家守

作者:歌野晶午光文社文庫
家にまつわる5つの話が収められたミステリー短編集。
「人形師の家で」は20年以上前に、同級生が忽然と姿を消した家を再調査する話。
主人公である語り部の出生の謎が最後に明かされ、変わり果てた同級生が見つかる。
「家守」は完全に施錠された一軒家の中で、妻が窒息死しているのが見つかる。
夫には完全なアリバイがあったが、警察の執念で遠隔操作の犯罪を暴く話。
「埴生の宿」は、呆け老人の相手をするアルバイトを引き受けた若者が、次第に現実との境をなくしていく話。
呆け老人の家から逃れようとした若者は、意外な場所で、死体となり発見される。
「鄙」は高度成長期の西日本の寒村で起きた密室殺人を、湯治で訪れた推理小説家が謎を解く話。
閉鎖的なムラ社会の不気味なまでの閉鎖性と、意外な犯人のコントラストが良い。
「転居先不明」は東京で格安の一戸建てを手に入れた夫婦の話。移った直後から誰かに監視されていると感じる妻。
夫に相談すると、この家で、数年前に強盗殺人が起きていたことを明かされる。ノイローゼ寸前になる妻。
5編ともバラエティに富んでいて、面白かったし、何より、妖しげな雰囲気が漂っているのが良い。
謎解きには多少無理があるが、話が面白ければ、それで良いと思う。

家守 (光文社文庫)

家守 (光文社文庫)