智の木協会活動報告

2012-10-29

第6回智の木協会ワークショップ レポート

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第6回智の木協会ワークショップ レポート

 平成24年7月20日(金)17:00〜18:00

 於:富国生命ビル 4階 【社団】テラプロジェクト Aゾーン


 第6回智の木協会ワークショップは、【社団】テラプロジェクト一周年記念シンポジウムと共催で行われました。


司会 智の木協会 事務局長 小菅 喜昭 氏

 講師、李卿氏について司会者から「李卿氏は中国・山西医科大学医学学位取得、中国医科大学大学院医学修士学位取得、来日後、鹿児島大学大学院医学博士学位を取得されました。研究分野は環境医学、森林医学、環境免疫学免疫・遺伝毒性学、衛生学公衆衛生学と広範囲にわたり、多くの学会に属して研究しておられますと共に、多数のご受賞歴をもたれております。本日は、医学的根拠に基づいた森林浴効果について、大変興味深いお話をしていただきます」とご紹介していただきました。


講演 日本医科大学衛生学公衆衛生学 講師

    森林医学研究会 代表世話人 李 卿 氏

f:id:chinoki1:20121029163428j:image:medium:right「森林浴」とは、空気がよくてリフレッシュできる、身体によい、癒される、結果的にストレスから解放されて免疫力もアップして長生きに繋がるのではというようなイメージでしたが、医学的根拠に疑問がありました。当日はそれらの疑問に明快な回答を与えていただきました。

 現代社会では、強い不安、ストレスを持っている労働者が急増していること、中年男性の二分の一の人達がメタボリックシンドローム発生もしくはその予備軍であることが見込まれていること、その数約2,000万人と推定されていること、自殺者の問題が深刻であること、そして、その解決策として森林セラピー治療が有効であることをデータを用いて解説していただきました。「自殺者の多くは健康問題を抱え、その中でもうつ病の人が多いとされています」と李氏。「このような状況下では、健康管理が大きな問題になり、有効な予防対策が求められており、森林浴が新しい健康増進・疾病予防法として注目されています」と続けられました。

 森林浴が健康に良い理由としては、以下の項目が挙げられます。静かな雰囲気、美しい景観、穏やかな気候、清浄な空気、フィトンチッド(芳香物質)、マイナスイオンです。芳香物質やマイナスイオンにはひとのNK(Natural Killer)細胞の活性(がん細胞増殖を阻止する活性)を高める効果があるそうです。

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 がん発症率とNK活性との関係について3,625人を対象に、最初に血液を採取してNK細胞数を調べ、11年間も追跡して調査した結果、女性でも男性でもNK活性が低い人の方が高い人の約倍位発症率が高いという事実が確認されたそうです。

 NK細胞によるがん細胞障害のメカニズムについて、がん細胞=犯人、NK細胞=警察に例えて分かりやすく説明してくださいました。「一般社会では、警察≫犯人の構図では社会が安定しています。生体も同じように、NK細胞≫がん細胞の構図で健康を保てます。」また、「がん細胞≫NK細胞の場合にがんを発症し、がんの発症者には高齢者が多いのですが、その理由はNK細胞の動的活性が低く停滞しているからです」と解説してくださいました。

森林浴実験

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 森林浴による免疫能への効果実験を2005年、長野県飯山市で中年サラリーマンを対象に実施した結果から、森林浴前に比べ、実施後1日目の方がNK活性が増え、2日後には更に増えることが確認され、森林浴は効果があるということを証明されました。NK活性が上昇した理由としては、NK細胞が増えたこと、細胞内の抗がんタンパク質が徐々に増えたことを挙げておられました。

 次に、旅行によっても効果が上がるのではないかという疑問に答えるため、2006年に緑の少ないところを選んで同じように中年サラリーマンを対象に実験を行った結果、NK細胞の増強は認められなかったそうで、「旅行による効果」ではなく「森」の効果によることが判明し、旅行には都市ではなく森を選ぶことを勧められました。

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 森林浴の効果の持続について関心があるところですが、活性の持続実験については、2006年にやはり中年サラリーマンを対象に行われました。「採血スケジュールは、森林浴前、森林浴1日後、2日後、1週間後、4週間後の5回実施され、森林浴後1日目・2日目共に効果が持続し、1週間後では僅かに下がり、4週間後は効果が下がったものの、森林浴前よりも活性が優位に高かったという興味深い結果が得られました」と李氏。森林浴がヒトNK活性を増強させ、持続効果が認められた、また、抗がんタンパク質量を増加させ、活性持続効果が認められたことを話されました。女性についての実験も行われ、同様の結果が得られたそうです。

 日帰りの森林浴による免疫機能への効果についても2009年、中年サラリーマンを対象に実験が実施されましたが、やはりNK活性及びNK細胞数が増加し、NK細胞内の抗がんタンパク質量を増加させ、1週間後もなおその効果が持続することが証明されたそうです。

森林の力で心を癒す

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 森林浴が緊張・不安・憂鬱・落ち込み・敵意・疲労・混乱を低下させ、活気を高めることが、2007年智頭町実験結果で証明されました。自覚症状については、アンケート結果により、森林浴後の方がマイナス要因が下がっていることが分かったそうです。「森林浴が有意に尿中ストレスホルモンを減少させますが、一般の旅行は尿中ストレスホルモンを減少しないことが分かりました。旅行は確かにリラックスはしていますが、ホルモンには関係していないことが分かりました」と李氏。女性の場合も森林浴がストレスホルモンを減少させ、尿中アドレナリン濃度が2日目には森林浴前の三分の一に減少し、更に、ストレスホルモン(血清中アルチゾール)を減少させ、1週間後でもなお森林浴前よりも低いという結果が得られたそうです。

ストレス免疫反応

 「生理ストレス反応があり、ストレスがかかると緊張と不安が起こり、それが自立神経や心拍のリズムの乱れを起こし、やがては免疫力低下につながります。しかし、森林浴によってストレスを減少すると、ストレスによるNK活性抑制から解放され、NK活性が上昇し、回復していきます」と説明されました。

森林の力でカラダを癒す

 森林浴による血圧のへの影響、生活習慣病への効果、アンチエージング効果についてのお話がありました。

 血圧が高いが服薬していない人を対象に、都市での一日、森林での一日、同じ時間に測って比較した結果、やはり効果があったという報告がありました。都市部での散策に比べ、日帰り森林浴は有意に血圧を低下させたということです。そして、日帰り森林浴が血中adiponectinの濃度を有意に増加させることも判明したそうです。都市部での散策では、その前後でadiponectinの濃度に変化はありませんが、森林ではその濃度が増加しており、日帰り森林浴による血中DHEA−S(アンチエージング指標)への影響について、そのレベルを上昇させたそうです。

 

森林浴の効果について以下のようにまとめていただきました。

1. 森林浴が抗がん免疫機能を高めるので、がんになりにくい体づくりができる。(がんの予防効果)

2. 森林浴は、活力を上昇させ、憂鬱・落ち込み・怒り・敵意・疲労症状を有意に低下させ、「うつ状態」の改善に有効。

3. ストレスホルモン減少、ストレス軽減、特に精神的ストレスに有効。

4. 森林浴が、血圧と血糖値を低下させ、「メタボリックシンドローム」(生活習慣病)の予防にも有効。

5. リラックス効果、脳の鎮静化。

6. 森林散策による健康増進効果。

7. アロマテラピーの「アロマ」は、主に植物(木・花)から抽出した精油で、森林浴は「自然アロマテラピー」と言えよう。

 森林浴の将来像について、夏と秋では、森林浴と温泉を組み合わせ、冬と春では、スキーと温泉を組み合わせることによって一年中森林浴が可能です、と話されました。

 森林セラピーマスコミから、あるいは行政自治体から、ひいては学術団体から大きな注目を集めています。2005年から、新聞、テレビ、雑誌で紹介されたり、インタビューを受けるなど、日本のみならず、中国アメリカなど海外でも紹介されています。

 李卿氏は、自治体での講演に加え、各種学会や国際学会で講演なさっています。そして、2007年3月26日、大阪国際交流センターで「森林医学研究会」が発足しました。

日本医科大学衛生学公衆衛生学の中に森林浴研究チームがあり実験を進めてこられました。

 李先生が事務局を務められる「森林医学研究会」と本講演の会場を提供してくださった「社団」テラプロジェクトとは、アカデミア連携協定を締結しており、相互理解と相互の発展を共同で進めています。