あしたはうんと遠くへいこう(角田光代)/マガジンハウス

あしたはうんと遠くへいこう

あしたはうんと遠くへいこう

 あたしはきれいだろうか、(中略)きれいじゃない、とも思うし、けれどそんなにひどいわけでもない、とも思う。テレビはもちろん、学園のアイドルにもなれないけれど、整形手術を真剣に考えなければならないほどでもない、ということ。それにしてもこの先あと何百回くらい、こういうことを考えなければならないんだろうか。つまり、あたしはきれいなのか?だれかに好かれるくらいにはきれいなのか?それとも見向きされない?という、たとえば、鮮魚売場の、刺身用の鯵みたいなことを、だ。(P6)

 「あしたはうんと遠くへいこう」と本当に遠いところまで飛んでいってしまう主人公・栗原泉。彼女の高校三年生から30歳くらいまで、いくつかの恋愛模様が切り抜かれて描かれています。そのぶっとび加減にはちっとも共感はできなかったものの、今現在高校生のわたしが、何年か後に高校生だった頃を思い出すときってこんな感じなのかも、と思うような箇所がたくさんありました。

だからときおり、自分たちがまだ高校生であるかのような錯覚を抱いた。何も知らず、知らなくて許された、膨大な未来だけを抱えた十代であるかのような。(P170)