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こどものおいしゃさん日記

2014-04-06

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さいきん更新をさぼりがちで、このさい気分一新したいのと、小さい字がだんだん辛くなってきたのとで、大きい字のデザインへ移行します。

こどものおいしゃさん日記 http://childdoc.hatenablog.com/

2013-12-23

水痘ワクチンの定期接種化に際して、するべき事と、してはいけないこと

水痘も定期接種となることが決まった。着実に進歩している。

日本小児科学会の推奨では1才のうちに2回接種することになる。肺炎球菌やHibの導入で0才児のスケジュールがかなり忙しくなったのだが、今度は1才児のスケジュールが密になる。個別接種での日程立案はかなり面倒なことだと予測する。今後はおたふくかぜの予防接種もあることだろうし*1

接種率を上げるためには、この面倒くささと闘わなければならない。反予防接種派の皆さんを論破することは二の次である。我々小児科医は、世の中の人予防接種推進派と反予防接種派にくっきり別れているものと思い込みがちなんだけど*2、実際のところ、世の中の大多数の人たちにとっては、予防接種はけっして第一の関心事ではない。予防接種に子供を連れてこない人たちの多くは、予防接種の利点と欠点を熟慮の上で接種しないことを選択したわけではない。すっかり失念していたか、たまに思い出しはしていたけれどよく分からないんで先送りすることにして頭から追い出していたかというところだ。

だから我々が外来で保護者と語るとき、水痘の予防接種をしていないと判明しても、責め立てたり論破したり喧嘩したりしてはいけないんだ。人間、自分の行動に特に理由がなかったと認めるのはストレスなものだし、予防接種していませんねと指摘されればなぜしていないかを語り出すんだろう。といってそうそう独自の理論を生み出せるわけもなし、どこかで聞いた反予防接種の理屈を持ち出してくることになる。そうしてうろ覚えの反予防接種論を語るうち、単純に忘れていただけの予防接種抜けが、その場で自己生成的に、「予防接種をしない選択」に変容してしまうんだ。誰かに何かを説得したいとき、いちばん有効な手だては、相手自身の口でその何かを語らせることなんだから。

我々が行うべきことは、淡々と予防接種の日程をたて、予約を入れることにつきる。我々の目標はあくまでも子どもたちの健康であり、その実現のための水痘の流行阻止だ。アポロ宇宙船は実は月に行っていないんだという主張をする人たちを論破したところで、宇宙開発が進展するわけじゃないんだ。

*1:ちなみにB型肝炎はDPTPの4種混合にHibとともに統合されることになるだろう。

*2:たぶん眼科医は世の中の人は眼鏡派とコンタクトレンズ派とレーシック派にくっきり分かれているものと思っている。

2013-12-22

絶滅危惧種のつぶやき

私は医師3年目から5年目まで、滋賀県の僻地にある公立病院に勤務した。今で言うなら後期研修医にあたる時期だが、一人前に外来もしたし、おおくの新生児主治医もした。出生直後から退院、その後のフォローアップまで。加えて土地の乳幼児健診にも出務して、たくさんの乳幼児に接した*1。6年目からいまの職場に赴任した。私の経歴は、フォローアップから始めてNICUに入ったというものである。当時はあまり奇異にも思わなかった。

しかしそういう経歴で新生児医療に入ってくる医師は、今後はもういないのだろう。多くの大規模NICUでは、フォローアップは特に当直が辛くなった等の事情でNICUの第一線を退いた医師の仕事である。妥当と言えば妥当な仕事だ。医療においてもその他の人生全般についてもそれなりに経験を積んでいたほうがよかろうし、就学までフォローするとしても7年は必要となれば終身職を得た常勤医でないと不都合だろう。それはそういうものだと思う。

場末のNICUにいると医学生や研修医時代の先生方と接する機会が少なくて、彼らの実情を直接確かめることがなかなか困難なんだけど、いろいろな経路で間接的に伝わってくる情報を考えると、私らのころより今の研修医達はよほど自分のキャリア形成について意識が高そうである。私もまあ当時には珍しかった「大学病院では研修しない道」を選んだ人間だし「意識の高さ」を揶揄する意図も資格もないのだが*2、でも今どきの意識の高い研修医達は、研修医が外来枠を任されたり長期にわたるフォローの責任を負わされたりするような、リスクマネジメント的に危うい施設は敬遠するんだろう。施設側としても、あえてそのリスクをとろうとする研修医に応じる気概はなかなかないだろう。

新生児医療はやりがいのある分野だし、選択する若手はなかなか目が高いと思う。目が高い若手は早期から目標を定めて、キャリア計画のもと脇目も振らず研修するんだろうと思う。青年負いやすく学成り難し*3。でもそういう無駄のないキャリアを歩む新生児科医ばかりになると、私のような横入り組は絶滅するんだろうと予測する。そうしたときにNICUの風合いが変わるのではないかと一抹の危惧はある。

*1:自分の長男がその中で接した最重症だった

*2:私が大学病院を避けたのは、指導もろくにせずまともな給料もくれず食費も救急処置の技量もアルバイト先で入手するのが前提なのを嫌っただけの逃げの選択なんだけど。

*3:初期研修2年後期研修3年で小児科専門医取得、さらに3年新生児専門医研修して新生児専門医取得、4年間大学院に行って博士号取得、さらに海外留学2年、合計14年。24才で医師免許とって14年したら38才。

2013-12-17

タダで貰って得をしたと思っていてもだ

ビフィズス菌製剤を無料で提供していただいているお話の続き。

無料というのはどうにも危ういんじゃないかと思う。極低出生体重児の全員に与えることがこれからの決まり事となるような、そういう基本的なものをだ、一企業の善意に頼ってしまうのは、キキカンリ的にどうなんだっつう話。森永さんには縁起でもない話で恐縮なんだけれど、昔は森永さんって業界の一番手じゃなかったよね。みなさん雪印乳業さんって憶えてる? まあ人工乳業界では森永さんよりシェア低かったかもしれないけど(よく知らない)。でも雪印乳業がああなる前、ああなりかねんよと真面目に考えてた人っているの?

まあ森永さんが倒れるよりももっとやばいのは、森永さんがにっこり微笑みつつ我々の業界の首根っこをぎゅっとつかんでしまうってことだろうね。森永さんがビフィズス菌をタダで配ってる限りは、他のメーカーがそれを商品として有料で売るなんてことはないじゃないですか。俺もタダで配ってみようとか思って製品開発に取りかかるような、暇と金の余った企業なんてなかなかないでしょう。極低出生体重児むけビフィズス菌製剤はとうめん森永乳業さんが独占だ。我々は森永乳業さんと縁を切ることが不可能になるんだ。これからますます。

製剤製剤ってさっきからなんとなく行ってしまってるけども、まあナマの菌じゃなし粉末なんだけれども、あれは薬なんかね。日本国で人が口から摂取するものは薬品か食品かどっちかだってことになっている。薬品なら薬事法の管轄だし、我々は保険診療やってるんだから保険収載されてない薬品は御法度だ。でもあんまり薬としての認可を受けているふうじゃない。じゃあ食品なのかというと、喰って美味いといって森永さんは売ってるわけじゃない。なんかしらんけど効能がありそうなことを言ってる。はっきり効能をうたったら、はっきりと薬になっちゃうからね。なんとなくの効能だ。とするとあれはトクホなんすかね。トクホとも記載はしておらんようだがね。

はっきりしなくても何となく病院に入り込んで赤ちゃんの口に入り込めているのは、そりゃあもちろん安全性についてけちをつける余地がないからではあるけれど、こんなふうに曖昧なまま入ってこれるのはやっぱりタダだからだろうね。病院も経済的な機構であるからには、病院の中で動くものは病院の経済的ルールに従わなくっちゃならない。そして経済的ルールにおいては価格ってのが物理学世界のルールにおける質量みたいなものなんだ。経済世界で値段のないものは物理世界での質量のないものみたいなものなんだ。だから物理世界で質量がないものみたいに、無料のビフィズス菌製剤は病院の中を自由に動く。薬品じゃないから薬局は関知しない。食品かもしれんけど代金の決済が生じるわけじゃなしと栄養科もなんとなく埒外だ。かといって医療機器や消耗品みたいに購買部が在庫を管理して問屋に交渉するもんでもない。さすがに質量はあるから壁を通り抜けて現れるわけではないが、病院の経済的な壁はするすると通り抜けて、いつのまにかそこにある。まあ、森永の営業の人が持ってきてくれてるんだろうけど。

2013-12-14

ビフィズス菌製剤の無償提供について

topic02 健全な発育をサポート:ビフィズス菌 M-16V | CSRの取り組み | 森永乳業株式会社

低出生体重児にたいするビフィズス菌投与はNICUの業界内でもスタンダードと認識されつつある。特に壊死性腸炎の予防には効果があるとのことで、壊死性腸炎の多い国々では投与しないことは非倫理的だとまで言われている。

当院でも提供を受けている。有り難いことである。有り難くはあるが、いまひとつ釈然としない思いも、どこかで感じている。

自分の狭量さ、他人に頭を下げたくなさが、そう感じさせているだけかもしれないけれども、NICUを管理運営するものとして、人工乳メーカーに対して余計な借りを作りたくないとは思う。

人間、くれるものを貰えば礼のひとつも言うものである、礼のひとつも言えばそのついでに他の話題のひとつふたつも出るものではあるし、ほんらい物売りに来ている人間ならその話の締めくくりには自社製品をよろしくと言うものである。言われていちいちよろしくするようでは銭がいくらあっても足りないが、しかし最初にものを貰っておればよろしくしないのには抵抗が強くなる。

タダでくれるものを寄越せと求めておきながら、母乳育児推進と称して彼らの人工乳を閉め出していくことができるのか、産科病棟で母親達に「調乳指導」をしていく同社社員達を閉め出すことができるのか。俺の面の皮はそこまで厚いだろうか。