"最終回「デスマッチ!! 甦れ我等のジプシー・デンジャー!!」"『パシフィック・リム』(ネタバレあり)


 ギレルモ・デル・トロ監督作。


 海の底から現れた巨大な敵「KAIJU」により、人類は未曾有の危機を迎えた。団結し、人型兵器「イエーガー」を完成させた人類は、出現した怪獣たちを次々に撃破して行く。勝利に湧く人類。だが、怪獣は現れる度に進化し、今、まさにイエーガーをも凌駕しようとしていた。息の合った操縦で次々と怪獣を撃破してきた戦歴を持つベケット兄弟は、愛機「ジプシー・デンジャー」で迎撃に出撃する。待ち受ける悲劇も知らずに……。


 観る前はもう少し局地戦的なプロットかと思っていたのだが、「第一の使徒襲来」から「世界の中心で愛を叫んだイエーガー」まで、お話を最初から最後までやっちゃってたよ。いろいろと不満点がないわけではないのだが、それらはほぼすべて、「あれもやれ、これもやれ」「5時間ぐらい尺が必要」「三部作は欲しかった」など、無い物ねだりに等しいものであることにまず言及しておこう。


 さて、映画が始まって、


 最初の怪獣登場→犠牲を払いつつ通常兵器で倒す→怪獣出現が頻発→イエーガー投入。連戦連勝。しかし……


 オープニングで「ここまでのお話」として語られるのがこれだけ! いや、むしろここを見たかったな! 端折らないで欲しかったな!といきなり思ったけど、この感じは全編において続きます。でもそれは、端折らずに見せてくれる部分がめちゃ面白えからこそ思うことなのであります……。
 連勝続きの楽勝ムードの中、主人公が兄と共に出撃する序盤から素晴らしく、「パイルダー・オン」するコクピットでいきなり絶頂に達しそうになったね。起動し、発進するイエーガー「ジプシー・デンジャー」。だが、この戦いこそが後に「潮目が変わった」と述懐される、敗北の始まりとなるのであった……。

 
 ここまでで第一クール終わりって感じですかね。時は5年後に移り、人類は残存する四機のイエーガーを結集させ、最後の反抗作戦に臨もうとしていた……。ここで他のイエーガー三機も登場。先の戦いで心に深い傷を負った主人公も復帰し、かつての「相棒」ジプシー・デンジャーと再会。そして、ヒロインと運命的な出会いをする。
 今作の菊池凛子は良かったなあ。イエーガーに乗る試験が、タンクトップ着て棒術するというまったく意味のわからないものであるのだが、訓練を受けて研ぎ澄まされた感じが良く出ていたね。『バベル』みたいなボケた映画で陰毛出すよりも、断然いいですよ! 芦田愛菜も、出番少ないけど印象に残りますよ。


 ここから「訓練」「ライバル関係」「師弟関係」「トラウマ」など、後半の盛り上がりに寄与する設定を矢継ぎ早に出す。見たような話の羅列ではあるものの、ここは詰め込みが功を奏していて、飽きさせない。デル・トロ監督の上手さが光るところでもあるが、さらに解剖された怪獣と、変な顔の科学者、おなじみロン・パールマンが登場して、自身の大好きなグチョグチョテイストで畳み掛け! このあたりは完全に『ヘルボーイ』と同じテイストですよ。怪獣の脳内にセンシングするあたりの趣味の悪さもナイスだ!
 後半に向けて、それぞれのキャラクターがそれぞれの問題を乗り越え、打倒怪獣に向けて一致団結して行くあたりも気持ちよし。メインキャラには心情の描写があるが、脇に出てくる、何となくいる整備員や兵士などからもプロ意識が感じられるところがいい。ロシア製イエーガー「チェルノ・アルファ」の登場シーンで、パイロット夫婦が仁王立ちのドヤ顔で現れるが、周りのスタッフも全員同じく仁王立ちなのにバカウケ。おまえらが乗るわけじゃないだろ! でも、これが『エヴァ:序』のクライマックス前にミサトさんが言ったこと、全員が共に戦っているということの体現なのだね。


 バトルシーンも劣勢になってから、機転を利かし粘りを見せて逆転する王道パターンの連発で、美学に溢れておる。ジプシーデンジャーの全性能を、文字通り心を一つにして発揮するシークエンスも熱い。ブレストファイヤーなどの奥の手もあるし……(笑)。
 怪獣は必ず順番に一頭ずつ出てくる、と決まっていて、使徒襲来とか、ウルトラマンで各話につき一体出てくるあのイメージですかね。「ここまでに何体倒した」「オレは5体倒した」とかそういう台詞が何回も出てきて、何話もエピソードが省略されてるのだな、と思わせる。さすがに怪獣の描写はそんな調子で薄味で、しかも全部が同じ遺伝子から生まれたクローンという設定なので、もう一つ個性を感じなかったところ。
 都市破壊の描写も、そこらへんの話をカットしてるために少なめで、ゴジラガメラを思い起こさせるようなカットも入れてるけど、もっと見たかったな。


 公開前なので、これぐらいにしておこう。音響もいいし、音楽もご機嫌だし、巨大ロボの活躍をこれでもかこれでもかと拝める逸品。



(ここからネタバレ)






 コヨーテ・タンゴはあれだけの出番なのかよ! てっきり最終戦で凛子仕様になって再投入されると思うじゃないか! 我等が日本代表のイエーガーということでしたが、回想シーンでチラッと出るのみで、しかも乗っているのは後に司令官になる黒人の人ということで、デル・トロが好きなのは別に「日本人」じゃないんだな、というのがわかる。だいたい名前からして日本テイストゼロだしな……。

スーパーロボット超合金 マジンガーZ

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