よしもとばなな 『王国 その3 ひみつの花園』 新潮社

王国〈その3〉ひみつの花園

王国〈その3〉ひみつの花園

 ここ数日何度か読み返した。

 私はお手伝いするのを辞める気はなかったけれど、何が起こっていつここを離れなくてはいけなくなるかわからない。だから、甘やかしすぎず、必要なときに必要なことをきっちりとしたい、そういうふうにとらえていた。甘やかすというのは何を意味するか? それは相手を離れられなくさせる黒い魔法なのだ。私は楓にそんなことをしたくなかった。(P.113)

 でも、やがて彼らは俺に条件をつきつけてくる。自分のものにならなければ、この毎日やこの笑顔はもうあげません、っていうふうに。それで俺がどれだけ傷ついたかわかる?(P.151)

 自分が登場人物の誰かと似ているわけでも似た状況に置かれているわけでもないのだけれど、随所にはっとするような言葉がある。
 ネタバレになっちゃうので詳述はしないけれど、「私たちは、(略)そういう設定の間だけ有効な関係だったのだ」「外側が少しでも介入したら、その世界はこわれてしまったのだ」という箇所が、特にぐさっと刺さってきた。
 ある設定の間だけ有効な関係、なら身に覚えがあるからだけれど。そうじゃない、設定が変わっても機能する関係を、築いていけるといいなあ、なんて思いつつ。