デッドライン(上・下)

作者:建倉圭介|角川文庫
太平洋戦争末期の1945年。日系2世のタガワミノルは、欧州戦線で負傷し、大学生として復帰した。
その大学で、世界初のコンピュータを開発することになり、ミノルは作業に没頭する。
ミノルは戦場で、一般市民の少年を撃ち殺してしまい、そのことがトラウマとなっていた。
だが、コンピュータの完成前に、設計図が盗まれ、開発に携わっていた同僚の大学生が殺害される。
ミノルは容疑者となり、逃走するが、コンピュータの開発に原子力爆弾の完成が間近なのを知る。
日本に戻った家族を救うため、日本に降伏を促すため、ミノルは日本に渡ることを決意する。
酒場のダンサーの日系2世のエリイは、離婚した相手に引き取られた息子を取り戻すため、日本に行こうとしていた。
ソ連のスパイに操られていたエリイを救ったミノルは、二人で日本に向かう。
ミノルの行動を察知した米軍は二人を殺害することを命じ、アラスカに向かった二人を追う。
アンカレッジの銃撃戦を逃れ、漁船でアリョーシャン列島を渡り、樺太に上陸する。
危機を伝えるために守備隊に報告するが、二人はスパイとして囚われ、激しい尋問にあう。
アイヌの夫婦や、元北大生の兵士に救われた二人は北海道に渡り、青森に上陸する。
ミノルは家族とめぐり合い、戦争を終わらせるため、軍部の上層部に掛け合うが、相手にされなかった。
エリイの息子が広島にいることを知り、広島に到着したのは8月5日。原爆投下の1日前だった。
デッドリミット型のミステリで、これは非常に面白かった。
コンピュータの開発が前半で、これだけでも十分面白いが、逃亡しながら日本に向かう後半はさらに面白くなる。
一般市民の少年を射殺したトラウマに苦しみながら戦うミノルと、彼を殺害するために追う、かつての戦友のケント。
焼け野原となった日本を見て、二人は和解するが、この心情の変化が丁寧に描かれているのがよかった。
結末は悲劇だが、読み応えがあった。

デッドライン〈下〉 (角川文庫)

デッドライン〈下〉 (角川文庫)