エステゼリーに着衣入浴してみました

私はこれまで、入浴剤というものをほとんど使ったことがないのですが、たまには新しいことにチャレンジしてみるのもいいかな、というわけで、先日、入浴剤入りのお風呂への着衣入浴にチャレンジしてみました。

私が試してみた入浴剤は、株式会社ユーア化学研究所が製造して、株式会社タフリーインターナショナルが販売している、「エステゼリー」という製品です。色と香りのバリエーションとして、バラ、オレンジ、はちみつ、ミルク、ラズベリー、マンゴー、青リンゴなどがあるのですが、私が選んだのは青リンゴです。

紙製のパッケージを開くと、その中には粉末が入った二つの袋が入っていました。小さいほうの袋には「融解剤」と書かれています。浴槽の3分の1ぐらいのお湯に入浴剤を入れてかきまぜると、みるみるうちにお湯がゼリー状になります。体を沈めてみると、お湯とはまったく違う感触です。干潟の泥に入浴したとすると(私には経験がありませんが)、こんな感じかもしれない、というような感触です。

エステゼリーが付着した衣服は、ものすごく重くなります。普通のお湯で着衣入浴した場合でも、お湯から出た直後は衣服がかなり重く感じられるわけですが、エステゼリーから出た直後の衣服の重さは、特筆に価します。ポケットの中にたまったエステゼリーは、いつまでもたまったままになります。

エステゼリーは、ゼリーとは言っても決して固体にはならないみたいです。とは言っても粘度はものすごく高いので、そのままの状態では排水口から排水するというのはほとんど不可能のように思われます。しかし、心配は無用です。付属している融解剤を入れてみたところ、普通のお湯に近い状態に戻りました。

エステゼリーは、かなり泥の感触に近い入浴剤ですので、wetが好きな人だけではなくて、messyが好きな人にもオススメです。室内で本物の泥に入浴しようとすると、準備や後始末が大変だし、衣服に付着した泥を落とすのは困難です。でも、エステゼリーなら、準備も後始末も簡単だし、衣服は、洗濯すればもとどおりになります。

「女の子ものがたり」の着衣入浴シーン

西原理恵子さんの自叙伝的なマンガを原作とする「女の子ものがたり」という映画の中に着衣入浴シーンがありましたので、報告しておきます。

この映画の主人公は、作者自身が投影されている高原菜都美という34歳の女性です。マンガが描けなくなってしまった菜都美がそのスランプから脱出するまでの過程を追うというのがストーリーの大枠ですが、彼女が自分の小学生時代と高校時代を回想するシーンが大きなウェイトを占めています。彼女の小学生時代を演じているのは森迫永依さん、高校生時代を演じているのは大後寿々花さん、そしてマンガ家になった彼女を深津絵里さんが演じています。

菜都美には小学生のときに出会った二人の親友がいます。きみことみさです。この二人も、小学生時代と高校生時代とで違う女優が演じています。小学生時代はきみこが三吉彩花さんでみさが佐藤初さん、高校生時代はきみこが波瑠さんでみさが高山侑子さんです。

問題の着衣入浴シーンは高校生時代を回想するシーンの中にあります。菜都美ときみことみさは山の中で道に迷います。彼女たちは山の中で一夜を明かし、翌日、通りかかった軽トラックの荷台に乗せてもらって下山します。軽トラックが停まったところは銭湯の前でした。トラックの荷台から飛び降りた三人は銭湯に駆け込んで、そして服を着たまま湯船に跳び込みます。豪快かつ爽快な着衣入浴シーンです。このシーンでは、菜都美はセーラー服の夏服、きみこはピンク色の私服、そしてみさはブラウスとベストの制服の上に緑色のジャージを着ています。

三人の高校生が銭湯の湯船の中にいるカットはほとんど一瞬で終わって、銭湯の店主のカットに移ります。このときに店主が言う、「服を着たまま入るな!」というセリフが感涙ものです。

この映画には、菜都美(大後寿々花)ときみこ(波瑠)が水溜りの中でケンカをするシーンもありますので、泥んこ属性のある人とか、キャットファイト属性のある人にもオススメです。

さすらいの元会社員さんは、この映画を紹介するブログエントリーの中で、

翌朝、綺麗な滝で、服を着たまま水浴びをする菜都美とみさ。

哀しい邦画を見た。

と書いておられますが、このシーンは「水浴び」ではなくて、単なる「水遊び」ではないでしょうか。ただし、菜都美が着ているセーラー服のスカートは、かなり濡れていると思われます。

『地の糧』の着衣入浴シーン

アンドレ・ジッド(1869-1951)が書いた『地の糧』という小説の中に、次のような一節があります。

――それは歓楽の庭であった。毛織物を着た男たち、縞模様のハイクを纏うた女たちは湿気が身に滲み渡るのを待っていた。彼らは依然としてベンチに居残っていたが、あらゆる声は黙然と鳴を静め、沛然と濺ぐ雨滴に耳をすましていた。彼らは真夏の通り雨に衣服をしとどに濡らし、わざわざ肉体を洗うにまかせていた。*1

これは、30年以上も昔、私が高校生だったころに出会った着衣入浴シーンです。舞台は、アルジェリアのビスクラにある庭園で、ミモザの香りが立ち籠めています。一幅の絵のような、美しい着衣入浴シーンです。

ところで、このシーンに登場する女性たちは、「縞模様のハイク」というものを着ています。「ハイク」というのは、おそらくアルジェリアの民族衣装ではないかと思われるのですが、私には、それがいったいどのような衣装なのかというのは、まったくの謎です。どなたか、ご存知の方がいらっしゃいましたら、ご教示をお願いしたいと思います。

*1:アンドレ・ジッド『地の糧』(今日出海訳、新潮文庫、1952年)。

浴衣入浴のすすめ

今年も浴衣の季節がやって来ました。

ところで、みなさんが浴衣を着るのはどんなときですか。お祭りや花火大会などのイベントのときにしか着ない、という人が多いのではないでしょうか。でも、それだけでは、せっかく買った浴衣がもったいないと言うものです。そこで提案したいのが、浴衣入浴です。

浴衣入浴というのは、読んで字のごとく、浴衣を着たままお風呂に入ることです。これは、だまされたと思って、ぜひ試してみてほしい入浴法です。何がいいのかと言うと、極上の皮膚感覚です。浴衣じゃない普通の衣類を着て入浴してもそれなりに気持ちがいいのですが、浴衣の感触は格別です。

浴衣入浴というのは気持ちがいいわけですが、これには理由があります。そもそも、「浴衣」という言葉の語源となった「湯帷子」(ゆかたびら)というのは、お風呂に入浴するときに着る着物のことなのです。昔々の日本では、やんごとなき人たちは湯帷子というものを着てお風呂に入っていました。おそらく、その時代には、どんな生地がいちばん気持ちがいいかという試行錯誤があったに違いありません。そののち時代が下って、湯帷子は、入浴とは関係のない場面で用いられる浴衣に変化しました。しかし、身にまとって入浴したときの気持ちのよさは、湯帷子から浴衣へとしっかり継承されているのです。