永遠の僕たち

交通事故で両親を失い、臨死体験をした少年イーノック(ヘンリー・ホッパー)は、まるで遺族のようなふりをして他人の葬式を覗くのが趣味となっていた。そんな彼は、ある日葬式でアナベルミア・ワシコウスカ)という少女と出会う。イーノックに興味を持ったアナベルは彼に近づく。
しかし実はアナベルは余命幾ばくかを宣告された癌患者であった。イーノックはこれまで唯一の友であった、彼にしか見えない日本兵の幽霊・ヒロシ(加瀬亮)とアナベルとの仲を語り合う。そしてイーノックアナベルは、ヒロシが見守る中心を近づけていく…


観賞日

2011年12月29日





【70点】




第64回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門のオープニング上映作品。


どことなくふんわりとした空気感に包まれた、少年少女の心の成長の物語。
簡単に言い表せば、そういう映画だ。

映像の空気感だけでみれば、『わたしを離さないで』が近い。音楽のムードもそれに近い。

病気ものだが、実際フォーカスがあてられているのは少年少女の美しく透明感のある恋愛だろう。
どうやら『グッドウィルハンティング/旅立ち』、『MILK』など知られるガス・ヴァン・サント監督が得意とするところらしい。
















この映画で最も注目されるのは、役者陣。

昨年逝去した名優デニス・ホッパー(『イージー・ライダー』、『ウォーターワールド』(ラジー賞とってるけど(笑)他多数)の息子、ヘンリー・ホッパーが主役のイーノックを演じる。
今作がプロデビューとのことだが、しっかりしている。それは彼が父の背中を見て育ち、父との別れも経験したからだろうか。
さらに『アリス・イン・ワンダーランド』でアリスに抜擢され、『キッズ・オールライト』でも好演をみせたミア・ワシコウスカの演技も見逃せない。

2人の相乗効果でイーノックアナベルのみずみずしさがことさら強調されている。
若さからくる不安定な感情の揺らめきも見事。












この2人も勿論注目だが、日本人としては加瀬亮が見逃せない。
カミカゼ特攻隊の服に身を包んだヒロシを全編英語で演じるわけだが、決してイロモノにはならず画面に馴染んでいる。
映画自体の雰囲気がどことなく不思議な感覚に包まれているせいもあるだろうが、『それでも僕はやってない』、『硫黄島からの手紙』、『アウトレイジ』など様々な役をこなしてきた加瀬亮の力をまたしても実感させられた。

主人公の少年、イーノックを見守るというポジションもおいしい。
口数が多いイメージがないだけに、「見守る」というポジションが加瀬亮の力が絶対生かされている。

また、彼の役割は死を意識させることにあるとも思われる。





死を体験した少年と死の迫った少女、死んでいる男。
3つの視点、この3人のアンサンブルが面白い。

死というものを前提としてるからこそみずみずしい生があるのだと私たちに示唆してくれているようだ。














しかし今年これまで見てきた闘病映画と比べるといかんせんフックが無いイメージがある。
出演者が悪いわけでもないし、映像が悪いわけでもない。

でもどうしても心が揺さぶられるほどの感動を受けなかった。
90分という上映時間も関係しているのかもしれないが、どうも起伏のなさが影響してるのかもしれない。


90分は相当短いはずなのに、昨日の2時間の『50/50』よりも長く感じてしまった。
まさかの睡魔に襲われましたが、何とか何とか耐えて90分乗り切った様相。









確かにクオリティの高さは実感できるが…ぐっと来るものや意外な部分がなければ涙腺をグッと緩ませることができないのもまた事実だ。良い意味でも悪い意味でも裏切られはしない。

ただししっかりと起った出来事を説明してくれる映画ではなく、間あいだに起こる出来事を想像するということを観客に求めてくるので受け身な鑑賞はお勧めできない映画かもしれない。
(観客に判断を委ねるからこそ、演者の表情や行動の演技が存分に生かされるんだけれども)




個人的にはラストカットには、物語の流れから考えて思わず納得させられたが。


予告編あり↓
http://www.youtube.com/watch?v=RcLPPfUzU1w