ベルセルク 黄金時代篇I 覇王の卵

ガッツは百年戦争に揺れる地で傭兵として各地を渡り歩く、巨大な剣を持つ勇猛果敢な剣士。
特定のしがらみに囚われたくないと孤独をきめる彼に目を付けたのが、傭兵集団”鷹の団”のリーダー・グリフィス。
大いなる野望を秘めたグリフィスは、自らの夢を叶えるためにガッツを決闘で制し、鷹の団に引き入れようとするのだった…



観賞日

2012年2月11日


【65点】


(最初に言っておきます。
65点とかなり低めな点数つけてますが、これは作品の性質上しょうがなくこの点数に落ち着きました。詳細は後程)







20年以上紡がれ続けてきた壮大な物語を持つマンガ、ベルセルク
今回の映画は、その原作における過去編を描いたものとなる。

どうやら原作自体では、始まりから少し経ったところで回想する形になり、
そこから今作の黄金時代篇に突入するらしい。





















だからだろうか、私はマンガもアニメも未見だけにどこかおいてけぼりにされた感もあった。
ベルセルクの名前はもちろん知っていたし、主人公とその世界観もある程度知っていた。
それだけに私のイメージと今作のギャップは大きいものだった。



竜殺しの剣(「ドラゴン殺し」)を持つガッツが、怪物と鮮烈な激闘を繰り広げる…そんなイメージだった。

しかし今作は、騎士・剣士同士の戦いに主眼が置かれる。
というか戦いよりも、「これから悲劇へと向かうであろう物語の幕開け」と言った方が適当かもしれない。
さらに言えば、絆や夢といったところに焦点が置かれる。






















問題は…
この映画がエピソード0のパート1でしかないこと。

しかも全く起承転結の体を成していない。
メインディッシュが出る前に終わってしまった印象だ。
こういったサーガ体系の物語では、中途半端になるのはしょうがないことだ。

しかしそれならそれで今作の中だけでもきちんと最後に盛り上がりを作るべきだったと思う。
あらすじが異様に短いのもそのためで、これ以上突っ込んで書くと映画の大半を記しかねないと感じたからだ。





折角ベルセルクサーガの序章から順々にやっていこうというプロジェクトなのに、
これでは台無しだ。というよりも私のような初心者には印象が悪すぎる。













絆・夢といったこのエピソードのテーマすらも置いていかれる。
それは、結論・結末が存在していないから。
テーマが提起されるのは良いものの、そのまま。

これではどうしようもない。せめて前編・後編の構成ならばなんとかなっただろうに。
まさかの3部構成で、第1部が盛り上がらなくなってしまった感が否めない。

ストーリー自体に関して文句はないだけに残念すぎる。
これが今作の評価点数が低い理由にあたる。

























CGを使用した映像も圧巻で、序盤の城攻めの際には手書きではなかなか出来ない、大人数の戦闘をうまく表現している。
ベルセルクという大作の名に恥じないスケール感もばっちりだ。

戦闘シーンは息をのむ迫力で、劇場のスクリーンとの相性も上々。







ただ、戦闘以外のシーンで主要人物が立っている描写もCGを使用したのには疑問符。
ツルツルした質感の顔に、影を付けただけではどうしても表情に面白味が出ない。

アップ時はしっかりと書き込みだが、その書き込みとのギャップが激しすぎる。
確かに劇場版の作画は金も時間も膨大にかかるとは承知しているが、上映時間が短い以上、
表情で魅せる工夫は欲しかったところ。

(役者を映せば演技がとれて常に表情がにじみ出る実写とは違って、常に意図的に表情を出さねばならない(人工的に作らなければならない)のがアニメの難しさでもあるが)



















高く評価されているシリーズだけに、ストーリーが面白いのはもちろんのことだろう。
(実際、今作も面白かった)

今後は、その面白いストーリーをいかに劇場用として整理し、観客へと提供できるかに期待したいところ。
まだまだ始まったばかり。改善によってはさらに化ける。

日本の、名作ファンタジーサーガ映画と海外でも呼ばれるようなシリーズ構成になってほしい。







予告編はこちら↓
http://www.youtube.com/watch?v=N-9vM79FFWQ