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夏男記念館

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0000-03-03

実装スク『天の川』

 
 
『天の川』 1,150字
 
宵の口。
ここはとあるお堀の川下に設けられた船着き場である。
その水面に目をやると、コイやライギョにミドリガメ、
ウシガエルにアメリカザリガニ。いたるところにたくさんの
生き物たちがひしめき合っており、たいへん騒がしい。
岸辺には野良猫たちが列をなし、皆一様に川上のほうを眺めている。
年に一度、この日の晩にかぎって見られる光景だ。
 
 
しばらくすると、川上のほうから、うっすらと輝く星のようなものが、
大きな群れをなして船着き場に流れてきた。
その群れが近づくにつれ、まるで小鳥や虫たちが
大勢で鳴いているかのようなざわめきが聞こえだした。
 
「プカプカフ〜」
「アマアマレフ〜」
「ひんやりアマアマ、極楽レッフン♪」
「視界良好レフッ!全艦全速前進レフッ!」
 
星のように見えたものの正体は、蛆実装だった。
おびただしい数の蛆実装が、笹舟に揺られながらお堀を流れてきたのだ。
蛆実装らは、色とりどりの金平糖をひと粒ずつ胸に抱えていた。
それが彼女らを、川を流れる星のように見せていたのである。
 
待ち構えていたものを眼中にとらえた野良猫の一匹が思わず声を上げたのを合図に、
まずは泳ぎに勝るコイやライギョが、待ちきれんとばかりに川上へと駆け上った。
 
パシャリ。
ふいに水面がはじけ、そこにあった蛆舟が跡かたもなく姿を消す。
そんな一幕が、蛆舟の群れのあちこちで見られはじめた。
コイとライギョが、蛆実装を笹舟ごと次から次へと飲み込んでいるのだ。
しかし蛆舟の数も多い。蛆舟の群れは、やがて船着き場へと流れこんだ。
 
一飲みでけりをつけていた魚らと違い、船着き場の連中は容赦が無かった。
ザリガニは大きなハサミで蛆実装をがっちりつかみながらむしゃむしゃと身をかじり、
ミドリガメは数匹で競い合って一艘の蛆舟に食らいつき、方々に噛みちぎった。
野良猫も、持ち前の鋭い爪と牙を使って念入りに蛆実装をいたぶった。
こうして、小さくも痛ましい悲鳴の合唱が響き渡るなか、船着き場の水面は、
喰い破られた蛆実装らの臓物や糞によって、みるみるグロテスクな色に覆われていった。
 
 
水郷の町として知られるこの地域では、毎年七月七日の晩に、
金平糖を乗せた笹舟をお堀に流す行事が地元住民らによって催されている。
織姫と彦星の逢瀬の成就を願って、地上に天の川を描こうというわけだ。
この行事も、始めのうちは、風にあおられた笹舟からいともたやすく金平糖が
こぼれ落ちてしまうせいで、なかなか狙い通りに天の川を表現することができなかった。
そこで、地元住民らによる相談の場が持たれ、めいめいが知恵を出し合った末に、
ある人が、蛆実装に金平糖を抱かせて笹舟に乗せる方法をひらめいたのである。
 
幾千の星に願いをこめて―――
堀沿いに並んだぼんぼりの柔らかな灯りに照らされながら、天の川は流れる。
但し川下まで付き合うのは野暮である。
 
 
2011/07/07 二次グロ裏

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