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2008-07-06 このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

今日三省堂神保町本店で販売されていた同人誌をご紹介します。こういう出版業界に対する評論を、業界の外部でやっている人たちがいて、コミケとかで評論集が販売されていたりしているって、これまで全然知りませんでした。同人誌と言えばコミックゲーム二次創作ばかりかと思っておりましたが、こういうものはちょと面白そうなので、今年は15年ぶりぐらいに夏コミに行ってみようかと思います。

さてこの本は、2006年の9月にどこかの会場でおこなわれた鼎談イベントを収録したもののようです。参加者は、自称出版評論家の大内明日香さん、コミュニケーション評論家?の羽山大輔さん、日本経済新聞川崎支局長の平片均也さん。内容を一言で言うと、「新刊書店顧客を向いていないからダメなんだよ。ブックオフを見習え」というものです。

この本が挙げるブックオフがすばらしい点はこちら。

  1. 店にある本すべてが一度は売れた本である(新刊書店にあるのは、「書店が売りつけたい本」であって、そこには顧客目線が入っていない)
  2. 平積みが無い(つまり品揃えが豊富
  3. 店舗ごと地域ごとに品揃えに個性が出る(新刊書店はパターン配本だから金太郎飴だ)
  4. 棚設計が簡潔である(基本的に一般書・文庫新書マンガの四つの区切りしかなく、あとは著者の五十音順
  5. 古本漁りが手軽に楽しめる(旧来の古書店は入りづらい)
  6. マンガを立ち読みできる(新刊書店はシュリンクしてるから読めない)
  7. 会員カード、割引などサービスが豊富(※注:ブックオフがまだいけいけだった2006年当時のお話です)
  8. 深夜営業がデフォルト

同じくこの本が挙げるブックオフが出版業界に嫌われる理由。

  1. 出版業界の一番美味しい部分であるところの「スケールメリット」を食ったから

確かにその通りなんです。でも残念ながらそれだけではないんですよ。それだけだったら、ここまでは嫌われません。

まあ話をされている方が、業界については基本的にはそんなに詳しい方ではないので、色々とトンチンカンなことをおっしゃっていたりはしますが、逆に業界の内部事情に詳しくない一般の方から「客観的」に見ると、こういう評価になるのだな、という意味では、勉強になる一冊でした。

ちなみに私の意見はこうです。新刊書店は、ブックオフに見習ったほうがいい、というのは、全くその通りだと思います。これは昔このブログに同じようなことを書いた記憶があります。ただし、それは顧客優先主義という意味ではありません。

今の新刊書店が顧客目線をもっていないかというと、それは大間違いで、間違いなくブックオフよりも危機感もあるし、色々とやろうとしています。ただし、店頭における顧客目線での改革をやろうとしているのは書店だけであって、取次、出版社については、その限りではないというのが現実です。書店的には残念なことですが、世の中の変化についていけていない業界三者の代表として、その流通最前線である書店が、大内さんのような一般ユーザーからは「顧客を向いていない」と評価をされてしまっているわけです。実際のところ、業界三者の協力なくしてブックオフに対抗することはできないでしょうから、その評価は甘んじて受け止めなくてはなりません。

ただ、そもそもブックオフは顧客優先主義ではなく、従業員第一優先の会社であり、店舗です。実はそれこそがすばらしい点なのですけど、現在の新刊書店で従業員優先主義の企業はほとんどありません。その余裕もないからです。

ブックオフに見習うべきは、私は以下の3つだと思っています。

  1. 従業員優先主義と教育の最重視
  2. 誰にでもできる簡単なオペレーション
  3. 無駄なことは一切やらない、合理的でシンプルな店舗設計

言うは易しなので、私もブックオフに実際にはいりこんでオペレーションを体験に行ってきました。機会があったらそのとき感じたことを別の機会に書いてみようかと思います。

diachronicdiachronic 2008/07/07 17:14 書店業界ものの同人誌では、「時刻堂」さんの『古本ぐらし』シリーズが素晴らしいですよ。vol.11まで出ています。特に『スーパーブックオフマニア』は必見。120頁近い厚みに、ギッシリと内容が詰まっています。この記事の同人誌の中でも言及されているはずなので、ご存じだと思います。今年の夏コミにもサークル参加されるそうです。

hidecrhidecr 2008/07/07 20:51 いままでもさんざん言われてきたことで特に目新しくもないが
1の店にある本は一度は売れた本だから顧客目線だというのはどうなんでしょうね
書店に並んでいるのは売りたい本だというのは判りますが
その書店の思惑にのせられて多くのお客が本を買っているわけです
買ってはみたが たいして面白くないからすぐ売るってことはよくあることでしょ
話題先行の面白くない本はすぐ中古として出回ります
人気のある面白い本は転売目的で売るんじゃないかぎり
手元に置きたいという人も多く存在して 中古市場に出回る絶対量が不足して高値になることもあります
結局中古屋に並んでいるから人気のあるいい本で顧客目線の品揃えというのはすこしズレているんじゃないかな

chakichakichakichaki 2008/07/07 23:09 >diachronicさん
情報有難うございます。時刻堂さんのところを訪ねてみます。

chakichakichakichaki 2008/07/07 23:11 >hidecr
コメントありがとうございます。私も同じことを思いました。結局顧客目線で品揃えするから、たくさん売れる本は平積みになってしまうんですけど、そういうところもあんまり評価されてないみたいですね。

chakichakichakichaki 2008/07/07 23:12 >hidecrさん
すみません、敬称抜けてました。ごめんなさい。

sumimarosumimaro 2008/07/08 00:00 矢張り取次会社の、取次業界内での力の具合もあるのでしょうが配本がどうにも・・・
本が入荷しない事だけを、売り上げが上がらない理由にしてしまってはイカンのでしょうが。
常連のお客様の読書嗜好が解って来たら品揃えを変えてみたり、お客様の顔を名前を一致させたり。
そう言う細やかな気配りが出来るのは新刊書店の強みだと思っています。
古書店は、能動的に本を集めたりは出来ない(店間移動があるかもですが)ですし・・・

とおりすがりとおりすがり 2008/07/08 08:30 取次のパターン配本に比べたら古本屋の方がマシですからね。
ブックオフに押されるのも無理はないかと。

古本屋店員古本屋店員 2008/07/08 10:43 ブックオフ、あの値段シールだけはどうにかならないものか
コンビニ本やハーレクインなどの、表紙にビニール加工がされてないものだと
シールの粘着力が強すぎてはがすときに表紙が破れてしまう・・・
音楽業界のCCCD然り、DVDのコピーワンス然り、
不正抑止のために、一般客に不便さを強要するシステムというのはいかがなものか

chakichakichakichaki 2008/07/08 11:59 >sumimaroさん
新刊の売上比率が高いジャンルに関しては、もう配本量=売上になってしまうので、さすがに厳しいですが、これだけ年間点数が多くなってくると、新刊でなくともうまく売れば売り伸ばせる知られていないいい既刊もいっぱいあります。そういうタイトルをいくつ作れるかが新刊書店のこれからの課題になるんじゃないかと思います。

chakichakichakichaki 2008/07/08 12:02 >古本屋店員さん
これまで値段シールには注目してませんでしたが、古本屋業界ではシールというのは珍しい形なのでしょうか?確かに鉛筆で値段書いている古本屋さんはよく見かけますが…。

古本屋バイト古本屋バイト 2008/07/08 12:51 ブックオフではありませんが,あるローカルな古本屋チェーンでバイトしてる学生です.

古本屋には万引き商品の持ち込みが非常に多いです.
「新刊屋で万引き→古本屋で売却」の流れは以前からあったのでしょうが,
ブックオフを始めとする古本屋チェーンの隆盛がそれを促進していることは
間違いないでしょう.
これもブックオフが嫌われる理由の一つではないでしょうか.

とはいえ古本屋が悪いわけではないんですけどね.
そもそも万引きする奴が最も悪いことは明白ですから.

元ブックオフ店員元ブックオフ店員 2008/07/09 00:50 >1. 店にある本すべてが一度は売れた本である

これは明確に間違いですね。
アダルト系の書籍は独自の流通ルートがありますし、倒産した出版社の在庫本や、店仕舞いした書店が抱えていたムック本など、中古とは呼べない商品も結構店頭には混じっていたりします。

それと在庫に関しても、書店でのベストセラーの多くは新古書店でもバックヤードで大量に死蔵されていたりします。
売り場のスペースに余裕があるなら平積みだろうとセット販売だろうと、出来る限りの方法で店頭に並べちゃいますしね。

しかし、どの中古販売業でも同じ事ですが、上記のような特殊な仕入方法を除けば、お客さんに売って貰った本しか店頭に並べる事は出来ません。
僕が辞めてからだいぶ経った後にブックオフ本部がコミックスのセット販売をネット上で始めましたが、歯抜け部分は新品を書店取り寄せしてカバーするという無茶苦茶な方法を採ってました。

つまるところ、たまの掘り出し物探しや、新刊書店では扱えなくなった書籍の入手には有効な業務形態ですが、在庫の偏り方は新刊書店の比じゃありませんし、マイナー出版社の書籍はお客さんから問い合わせて貰ったところで仕入れる手段すらありませんからね(笑)。

通りすがり通りすがり 2008/07/09 01:36 一番嫌われる理由が草加企業って落ちではないのでしょうかw

hauhau 2008/07/09 10:44 やや関係のある業界にいた者です。
ぶっちゃけた本音に切り込んで考えてみました。

■ブックオフが嫌われる理由。
1:書店は、自分の店とほぼ同じ商品を、圧倒的に安く仕入れて半額で売ってるのが我慢ならない。利幅が羨ましい。
2:書店は、万引きの原因になっているのではないかという疑念が消えない。
3:著者・出版社は、自分たちの本が読者とブックオフの間で何度回転しても一銭も入ってこないのが我慢ならない。
4:著者・出版社は、自分たちの本で自分たちに金を払わずに派手に商売しているのが気に入らない。

歯に衣を着せなければ、こんなところじゃないでしょうか。
2を除けば、つまり「ブックオフは出版業界のフリーライダーだ」ということで嫌われてるのだろうなと。

出版文化(笑)を守るコストを支払うという意味では、
「ブックオフ等の新古書店の売上の一部→出版社(・著者)→卸価格わずかながらも値下げ→書店利益率に還元」
という流れが仮にできれば、上記2以外の理由が消えるので、嫌われることもなくなるでしょう。

さあさあ 2008/07/09 13:21 書店の再販売価格維持契約が古本との競争力を下げているんだけど、日本だと古本販売で一部金を著作権料とかで吸い上げる方向に持って行くことはあっても、書店の再販売価格維持契約を一部または全部を解除していく方向には行かないのよね。
ぶっちゃけ、私は読みたい本は図書館で、目で見て買う場合はブックオフ使ってます。雑誌はコンビニだし・・・前に書店行ったのって・・・半年くらい前かも。

aaaaaa 2008/07/09 13:27 >ブックオフに見習うべきは、私は以下の3つだと思っています。
> 1. 従業員優先主義と教育の最重視
> 2. 誰にでもできる簡単なオペレーション
> 3. 無駄なことは一切やらない、合理的でシンプルな店舗設計

1.2.ですが、はっきり言ってうるさいし、どうでもいいような内容だし、変なくじやって当たったら「ばんざ〜い!!」とか宗教じみててキモイ。さすが層化といったところか。
3.は、本屋の並べ方でも特に迷うことはないですけどね。平台だと表紙買いできるし。

tooltool 2008/07/09 14:13 地方の文科系フランチャイズ店員です。グループ内にブッコフと新刊書店両方あります。
で、ブッコフから新刊大量or全冊セットの持込があると新刊書店に照会があります。年間10件ほどその経由で警察沙汰かブラックリスト行きになりますね。
グループ外の新刊書店は感知し得ないので倍くらいはその手の被害の受け皿にはなっているでしょう{市内に同規模の新刊書店が四軒うち二軒が内のグループ}

奈々氏奈々氏 2008/07/09 15:58 >従業員第一優先の会社

ん?どういうこと??
時給が高額とか、福利厚生がしっかりしてるとか、そういうこと?

元ブコフ元ブコフ 2008/07/09 17:04 従業員第一主義は、端から見ればそうなんですかねぇ。何処を見てなのか?判らんですが。
少なくても殆どの店では店長に気に入られなければ時給は上がらないし、
不正を正そうとすれば揉み消されるし、福利厚生なぞ聞いた事無いし、有給付いてるのに
会社の方からは一切言って来ないし・・・・
真面目にやってる社員は勿論給料が上がると言うか、大きい店に異動になって
売上は上がるので給料が上がる仕組み。でも余りにも少ない気がする

だいきちだいきち 2008/07/09 18:25 市場原理が導入されてるゲーム業界は、新品と古本が同居してる。
最近はツタヤの一部店舗で、新と古の本が同時に販売されてるんだし、どんどん新刊書店が売れ筋の古本だけを売ればいいじゃん。

chakichakichakichaki 2008/07/09 23:04 >古本屋バイトさん
ブックオフを始めとする古本屋チェーンの隆盛が「新刊屋で万引き→古本屋で売却」の流れを促進していることは、これは嫌われる理由の筆頭にあげてもいいくらいです。おっしゃるとおりだと思います。

chakichakichakichaki 2008/07/09 23:10 >元ブックオフ店員さん
ご指摘ありがとうございます。その通りですね。一応この同人誌にも特殊ルートからの仕入については触れられていて、そういった例外を除き、と注意書きしていました。倒産出版社ではなくても、某中堅版元T書店などは返品で大量に余ってしまった在庫をブックオフに流したりしています。

chakichakichakichaki 2008/07/09 23:14 >hauさん
ブックオフが嫌われる理由について、2と3は正解ですね。4は3とほとんど同じなので、4もそうだと言えると思います。でも1について、利幅がうらやましいとか思っている書店はほとんどいないんじゃないかなぁ。
「ブックオフ等の新古書店の売上の一部→出版社(・著者)→卸価格わずかながらも値下げ→書店利益率に還元」というスキームは、実現したら画期的ですが、100%あり得ないんだろうなぁと思います。

chakichakichakichaki 2008/07/09 23:17 >さあさん
日本でも間違いなく本の再販制度はなくなる方向に行くと思いますよ。もう時間の問題だと思います。ちなみにうちの会社では再販制度はなくならない、と思っている人は一人もいないです。

chakichakichakichaki 2008/07/09 23:18 >aaaさん
まあ、好き嫌いありますよね。あのスタイルは…。

chakichakichakichaki 2008/07/09 23:20 >toolさん
すごい、照会連絡してくれるんですね。親切だ。

chakichakichakichaki 2008/07/09 23:23 >奈々氏さん、元ブコフさん
ブックオフの従業員優先主義は、待遇にはあまり反映されてませんね。これは小売業全般に言えますが。
どちらかというと、店舗の運営思想のほうに偏って出現していると思います。

chakichakichakichaki 2008/07/09 23:26 >だいきちさん
どんどん新刊書店が売れ筋の古本だけを売ればいいじゃん、と私も思うのですが、そこはまあ色々と事情があって、なかなか難しいですね。新刊書店は、そもそも取次との契約書の中で、新刊と古本の並列展開を禁止されていて、それをやると契約違反になってしまうのです。

うーうー 2008/07/13 21:37 新刊書店に送るはずの数百冊の新刊本を運送屋がそのまんま古本屋に流してた事件があったと
噂を聞いた。その古本屋がブックオフだった気がする。
本当かどうか知らないけどもし本当だったら被害にあった書店は相当頭にきてると思う。
というかありえないですよね。デマ?

chakichakichakichaki 2008/07/14 15:10 >うーさん
デマじゃないですよ。明屋書店の中野店で一昨年実際に発生した事件です。正確には、新刊書店の送るはずの本ではなく、新刊書店から返品されるはずの本を、横流ししたという事件です。運送屋は高田馬場のブックオフに売却していた旨を自供しています。

おんせんここあおんせんここあ 2009/04/25 13:45 元書店員・取次ぎ
出版社・取次ぎ・書店の既存業者から、ブックオフが嫌われるのは再販委託制度の循環の輪からハズレるからではないでしょうか。
従来の古本屋の枠組みでやられる程度なら問題もないと思うのですが(それでも問題はあったのですが)チェーン店舗という組織だったものが出来上がったことが大きいのかなと。

大陸書房倒産の遠因ともなったともいわれている、スーパーマーケットなどに流通した商品がそのまま書店の返品に流れて再販委託制度を逆手に取った詐欺被害がみられたとまことしやかに騒がれたものです。ある程度の真実味もある話だったので真贋は半分程度とは思いますが、ブックオフが古本市場だけでなく新刊市場に与える影響は再販委託制度の悪用につながるからという懸念が払拭できないからだと思います。
以前ブックオフと新刊書店グループが提携する話が出ましたが、業界としては再販委託制度を悪用する恐れが多分にあるために、どのような内容の提携なのか、業界紙では提携の効果や中身を疑問視するような調子だったと記憶しております。
そういう意味では、出版業界としてはマンガ喫茶なども快く思っていないフシもあります。