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2010-05-23

漢文を読もうその5〜体言の否定〜

やってきました不定期更新漢文講座。

今回は体言、つまり名詞の否定です。

今回から例文の語句の解説がテキトーになります。自分で調べる癖をつけよう!

ググるだけでも主な意味はわかります。漢和辞典を使うとbetter!

名詞の否定語には“非(あら-ズ)”“無(な-シ)”があります。

“不”は用言の否定ということで副詞的に働く語だったのですが、“非”や“無”は目的語を打ち消す動詞ととらえることができます。

というわけでここでは動詞として考えていきましょう。

動詞なので、語順は当然「主語+非/無+目的語」となるわけです。

意味としては“非”は「〜ではない」、“無”は「〜はない」、“無”とほぼ同じ意味の字には“莫(な-シ)”なんかもあります。


では例文。まずは“非”から

三国志』巻六 董卓伝注引『英雄紀』

汝非吾君,吾非汝臣

前半部は“汝(なんじ)”が主語。

“吾(わ-ガ)君”は目的語です。

“非(あら-ズ)”が出てきましたね。「〜ではない」という意味ですから、まとめると「あなたは私の君主ではない。」となるわけです。

後半部も同様に、「私はあなたの臣下ではない」。


次に“無”の例文。

三国志』巻一 武帝紀

軍無輜重

“軍”が主語、“輜重(しちょう)”が目的語。“無”があるので「軍は輜重がない」となるわけです。

“無”による否定の場合、目的語が主語的にはたらくことに注意!*1


“無”の下には動詞(+目的語)がくることもあります。

そんなときは、まず“無”以下のまとまり(動詞句)だけを訳してしまいます。

次にそのまとまりを名詞に変える魔法を使いましょう!

まとまりを名詞にするための呪文は「〜スルコト(モノ)」

三国志』巻五十八 陸遜伝附陸抗

無用兵馬

“無”はとりあえずシカトして、“無”以下のまとまり“用兵馬”を訳して、「兵馬を用いる」

動詞に名詞化の呪文をかけて

「兵馬を用いること」。

それに「無し」をつけるだけ。

「兵馬を用いること無し」

また、「兵馬を用いるは無し」のように「こと」を省略して動詞の連体形+はとすることもあります。


二重否定というものは結局これの延長にあたります。“無”以下の動詞に“不”がついただけなんです。

上の例文を二重否定にすると

無不用兵馬

“無”以下のまとまりが“用兵馬”から“不用兵馬”になっただけで、やることは一緒。

訓読すると「兵馬を用いざる*2は無し」

意味は「兵馬を用いないことはない」=「必ず兵馬を用いる」

回りくどい言い方だけれど、強い肯定をあらわすらしいよ。

“非”を使った二重否定もありますが、“非”以下のまとまりを先に読んでしまえばなにも難しくないのです。


否定に限らず、漢文ではまとまりを意識することが重要です。

さまざまな文を読んで、まとまりを見つけられるようになりましょう。


今回はいつもにましてややこしくなってしまった。

解説するって難しい> 情報の取捨選択が結構大変・・・。 ここもっとくわしくしてほしい、とか要望があったらコメントでもしてください。

次回も否定が続きます。多分否定シリーズの最終回。

次回予告

最後に立ちはだかる難敵“部分否定”と“全部否定”。 伏兵“慣用表現”によってバラバラになる勇者達・・・。

――今、まとまりの力を発揮して打ち破れ!!

*1:「〜を」ではなく「〜は」「〜が」となる。

*2:二重否定の場合は「こと」をつけないことが多いが意味さえとれれば何でもいい

2010-05-20

漢文を読もうその4〜用言の否定〜

待ってる人はあまりいなそうだけれどもお待たせしました。

久々の漢文講座。

否定形は数回に分けて行います。

今回は用言動詞形容詞形容動詞)の否定を取り扱います。


用言の否定には通常“不(ず)”、“弗(ず)”を用います。

基本的な語順は

「主語+不(弗)+用言

となり、“不(弗)”以下の用言を否定します。

次の例文を見て下さい。

三国志』巻一武帝紀

太后聽(太后聴かず)

太后”は「皇帝の母」という意味で名詞、主語にあたります。

“聽”は“聴”の旧字体ですから、そのまま「聴く」という意味の動詞ですね。

動詞である“聽”の前に“不”があり、“聽”を否定していますから、この文の意味は「太后は聴かない」となります。


少し特殊な否定形に“未(いま-ダ)”があります。

学校では再読文字として習います。

再読文字というのはつまり、一語で同時に二つの意味を表すということです。

“未”には否定の「〜しない」という意味の他に同時に「まだ」という意味を持っているのです。

語順は“不”と同じで「主語+未+用言となります。

“未”の後ろに“嘗(かつ-テ)”という字が入り、さらに「まだ」の意味が強調されることもあります。

その場合“未嘗”を「いまだかつて」と読みますが、今でもよく使われますね。

“未”が出てきても、基本的には“不”と同じようにとらえて、「まだ」という意味を附加するだけです。

以下例文。

三国志』巻一武帝紀

劭兵至(劭の兵未だ至らず)

“劭”は応劭(人名)のこと、漢文では一度出てきた人が姓を省略して書かれる事が多いです。

“兵”は名詞。

名詞が二つ並んでいるので、あわせて「劭の兵」で主語ととらえます。

“至(いた-ル)”は動詞、そのまま「いたる」という意味です。

そして“未”があるので、“至”を否定した上、「まだ」の意味を付け「応劭の兵はまだ至らない」となります。


基本的な用言否定の説明をした所で、次によく出てくる構文をいくつか取り上げます。

“不可(べ-カラ ず)”は今でもよくつかいますね。

“可(べ-シ)”を「許可」の意味でとらえて「〜してはいけない」、“可”を「可能」の意味でとらえて「〜できない」と訳します。


“不能(あた-ワ*1 ず)”は「〜できない」という意味です。

“能(よ-ク/あた-ウ)”は「できる」という意味です。

“不”で否定して「できない」。単純です。

訓読的な注意としては、“能”は肯定文では「よ-ク」、否定文では「あた-ウ」と二つの読み方をするという点です。

意味を取るだけならほとんど関係有りませんが・・・。


今回はこんな所で終了。

構文や二重否定や部分否定などまだ説明していない所はありますが、次回以降に回します。


次回予告。

体言・・・。お前もか・・・!

用言に続き否定される体言たち・・・。

体言ばかりか用言をも否定する力を持った悪の化身“無”。

今明かされる否定形の全容。

彼らの運命や如何に!?


TO BE CONTINUED.

*1歴史的仮名遣いでは“ハ”になりますが、面倒なので、この漢文講座では現代仮名使いをもちいます。

2010-04-28

漢文を読もう3〜動詞をさがそう〜

今日から本格的に漢文講座に入ります。

お手元に漢和辞典を用意があるととてもいいです。特に『漢辞海』がオススメですよ。


漢文で、一番大事なのは動詞です。

動詞さえつかめば、けっこう意味がとれるのです。

動詞を制する者は漢文を制する!ということで本日はその動詞のつかみ方を紹介します。


ですが、その前に簡単に漢文の構造・語順を知りましょう。


漢文は英語に近い語順で、「主語+動詞+目的語」となっています。

主語と動詞の間に、修飾語句が入ることもありますが、基本的に主語のすぐ後が動詞です。

次の文を見て下さい

三国志』巻一武帝紀

(曹)嵩生太祖.

曹操の父“嵩”が主語なので、そのすぐ後の“生”が動詞ですね。目的語は“太祖”、曹操です。

“生”は「生む」という意味が思い当たりますね。

ですから、「曹嵩が太祖を生んだ」という意味になります。*1


というわけで、動詞の見つけ方は、主語の後を見る!


ただし、動詞は一文字とは限りません。

三国志』巻一武帝紀

(董)卓留屯洛陽

主語は“董卓”です。また“洛陽”という地名がありまして目的語になりそうだ。

そして“留”“屯”の二字が余ります。これは両方動詞なのです。

“留”は「留守」などの熟語でわかるように、「とどまる」という意味があります。

“屯”は「駐屯する」という意味です。

そのためここは、「董卓が洛陽に留まって駐屯した。」という意味になります。


二字の動詞は「殺害」のように、似た意味の動詞を二つ重ねるものや、

一方の動詞が他方の動詞を修飾する「追撃(追って撃つ)」のようなものがあります。


次に動詞の意味を取るには“屯”から「駐屯」という熟語を考えたように

その漢字が使われている熟語を考えます。

わからない場合は素直に漢和辞典を引きましょう。

わかったと思っても漢和辞典を引いてみるといいかもしれません。

この漢字こんな読み方するんだ!!という発見があるかもしれません。

昔の話ですが、

『漢書』巻三十四呉芮伝

黥布歸芮,芮妻之

“芮妻之”というのを見た当初、「芮、之を妻とす」だと思ってしまったんですが、

“芮”は呉芮(男性)、“之”は黥布(男性)なので、このままではまさかのベーコンレタス(BL)!!

ところが、漢和辞典を引くと“妻”には「めあわす」という意味があって、

呉芮が黥布に娘を嫁がせたというただそれだけの話だったということがありました。

というわけで、知ってる漢字も時々調べてみるといいですよ。


今日のまとめ

1,漢文動詞がカギ!

2,動詞は主語のすぐ後ろにいる!

3,意味を取るには熟語を考える!

4,辞書を引いてみる!

5,呉芮×黥布はない

*1:日本では父親が“生む”という表現はあまりしませんが、漢文ではよくある表現です。

2010-04-27

漢文を読もう番外〜講座方針的なこと〜

大事な旧字を紹介し忘れていたので最初に書いときます。

=権

孫権の権は“權”と表記されるのです。

右側の部分は他の漢字にもつかわれております。

例えば=観 =勧

などです。


次回からいきあたりばったりに本格的に開始する漢文講座ですが、

まず、漢文読解に関する私の所見を述べます。


学校教育などで漢文というと基本的には訓読です。

訓読とは古代中国語を日本語の語順になおして読むものです。

確かに非常に便利で、自分の読み方を他者に伝えることも容易いのです。

しかし、はたして訓読は万能なのでしょうか。

英語の長文読解では、英語を日本語の語順になおすべきではないと教わります。

私は漢文でも同様に、漢文の語順通りに読めるのが理想なのではないかと思っています。

訓読は、研究の共通語的なところもあるので、当然学ぶべきではあるのですが、

趣味でやるなら厳密な訓読をせずとも意味がとれればいいと思います。


というわけで、この講座は、訓読にふれつつも訓読に拘らずにやりたいなと思う次第であります。

2010-04-24

漢文を読もう2〜旧字体を読む2〜

昨日の続きです。

まだ漢文にははいらず、旧字体の魅力について語ります。

それにしても覚えなければならない旧字体が多いと改めて思いました。

みなさんもノートを旧字体で取って覚えよう!!!

無計画のためすごく長くなってしまった


=挙です。

日本ではが使われることが多いです。

日本の擧のほうが今の挙とちかいですね。


=点です。

形がかなり簡略化されていますが、よく見ると、偏の黒の“れっか”とつくりの“占”が取り出されて、点を形作っているのです。


=発です。

これは麻雀牌などでも使われているので、それなりに有名です。

これを応用すると、=廃 もわかりますね!


くにがまえシリーーーーーズ!!!

というわけでくにがまえをまとめて覚えましょう!

=囲

くにがまえの中の“イ”と発音する“韋”が画数の少ない“イ”である“井”に変わったと考えるとわかりやすいです。


=団

くにがまえの中の“専”から寸だけ取り出しています。


=図

字の形がなんでこうなってしまったのかわかりませんが(笑)

“はかる”という意味などでよくみかけます。

スーパー軍師郭図は“郭圖”と表記されます。郭図ファンは書けるようにしておきましょう!

=円

これはひとつだけくにがまえではなくなってしまった残念な漢字です。

員は実は“エン”と読む事ができます。員と円の発音で覚えましょう。


=尽です。

これは“ことご-トク”としてよく出てくる漢字です。

形が変わりすぎて覚えにくい漢字です。


=昼

“書”に似ていますが、下の部分が“日”ではなく“旦”なので注意です。

よく見ると上の部分が“尺”になっただけで、下の“旦”は変わってないので覚えやすいかと思います。


=画です。

また似た字が出てきました。

下の部分をみると、なんとなく今の“画”と似ている気がします。

この画面ではわかりにくいですが、下の部分は、“田”の下に“一”です。


=対

“對曰”こたえていわく のように、質問に回答する際の発言でよく使われます。

つくりの部分が同じなので覚えやすいかもしれません。


=実

形が似ていると信じれば似ているように見えてきますね!

ウかんむりと下のはらいに共通点を見出しましょう。


=塩

塩の旧字体はかなり難しい字です。

皿の部分と右上が若干似ているのが救いですね。

塩は、専売制であったため、史書にはよく登場します。

余談ですが蜀漢には王連が就いていた「司鹽校尉」という官位がありました。


=鉄

鹽=塩とセットで覚えておきたいのが鐵=鉄。

塩と共に専売の対象だったのが鉄なのです。

前漢には「鹽鐵論(えんてつろん)」という書物がありました。


=旧

これはわかりにくいですね。

したの“臼”は“キュウ”と発音し、“旧”におきかえられることがあります。

たとえば“稲”には“旧”が入っていますがかつては“”と表記していました。

記憶の手伝いになれば。


=処

“ところ”と読み漢文ではよくでてきます。下の部分をそのまま使っているんですね。


=拠

「よりどころ」といった意味でしばしばでてきます。

つくりは旧字体の処と似ています。

そのため処が使われたのかもしれませんね。


=弁

献帝の前の皇帝は少帝辯です。現代日本でも、弁財天が辯財天と表記されていたりします。

辨や瓣も=弁です。


長くなってしまったので今の漢字と形が似ていたり、今でもたまにみかけてわかりやすいものを一挙に紹介。

=拝

偏が一画違うだけ。

=県

左側だけをとりだしていますね。

=数

米の部分が違うだけ。“しばしば”と訓じるかたちでよくでてきます。

=余

つくりを取り出しただけ。実は“余”は“私”という意味などで昔から使われており、現代では“餘”が“余”に統合されたといえます。

なので漢文では、餘も余もどちらもでてきます。餘は“あまり”という意味の使われ方が多いです。

=剣

偏の部分がちょっと難しいですね。この偏から=検 なども類推できるようになると理想的です。

=区

孫堅に討伐された“區星(おうせい)”というひとがいます。

=広

中の“黄”は広と同じく“コウ”と発音しますね。これを覚えると=拡 もいけますね!

=万

ここから=励 も類推しましょう。

=払、=仏

つくりの“弗”が“ム”になってます。

=会←修正しました(曾=曽になってました。mujinさんありがとうございました。)

会は“たまたま”と訓じることがあります。意味は「ちょうどそのとき」で、現代の“たまたま”とは少し違います。

=恋、=変

戀はいまでも見かけますね。ここから變=変を類推。


その他

=写

=属

=宝


本当に長くなりました。

旧字体=舊字體は漢文を読んでいるうちに覚えていくと思うので、無理に覚えようとしなくてもいいです。

そして、重要なことは漢文を読んでて、わからない漢字があったら旧字体であろうとなかろうと調べる!これ重要!

漢和辞典でもいいですし、漢籍電子文献なんかでわからない文字に行き当たったらコピペしてググってみるのもいいかもしれません。

そうして字をおぼえていくことは、漢文を読む助けとなるでしょう。


次回からは漢文に入っていきたいと思います。

漢文講座は1週間に一回くらいになるかもしれないです。