19歳のうちに書いておきたかったこと

 仏壇のある薄暗い部屋で、初めて祖母から19歳で死んだ叔父の話を聞かされた7歳の頃から、19歳は特別な年齢になった。
 叔父がこの世を去ったのは、高校を卒業して就職したその年。お盆で、帰省中の頃だったらしい。友達が運転する車に乗っていて、その車が交通事故に遭ったのが原因だったそうだ。
 その事故が起きたのはわたしの両親が結納をかわしていくらもたたない頃だったらしくて(父と叔父はけっこう年が離れてたのだ)、もちろんわたしはまだ生まれてもいない。
 でも、実家で生活していた頃は、「交通事故で死んだおじちゃん」の存在を知らされる機会はたびたびあった。叔父の月命日の夕食はお煮しめだったし、お盆やお正月には「おじちゃんにあいさつしてきなさい(=仏壇の前で手を合わせなさい)」と言われてきたし、祖母からは「あんたがもし大学とかに行くときはおじちゃんのお金(賠償金のこと……だろうな多分)があるけんね」と通帳を見せられたこともある(小さい頃の話なので金額までは覚えていないけれど)。
 初めてその話を聞いた時、わたしは、19歳で死んじゃうなんてかわいそうだな、と思った。でも、それが死ぬには早すぎる年齢だとはわかっても、7歳にとっては19歳なんて十分に遠い年齢だった。

 遠かったはずの19歳にわたしはいつの間にかなってしまい、一日一日無事に20歳へと近づいているけれど、20歳はわたしにとって、成人する年というより叔父が生きた年月を追い越す年なんだと思う。