夢を与える

夢を与える

不安は蓄積するとどこか祈りに似てくること。そして祈りに似た不安は想像以上に残酷なかたちで叶うこと。(P.295)

 手の握力が保つ限り引き止めてしがみついて、それがいったい何になるだろうか。無理に引き止めた男の人が、結局いつかは去っていくことを、裕子は父親を追う母親の姿を見て、いやというほど知っていた。(P.290)