追伸

作者:真保裕一|文春文庫
造船技術者の悟はギリシャに赴任するが、しばらくすると妻の奈美子から離婚を促す手紙が届く。
原因に思い当たらない悟は奈美子に手紙で問いただし、日本とギリシャでの書簡が続く。
真意を知ろうとする悟に、奈美子は祖父母が50年前にかわした手紙のコピーを送る。
奈美子の祖母は当時、殺人容疑で逮捕され、犯行を否認しつつも、曖昧な供述で有罪が濃厚だった。
祖父は祖母を励ましつつも、隠し事を問いただそうとしていた。
これがこの小説のテーマで、二人の長い書簡のやりとりで、話は進む。
話が進むにつれ、祖母の複雑な家庭事情が明らかになり、祖父の苦しみが伝わってくる。
すべてが手紙という書簡で構成されており、徐々に背景が見えてくるという手法は新鮮だった。
戦後の混乱期を生きた人たちの純愛は感動的だった。
上手い作家だと思う。面白い小説だった。
でも、この人の小説は他の作品もそうなのだけど、赤裸々に伝えようとする魂のようなものを感じない。
上質な産業ロックに触れたような気分に似ている。

追伸 (文春文庫)

追伸 (文春文庫)