智の木協会活動報告

2010-12-28

第3回 智の木協会ワークショップレポート

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第3回 智の木協会ワークショップレポート

平成22年11月5日(金) 18:00〜20:00 

於:大阪大学中之島センター 10階 ホール

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司会:智の木協会事務局長 小菅 喜昭 氏



開会のご挨拶:智の木協会顧問 山本 幹男 氏 

 「この会もシンポジウムワークショップを数回行っておりますが、香りとか煎茶、また、日本人の感性についてなど、色々と興味深い話をしていただき、私も大変楽しみにしています。本日は京都大学の柴田先生、東洋竹工から大塚氏をお招きして竹についての話をしていただきます。堪能していただければ幸いです」とご紹介がありました。また、「大阪駅の南側に私どもの富国生命大阪ビルが10月25日に無事竣工しました。このビルは外装がガラスでできておりまして、美しさを追求しながらも大樹をイメージしたコンセプトで造られております。以前のビルも大阪の方々に大変親しまれてきました。新ビルも4階まで吹き抜けのアトリウムを造っていまして、そちらが地下街に密着しております。待ち合わせのスポットとして使っていただければと思います。 防災や安全性についても地下街の方々と協力させていただき、防災センターを富国生命ビルに新調いたしました。環境改善の重要性をコンセプトに取り入れたビルです。2月1日には新ビル4階に智の木協会の事務所とラウンジがオープンいたします。協会の会員さんも120人を超えたと聞いております。オープンしましたらこの場をご活用いただければと思います」と、新富国生命ビルと智の木協会の事務所・ラウンジについてご紹介いただきました。



活動の紹介:智の木協会事務局長 小菅 喜昭 氏 

 企業会員が9社から14社に、個人会員も80人を超え着実に会員が増えていること、智の木協会のHPを川上主幹の努力で更新しており、現在ではウィキペディアにも載っていること、企業・個人選定の樹花の美しい写真や小林代表幹事の解説も載っていることなどHPに関する説明がありました。今後の会員への連絡は「資金面を抑えるべく、インターネットやメールで行いたいのでアドレスの登録をお願いいたします」と協力要請がありました。

 智の木協会の新事務所とラウンジにつきましては、「2月1日より企業会員様には一定の時間無料でお使いいただけるよう、タイムテーブルを作りお知らせ致します。また、個人会員にも門戸を広げる方向で検討しております。立地も大変便利です。是非、富国生命ビルにお立ち寄りいただきたいと思います」と説明していただきました。

 新たな取組みについても「グリーンツアーなども考えたい。本日のテーマは竹ですので、向日市の竹ツアーなど、種々の案を考えていきたいと思っております」と具体的なお話がありました。

 「来年度は大阪大学から梅田中心部に行きますので、頑張りたい」と抱負を述べられました。



講演1:京都大学 フィールド科学教育センター 教授 

     柴田 昌三 氏  「竹のたくさんのふしぎ


座長:京都大学大学院 農学研究科 教授 平井 伸博 氏 

 柴田氏の経歴をご紹介いただきました。竹に関わって30年以上、竹一筋に研究を進めておられ世界的な竹の権威でもありますので、竹にまつわる様々な興味深い話を提供していただけるのではということでした。



 柴田先生は中学校時代、千里丘陵の竹林が遊び場だったとお話になられ、参加者の多くは先生を身近な存在に感じられたことと思います。大阪でも特に北摂地域には、現在でも多くの竹林が残っています。竹に魅せられて転居して来る方もあるくらいです。

 竹といえば、筍、竹の皮、竹細工(工芸品から日常使用する物まで)、庭のクロチクなど多種多様な品物が連想されます。最近では上海建築現場の足場に使用してあるのを見まして、昔は日本でもそのような使われ方がなされていたのだろうと想像しました。材木に匹敵するほどの強度があるらしいのです。皆さんは竹の種類として幾つくらい思い出されるでしょうか?モウソウチクマダケクロチク、ハチク・・・

 竹がイネ科で木質化することは習ったような気がします。植物の場合は花が咲きますが、竹の場合、開花は非常に稀で、60年から120年に1回咲いてその後枯れてしまうと聞いています。また、「花が咲くとよくないことが起こる」とも聞いていましたが、それは「山の中に一時的に大量の実が生産さ

れることにより、ネズミが増える。ネズミは山の中の実を食べつくして里山へ出てくる」そのことがよくないことが起こるという言い伝えではないかというお話で、これまでの疑問が解消した感じです。

 一方で、天明天保飢饉の時に偶然花が咲き、人間の命が救われたというような研究もあるそうです。開花が稀ということは、人間に役立つ品種改良が難しいということで、確かに「モウソウチクマダケを掛け合わせて新種の竹ができました」というような話は聞いたことがありません。開花の時期も世界中でほぼ同じで、その後親は枯死し、親の遺伝子は残らない。本当にふしぎですね。

 「竹の祖先は熱帯で、それには地下茎がなく株立ちし、温帯の竹は地下茎を張り巡らす単軸型と呼ばれて雪の中でも元気に生きています」というお話でした。竹薮で風に吹かれて雪がさらさらと落ちる様子を思い出しました。子どもの頃の懐かしい思い出です。外国人にとっては雪の中で生きている

竹は大きな驚きで、庭園作りに使ってみたい存在なのだそうです。

 熱帯の竹と温帯の竹をつなぐ竹としてメロカンナという品種をあげることができるそうで、柴田先生はインドで詳しい調査をされました。メロカンナの実はこぶし大くらいの大きさになり、中の液が澱粉に変化するとか。どんな味がするのでしょうか。京都北山で中国笹の花が咲いた時は米粒のよう

な実ができ、“ポップササの実”にして試食されたそうで、こちらは油分が多くおいしかったようです。

 京都でササが枯れた時に和菓子屋さんが大変困った(チマキ用)という話は現実的です。笹の葉には抗菌性があると言われていて、昔から笹の葉をラッピングに使ってきており、食品の腐りを遅らせる効果があり、これに着目した利用も始まっているそうです。

 竹の生長の速さを数字で聞きますと実感がわきます。24時間生長の世界記録は121cm、1時間で5cm、筍が竹になるのに要する期間は、モウソウチクで50〜80日、マダケで30〜60日。モウソウチクは筍がおいしい!そのために全国的に広がったと考えられています。

 温帯の竹は地下茎で増えていくことはよく知られています。では、どのくらいの密度でしょうか?モウソウチクの場合、100m四方の中に25〜113キロの地下茎が詰まっているそうです。ここから高い防災性が言われてきました。最近、土砂崩れで竹林そのものが押し流されたりしている状況を見ますが、これは管理されていない竹林で地下茎の枯死がもたらしたこと、また、竹は深い根を持たないので杭の効果は期待できないのに山に侵食していって崩れを起こす原因になっているとのご指摘がありました。地上部のみを見て「美しい。私は竹に憧れて来ました。竹を切らないでほしい・・・」。このような話をよく耳にします。しかし、美しい竹林と雑木林とのすみ分け、高密度の防災性など私たにとって有用な竹林を維持するためには、管理が必要になってきます。日本の竹林が荒れてきた理由は竹材利用が減ったから、そして中国からの安価な筍の輸入が増大してきたからというお話がありました。筍を採らなくなったモウソウチク林は、ものすごい勢いで山へ、里山へと侵食していきます。それはまた、竹の強さを物語っているとも言えます。

 そこで、今後は竹林と人との共存を模索していこうという動きがあるそうです。植物としての竹は毎年収穫できる持続性の高い植物資源であり、生長が早く収穫期までの時間が短い、また、日用品から工業製品まで使えないところがない立派な資源として捉えることができるというお話は、身近なところに資源が転がっているというイメージです。中国インドコロンビアなどでは、大々的に竹を利用しているという話を聞きますと、なぜ日本人が竹を利用しなくなったのか不思議な気もします。中国ではむしろ木を倒して竹を残しているという話はよく理解できます。

 「日本人はもっと竹材を使いましょう、日本産の筍をもっと食べましょう」と締めくくられました。そうすることによって竹に関心が深まり、管理も進むと思われます。事実、多くの方々がボランティアで竹林整備をしておられます。しかし、一方で、竹を切ることに反対する人たちも多いのが現状です。竹の植物としての特性を十分理解したいものです。

 新幹線から見た竹林の繁殖。お茶やミカンなど、山の斜面などで生産物を収穫する地方では竹林が制限されている、管理されている様子が見てとれました。

○竹の抗菌成分について質問がありました。

柴田先生: 

 多くの抗菌成分を持っているところは、竹の幹の一番外側の硬くて青い部分。あの中は柔らかいのであらゆるものを防御するようにできています。尚かつ、竹はイネ科なので、珪酸部を非常にたくさん含んでいます。幹の一番表面の部分にくさび状の珪酸の結晶が一列に並んでいます。その周辺から様々な成分が抽出されるらしいです。成分については・・・

平井先生: 

 竹の抗菌成分について実験したことがあります。抗菌成分がありますが、既知の成分の活性珪酸で、それ以外には顕著な抗菌成分は見つけることができていません。竹の皮でおにぎりやチマキを巻いてパッケージとして利用されている大きな理由は、物理的に菌が生えにくい状態にあるのではないかと考えています。抗菌性はありますが、青竹はカビが生え易い。枯らせて完全に水分がなくなった状態でバクテリアやカビが生えにくい、という感じを持っています。


○竹についてもっと詳しくお知りになりたい方は柴田先生の著書があります。

 「竹のたくさんのふしぎ」(福音館書店

 「竹・笹のある庭」




講演2:東洋竹工株式会社 社長 

     大塚 正洋 氏 「京竹工芸〜いい作品はいい材料から〜」



座長:智の木協会専門理事 川戸 章嗣 氏 

 大塚氏について「1981年に東洋竹工株式会社取締役に就任。その後、京都竹工業研究会の委員長向日市観光協会会長を務めておられます。2年前、京都府で竹型電気自動車を開発したという大きな話題が出ていましたので、本日の講師をお願いしました。おもしろいお話が聞けるのではないかと期待しています」とご紹介いただきました。



 東洋竹工さんは、向日市の駅前で明治時代から竹材業を営んでおられた家系で、昭和34年からは加工製品を目指して輸出中心の営業をしておられましたが、その後、内需に変換されました。

加工製品に使われる竹は京都府で指定されている京都特産の竹で、それは厳しく管理された竹林で生産されています。京都の竹工芸は1200年の歴史があり、華道茶道の発展と共に竹工芸も発展してきたそうです。竹はまた、建築資材としても優秀だそうです。

 工芸品の加工には、丸竹加工と編組(へんそ)加工があるそうで、両方をしている作家はまずいない、それ程深い修行が必要のようです。京竹工芸と呼ばれるに至るまでには想像を絶する技術と厳しい管理・工程があることを知らされました。編組加工に用いられる竹はマダケが90パーセントだそうです。また、竹製品の90パーセントは有用3名竹と言われているモウソウチクマダケ、ハチクで作られているそうです。

 修行には長い年月を要し、「竹割り3年」「編み8年」そして、このような技術を習得後も更なる修行が求められる世界です。竹割りの前にもその竹を準備する工程があり、忍耐のいる仕事ですね。京名竹白竹を作るにはまず1本ずつ手で洗う、竹で作ったササラで擦って節ごとについている垢を取る、次にガスで油を抜く(乾式)、油を布で拭き取る、そして天日に乾かす作業が約1ヶ月続きます。気の遠くなるような工程を経て、ようやく青竹が鶯色に変化し、10年、20年持つ竹へと大変身するのだそうです。竹で作ったササラ以外の例えばナイロンたわしや金属たわしで擦ると、竹に筋がたくさんついて価値がなくなるそうです。京都以外の地方では湿式で鶯色にしていくそうですが、結果的には京都式の方がはるかにきれいだとか。今度京都へ行きましたら、竹工芸品に目がいくことでしょう。

 しかしながら、どんなに素晴らしい竹製品でも現代の日本人の生活様式が洋風になったり、竹製品に代わる物がたくさんある時代では、需要が減ってきて、次の時代へ伝統工芸としての技術を伝承することが困難になってきているというお話がありました。竹でなければならないものは、抹茶の茶せんのみだそうです。もっと竹製品を使ってください、一家に1膳ずつ竹の箸を使っていただければ日本中で1億2千膳の竹のお箸の需要があることになりますというお話に、思わずうなずきました。

 向日市ではまた、竹薮の中に一般の人にも入ってもらう、竹薮そのものを楽しんでもらう企画をしておられます。竹に親しんでもらう、それに健康と景観と環境を絡み合わせて西ノ岡丘陵に1800メートルの竹の道を整備し、ウォーキング、撮影、写生など一般の方々に楽しんでもらっているそうです。竹ツアーの計画をと申し出ていただいています。ツアーにはぜひ参加したいと思います。

○竹の最も美しい季節について質問がありました。

大塚氏:

 雪の竹林が私は一番好きです。竹の道に雪が積もり、道路が濡れているとすごく人間が洗われます。ぜひ、ご覧下さい。

閉会のご挨拶:智の木協会副理事長 黒田 錦吾 氏 

 講師の方々へお礼の言葉をいただきました。

 「竹は家にもあって身近なものですが、あちらこちらに芽を出して厄介者扱いしていましたが、お話を聞いて手入れが足らなかったということが分かり、これからは心を入れ替えて竹の世話をしようかなと感じました」とユーモラスに語られました。また、「竹に花が咲くと実が生ってネズミが増えて里山に出てきて農作物を荒らす」ことは「風が吹けば桶屋が儲かる」というようなことに等しいのでは、とこれまた、納得いく解説をしていただきました。

 京竹工芸のお話については「これまでモウソウチクマダケしか知りませんでしたが、加工方法によって多くの呼び名があること、また、丸竹加工、編組加工があり、雑学として習得しました」と楽しく語ってくださいました。

 「植物の持っている能力や偉大さ、自然の力のすごさを感じ、我々は自然に親しみを持ってもう少しやさしく接する必要があるのではないか、ということで智の木協会が発足しました。順調に皆さんのご支援をいただいて組織も拡大してきています。今までは大阪大学のFRC棟に間借りしていましたが、来年2月1日より富国生命ビル4階に事務所を設け、そこを活動の拠点にしたいと思います。

非常に瀟洒な新しいビルが建ちました。今度はタウンオフィスとして事務所とラウンジができます。是非お越しいただいて、色々なご意見をいただきたいと考えています」と事務所移転の報告をしていただきました。そして「来年2月中旬にワークショップを開催し、事務所の家賃が払えるように会員

も増強したい。特に若い会員を。そういう人たち共々植物の持つ力に関心を持てたらと考えています」と今後の活動と抱負についてお話いただきました。

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以上