川上弘美 『ゆっくりさよならをとなえる』 新潮文庫

ゆっくりさよならをとなえる (新潮文庫)

ゆっくりさよならをとなえる (新潮文庫)

 図書館で一度、単行本の方を読んだのですが、最近文庫の方を買いました。何度となく開いてしまう本です。

 なにしろ小説を書くときには、なるべく直截な説明というものをしたくない。「悲しかったです」と書くかわりに、「空がとても青くて、ジェット機も飛んでいて、私はバナナパフェが食べたかった」などと書いてしまうのが、小説である(たぶん)。(P.76-77)

 この本の中の、こういう文字列を眺めているだけで、なんだか心が安らぐのでした。わけもなく心がざわざわして落ち着かなくて不安で泣きたくなるときなんかに、ものすごーく読みたくなる本です。