太陽系の惑星が示すもの

太陽系の惑星の数が、76年ぶりに書き換えられることになった。チェコで開催中の第26回国際天文学連合IAU)総会で、8月24日、これまで惑星とされてきた冥王星がその座を外れる案が採択されたのである。生きているうちにこのような歴史的場面に遭遇することができた幸運に感謝しつつ、柄にもなく興奮して経緯を見守っていた。

この件は予想以上に多くの人の興味を集めたようだ。セドナの時もUB313の時も「太陽系に10番目の惑星が?」と話題にはなったがあまり印象に残っていない。今回は、いったんは惑星が12個に増える案が出てきた上で8個に減ったという劇的な経緯をたどったこともあるが、新聞には何度も一面で記事が載り、ブログなどの個人サイトでも随分話題になっている。

冥王星が惑星でなくなったからといって、冥王星自体がなくなったわけではない。日常生活には何も影響はなさそうだが、実はとても大きな意味を持っていると思う。

それは、定義というのは変わることがある、より良い考え方があればそちらを採用する、ということ自体が科学的な態度であり、それを満天下に示したことだ。文科省がさっそく教科書の書き換えを指示したらしいが、惑星の数が9個とか8個とか、どってんかいとか丸暗記するのではなく、こうした点をこそ、若い人は学んでほしいなあと思う。

冥王星が他の惑星と大きく性質が異なっている、というのは昔から言われていたことだが、エッジワース=カイパー・ベルト天体(EKBO)が実在することが明らかになり、その数が増えるに従って、冥王星もどうやらEKBOの仲間らしい、とわかってきたわけだ。初めてEKBOである1992QB1が発見されたのが1992年、また初めて散乱エッジワース=カイパー・ベルト天体である1996TL66が発見されたのが1997年、それから10年経たずして今回の決定となった、と考えると、案外あっさり決まったという印象を受ける。

政治的な意向(アメリカ人の発見した天体を惑星として残す)よりも科学的な良心(明らかに他の惑星と性質が異なるものを分ける)が勝ったという点でも、一服の清涼剤のような出来事だった。

専門家のコメント

井田茂先生(東京工業大学教授、地球惑星科学専攻)のコメントを紹介しておこう。