてしまった。

吉高由里子自体は、試写会で「クズでーす」と発言したりとお茶目な面も見せている。むしろ本人自体のほうがキャラとして面白い。
完全にキャストミスだったのではないか…

















説得性が薄れてしまったので、
ゲームに対して知恵を絞り攻略する過程を楽しむ映画になっている。

だが、原作の”沼”攻略のアツさはしっかり描かれているので、原作ファンにもオススメできる作品となっている。