ペーロンの鼓動  

うちにいても、遠くからかすかにペーロンの太鼓が聞こえてくる今日このごろ。けっこう離れているはずなのに、あの独特の太鼓のリズムは、海からの風に乗ってやってくる。式見で地区予選があるらしいので、見に行った。「みなとまつり」の「本番」もいいけれど、この、ほぼ100%地元の人しかいない地区予選も捨てがたい趣だ。レースを見ているおじさんたちは「元・漕ぎ手」であり、まわりで遊んでいる子どもたちは「将来の漕ぎ手」であり、女たちは「漕ぎ手の母か妻か娘か彼女」である。
ペーロンの太鼓。どうしてペーロンには太鼓が乗ってるんだろう。あれだけ余計なものがそぎ落とされた、「スピード」を形にしたような船に。でもたぶん、太鼓がないとペーロンはあれだけ速くは進まないに違いない。心臓なんだろう。あのリズムは、ペーロンの鼓動なのだ。