やっぱりaikoが好き!のこと!


もはやファンクラブ2馬力でも本ツアーのチケットが取れなくなってきてるaikoの、追加公演@さいたまスーパーアリーナに行った!aikoは相変わらず凄いなあんな小っちゃい体で。今回は特に光の演出が美しく、入場時お客さんにザイロバンドを配り、指令室からの発信で客席の光をコントロールするなどしてました。あと天井から降りてくる花道ステージでの光は「うおー、使徒じゃー!使徒がやってきたー!」と思うほどに頭脳を感じさせる動き。aikoのまわりでうごめく光の粒たちが幻想的でした。追加公演のときは広めの会場で、だいたい生のオーケストラをしたがえて歌っているけど、aikoの声の存在感は、オーケストラと絡むと迫力を増して、美しいストリングスの連なりに艶めかしい生命を織り重ねていきますね。聴いたことのないトーンに呑み込まれる感覚でした。アルバム「時のシルエット」のキー曲であろう「Aka」の演出、赤色が徐々に強く強くなって2番のサビ♪優しく、触った、頬に赤〜、で赤一面の光線を放つ景色に震えた。わたしたちとaikoの関係性の曲ですよね、この曲って。少なくともaikoからのお客さんに対する思い、ステージの上から見える景色の歌だと思ってます。


「目の前に広がる今だけの世界 ここはあなたとあたしの幸せの中だろう
 ぼやけた向こうに見える顔 泣いてしまうなんて勿体ない 泣いてしまうなんて勿体ない」

「目の前に広がる今だけの世界 あなたのその瞳がまさに生きている証だろう
 優しく触った頬に赤 泣いてしまうなんて勿体ない 泣いてしまうなんて勿体ない」


震災直後のツアーのラスト、aikoがどんな言葉を放ってくるかとても興味深く思っていたんですが、彼女は、日々生きていることの喜びや歌えることの幸福を噛みしめるようにつぶやきながら、「これからも皆さんと一緒に成長していきたい」って言ったんですね。つまり、一緒に生きていこう、と言ったんですね。ライブという一期一会でひとりひとりと命をからませて出会いを最大限の幸福にしようとするaikoの、アンドロメダな瞳からみえるいちばん美しい景色の歌、が「Aka」だと思うのです。正直お客さんのノリについていけないし、あのMCのときめっちゃしゃべるのとかむちゃくちゃ鬱陶しいんですけど、ほんと毎回。でも、aikoのライブには、このCDが売れないといわれる時代において、エンターテインメントがなぜ存在するかっていう原点と、エンターテインメントがどんなふうになっていくかっていう未来があるような気がします。ももクロがライブ見にきてたっていうのはすごくよくわかる。ステージに立つ側のひとはみんなみた方がいいんじゃないかって思うもの。あれだけのトップスターが、お客さんに対して、歌うということに対して、楽しませるということに対して、どう向き合っているか、という、そういうところにいつも感動してしまいます。しかし改めて「くちびる」ってすごい曲だなぁ。「くちびる」のあとに「カブトムシ」聴くと、もちろんカブトムシいい曲だし好きだけど、なんか駄菓子みたいだよねカブトムシって。「くちびる」はもう出汁の生産地までひとつひとつこだわって作った料亭の味ですわ。あの曲の研ぎ澄まし方はやばいな〜。aiko


aiko、といえば歌詞ばっか取り上げられるインタビューに本当に辟易しているんだけど、もういいかげん歌詞=aikoの現実世界という想像が貧困だなぁと思うですよ。まぁ現実世界なんだろうけど、いや、つまり、直接的に受け取って恋バナにもっていくのがもううんざり。下世話だよ。もちろん「シアワセ」が出たときはさすがにね、さすがに「男と別れたほうがいい曲ができるんじゃないのか!!!!」て思ったけどね。あれまじで滅法いい曲だもの、思わずさやかちゃんがわたしにメールしてきたもの。でもそれはモチベーションというかアティテュードの問題なわけで、「今回のアルバムでは別れの曲が多いけど、aikoどうしたんだ…」という邪推は無粋だと思うわけですよ。「Akaと自転車に“あなたがあたしのことをどう思っているのか”て歌詞が出てきますね」っていう質問も安すぎると思うんだよなあ。aikoの凄さってそんな質問じゃ引き出せないと思うんだけどな〜。ナタリーさんのインタビューおもしろかったけど今一歩踏み込んでほしかった!まー、現場では踏み込んでても事務所の意向で掲載できないのかもしれませんが。


歌詞ひとつをあげるにしても、やっぱ「シーソーの海」とか「こんぺいとう」とか「夏にマフラー」とか、感受性の鋭さというか発想の豊かさというか、描写へのスタートラインと着地点がトンでもねえなと思うんですけど、「シーソーの海」は言葉のキャッチボールがシーソーで、ベッドでまどろみながらシーソーを続けるさまを海の波として表現している、寝る直前の宇宙の歌だし、「こんぺいとう」は癇癪持ちのaikoが、嫌なことがあると腕を噛んでしまうという癖あって、その歯型をこんぺいとうになぞらえてる表現だし、「夏にマフラー」に至っては「どこにいても誰といてもあなたの皮膚のあたたかさを知ってる」という、皮膚をマフラーとしてキャッチーに仕上げたメンヘラ一歩手前の曲ですよ。すごくないですか。そのアウトプットのポップネスがaikoの真骨頂だと思います。メンヘラぶりをキャッチーさで覆いかえすという。これができないと西野カナてかcoccoになっちゃうんですよねきっと。メンヘラどまんなかにね。これ怒られそうだな。でも続けちゃう。あと「恋のスーパーボール」の

あなたの指先が初めて耳をかすめた
あたしの体の真ん中 自分じゃないみたい


なんて、かんっぜんにセックスだろう!かんっっぜんにセックスの描写だろう!!て思いそうだし実際そうだとしてもむちゃくちゃ巧い。「セックス」て書く100万倍ぐらいエロい。でも「体の真ん中」っていう表現はaiko独特のaiko語で、インディーズ時代に出していた作品にも出てきてる。

想ってた真ん中痛い程
「ハチミツ」


つまり心の中心というか、気持ちの中枢という意味合いかと思われる。こういうaiko語もめちゃくちゃ多くて、大ヒットソング「ボーイフレンド」でいう

哀れな昨日おだやかな今 地球儀は今日も回るけれど


の、「地球儀」という表現は

地球儀の鍵はあたしが握る少し位なら抵抗してもいいよ
「猫」


として登場する。「地球」と同義語ですよね。あとは

羽が生えたことも 深爪した事も
シルバーリングが黒くなった事 帰ってきたら話すね
「キラキラ」




きっと飛べると思うんだ はねたうしろ髪が羽だから
「ジェット」


からきてる。aikoの「羽」はハネた髪の毛であるのだ。あとは、前も書いたけど

冬の寒さに桃色の汗を
「桃色」

桃色の汗は夏の匂い
恋のスーパーボール


「桃色の汗」はセックスの描写、だといわれていますな。


aikoの歌詞で、好きなのはほんっとにたくさんあるんですが、「こーれーは凄いな」とリリース時に唸ってしまったのは「横顔」。かなり直接的な恋の歌なんですが、恋に、落ちる瞬間の心の描写が巧みすぎて震えました。

眠っていた心の中に 些細な些細な小さな傷 いつの間に
その隙間から溢れてくるのは
あなたの名 優しく強い目 指 髪すべてに気付かされる


すっごくないですか!?!?いやー、いつみてもいま見ても震えるわあ。恋の予感を「心に生まれた傷」として表現して、その傷から溢れようとしているもの、それはあなたの欠片すべてだった、というのに気づく、という表現。傷の向こうからキラキラした光が漏れるさまがみえますよね。恋なんかまったくしてない時期に聴いたけど、この曲を聴くといつでも恋に落ちる感覚というのが蘇ってきます。というか誰にでもあるそういった感覚を、ここまでみずみずしく描けるというのがさすが。これを聴いて単純に「aiko恋をしてるのね〜」て邪推するのもまぁ自由ですが、でもこの技法の素晴らしさだよね、やっぱり取りざたされるべきは。この3行におけるロマンチックでドラマチックな世界の開かれ方には思わず興奮してしまいます。さらにはサビで、

起こされた想いは止まらないから躓いても
胸は風を切って 横顔に恋をした


と続くわけですね。恋に落ちたことを「心が起こされた」と表現するわけですね。眠っていた心の中にできた傷によって、想いが起こされた、と。うおー、興奮するぜ!いや、すごいと思うんだけどなー!で、なぜ「横顔に恋をした」のか、は、2番で明確になります。aikoの歌詞世界において「横顔」という言葉は、例えば

ページ開いたらあの頃の街 時間 横顔 全て蘇った
「クローゼット」

優しく微笑むあなたの横顔を あの頃からきっと好きになっていた
「ずっと近くに」

横顔に只 見とれたよ
「洗面所」

あなたの横顔今日は4回見れた
「リップ」

季節がくれたいくつものあなたの横顔はあたしが隣にいられた証
「秘密」

など、よく使われる表現ですが、この曲においての「横顔」のフレーズの入れ込み方は秀逸。

電話が鳴る度に横顔が浮かぶのは
やっぱり少し切ない
あなたをいつも愛しい


とな。「些細な傷」が恋に生まれ変わった心の動きを、欠片の残像で表現するわけです。「電話が鳴る度に横顔が浮かぶ」と。そこに至るまでの温度の上げ方もうますぎる。温度、が、あるんだよな〜。aikoの歌詞には。そこはやはり描写の巧みさだと思いますが。で、それがaikoの共感の元になってるのだと思います。鋭い観察眼で巧みな描写をするうえ、豊かな感受性で宇宙的な発想をかましてくる、かつ恋愛ジャンキーなメンヘラメンタルと、それらをポップネスでアウトプットする動物的な勘の良さ、それが、aikoです!(aikoの声で!)


温度を感じさせるaikoの歌詞、という意味で好きなのは「深海冷蔵庫」。失恋で落ち込んで茫然自失している際の、時間の経過を1曲であらわしているのだけど、その描写があまりに巧い。

海の底を泳いで光を遮りたい 蒼いかも解らない程下のまた下で
あなたの優しい所 温度と共に蘇る
冷たい床と暖かい冷蔵庫にもたれて眠る

冷蔵庫にもたれながら、「深海」という暗い、圧のかかる、息のできない苦しさ、に、自分の心をうつしているんですが、2番のサビで

雨の音でやっと気付いた こんなに時間が経っていた
熱い両手のぼせた首が教えてくれた事


と、いまだ冷蔵庫にもたれたままの<自分>を描写する。その、「熱い両手」「のぼせた首」という、温度によって、時間の経過をあらわすという手さばきに震えました。そして怒涛の想い出走馬灯になだれ込む。

日曜日も☆のリングも22日も青い空も長袖も家の鍵も笑った目も夢のダンスも
あなたの優しい所 温度と共に蘇る


「22日」はaikoの誕生日だし「夢のダンス」はaikoの曲だし、例えば「家の鍵」は「恋の涙」を、「長袖」は「白い服黒い服」を、「笑った目」は「Smooch!」を、思い起こしたりさせる、このファンをニヤリとさせる遊び心もさすがなのです。


あー、aikoのこと語ってると留まるところを知らないね!でもまだまだ言い足りない!歌詞のことは、こうやって分析していくのももっとやりたいし、言葉を音として解体していくやつも今度やってみたい!です!!


ひとまず「4月の雨」はやく聴きたいヨ〜