午睡的妄想 〜半夏生〜


 晴れていたのに急に曇って雷の音がして、慌てて洗濯物取り入れたら、また晴れてきた。なんだか天気に遊ばれているみたい。
 半夏生が名前通り、見事に半化粧して、あちこち目立つ季節になった。じりじりと日の照りつける午後、道にはゆらゆらとかげろうが立っている。そのかげろうの中から、まるで午睡の夢のように、黒っぽい着物を身に纏った女が現れる。かげろうに誘われるように眩暈を感じ、その後ろ姿に目を走らせると日傘の下からのぞく襟足には白いおしろいが塗られていて、それに気づいた途端ぞくっと悪寒がし、いけないものを見たようで、慌てて視線をそらせた。思い直したように、顔を上げてみると、女の姿は消えていた。
 ・・・なあんてね、半夏生みると、そんな物語が浮かんできます。半夏生のイメージに不可欠なのは、強烈な夏の光、そしてそれと対照的な影。さんさんと日が降り注ぐ庭に太陽に顔を晒して咲いているより、強烈な日を避けるように庭石の影や木立の影にそっと咲いている方が似合う。半夏生って、どこにでもあって、見落とすくらい地味な感じなのに、籠に一輪挿してみると、その存在感に驚かされる花(ではなく葉ですね)だ。イメージとしては、ちょっと玄人入ってるかなっていう熟女。でも今は昼間だし、だいたいこの人、今はもう芸者から足を洗って、普通の奥さん(あるいは二号さん)に納まっているので、昔の仕事がわかるのはどうも、ということで、なるたけ地味につくっている。そしてさんさんと日が降る中を、伏し目がちに歩いている。夜のお座敷であれほど華やいでいた人とは思えないほど地味ないでたちではあるが、やっぱり普通の奥さんとはちがう。どこか艶な部分があるのは争えないことである。
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 ・・バカな妄想に浸ってないで、やることやっちゃおう。今から、お茶の自習します